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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第十九回

第十九回:呪いの残り香、王子の麻痺と獄中の父

 カサリ、スゥーッ――退膳間テソンカンの隅に隠されていた、不気味な紅い文字の札。チョン最高尚宮は、その札から漂うツンとした安物の墨の匂いと、背後に潜むチェ一族の執念をジロリと見抜いていた。

 「……この汚れ、官憲に委ねて白日の下に晒すべきです」

 バタンッ!――そこへ現れた女官長の、威圧的な足音。

 「……最高尚宮、身の程を知りなさい。これはしん……と葬り去るべき、ただの女子おなごの悪戯。一日の猶予を差し上げましょう、よく考えなさい」

 女官長のニヤリという笑みが、ソリを身代わりに仕立てるためのギチギチとした罠の音を響かせていた。

 「……ソリ。本当のことを言いなさい。何を隠しているの?」

 ハン尚宮のウルウルと震える声。だが、ソリは母の形見の銀の匙をギュッと握りしめ、唇をムッと結んだ。

 (……今、真実を口にすれば、ハン尚宮様まで闇にズブズブと沈んでしまう。……父様、母様、私は耐えます)

 そんな中、さらなる悲劇が宮廷をドォォォォンと揺るがした。中宗が王子のために用意させた特別料理。それを食べた幼い王子の手足が、瞬く間にピクピク、ガクッと麻痺し、意識を失ったのだ。

 「……料理を作ったのは誰だ! 出てこい!」

 ドカドカッ、バシッ!――義禁府の兵士たちに引きずり出されたのは、養父カン・ドックだった。

 「……へ、へぇ! あっしはただ、王子のためにコトコトと心を込めて煮込んだだけで……!」

 ドックの悲鳴が、冷たい石畳に虚しく響く。医官たちはヒソヒソと匙を投げ、口を揃えて断定した。

 「……原因不明。これは、料理に仕込まれた『音のしない毒』によるものだ」

 ジロリ――ソリは、獄へと引かれていく父の背中を、血の出るほど唇を噛んで見つめた。

 (……嘘よ。父様の料理に、そんなドロリとした殺意など混じるはずがない。……何かが、誰かが、王子の神経をプチッと切る何かを、膳に滑り込ませたのだわ)

 シュッ、シュッ――。

 (母様……。今度は私が、父様の無実を『味わい』、この国の嘘をサクッと切り裂く番です)

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