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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第十八回

第十八回:野営の冷麺、氷の音と揺れる恋心

 しん……――毒の霧が晴れた野営地。ハン尚宮たちが倒れた原因は、食材ではなく、山中の水場に仕掛けられたドロリとした瘴気だった。ソリは菜園での知識を総動員し、解毒作用のある薬草をトントントンと刻み、クミョンと共に王へ捧げる至高の「冷麺」を仕立て上げた。

 シャリ、シャリッ――器の中で踊る、砕いた氷の音。王・中宗はその澄み切った汁をズズッと啜り、喉を鳴らした。

 「……見事だ。この冷たさが、火照った身体をスゥーッと鎮めてくれる」

 王の満足げな溜息が、野営地の緊張をフッと解いた。

 ジャラリ、カツッ――護衛部隊の先頭に立つミン・ジョンホが、一歩、ソリの前へ歩み寄った。彼の纏う鎧がカチャリと鳴り、周囲の空気がピリッと引き締まる。

 「……見事な機転でした、ソリ殿。あなたの『味わう力』が、王様をお守りした」

 「……お役人様。私はただ、自分のすべきことをコツコツと重ねたまでです」

 二人の間に流れる、言葉を超えたカサリという共鳴の音。それを、少し離れた場所から見ていたクミョンの指先が、微かにプルプルと震えた。

 ドクン、ドクン。

 (……なぜ。私が憧れ、遠くからジロリと見つめることしかできなかったあの方が、なぜ、白丁の娘であるソリと、これほどフワリと通じ合っているの……?)

 クミョンの瞳に、これまでのライバル心とは違う、ドス黒いドロリとした感情が混じる。それは、友情でも尊敬でもない。奪いたいという、女としてのギラリとした欲望の音。

 「……ソリ。あなたはいつも、私の欲しいものをサッと掠め取っていくのね」

 クミョンは懐に隠した扇をバチンッと閉じ、背を向けた。

 野営地の焚き火がパチパチと爆ぜ、二人の少女の間に、修復不可能なピキッという亀裂が走る音が聞こえた。

 シュッ、シュッ――。

 (母様……。冷麺の氷は溶けても、私の心に刺さった『嫉妬の棘』は、ますます鋭く尖っていくようです)

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