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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第十七回

第十七回:落第からの逆転、母の残り香と毒の野営

 しん……――御前試験の会場。首席として名を呼ばれたクミョンの影で、ソリには非情な宣告が下された。

 「……支給された食材以外を用いたソリは、規律違反につき落第とする」

 試験官の冷たい声が、ソリの耳の奥でキィィィィンと虚しく響いた。

 カチャリ、パカッ――だが、その場に現れた皇太后が、ソリの作った「代用の皿」を、迷わず口に運んだ。

 「……ほう。このピリリッとした刺激。菜園で培った異国の知識か。……食材を盗まれてなお、これほどの味を構築する機転。落第など、宮廷の損失ではないか」

 皇太后のハハハという朗らかな笑い声が、絶望の静寂を打ち破った。

 「……合格です。ソリ、今日からお前は、正式な女官だ」

 シュッ、シュッ――ハン尚宮は、お祝いとして一振りの包丁をソリに手渡した。

 「……これは、私からの信頼です」

 里帰りしたソリを、トックの妻はガシッと抱きしめ、母代わりとして厳しい、けれど温かい訓示をペチャクチャと叩き込んだ。母の墓前でスゥーッと静かに手を合わせ、ソリは決意も新たに、再び宮門を潜った。

 一方、義禁府の地下。ミン・ジョンホは、捕らえた女密偵をジロリと見据えていた。

 「……私を助けた女が、錦鶏を持っていたと言ったな?」

 密偵が吐き出したヒソヒソという証言。ジョンホは、あの書庫で出会ったソリの、凛としたカサリという衣擦れの音を思い出し、その正体を追うべく動き出した。

 ……。

 数日後。王の狩りに同行したソリたちは、険しい山中での野営調理を任された。パチパチ、ボウッと燃える焚き火の音。ソリが丹精込めて作り上げた、滋養溢れる汁物。

 ズズッ、ゴクリ――味見をしたハン尚宮が、一瞬、喉をグッと鳴らして動きを止めた。

 「……あ……」

 ドサッ、ガシャンッ!――ハン尚宮の身体が、崩れるように地面へ叩きつけられた。続いて周囲の女官たちも、次々とバタバタと倒れ伏していく。ソリの視界が、恐怖でグラリと歪んだ。

 「……そんな。味見は完璧だったはず。……これは、食材の毒じゃない!」

 ジロリ――ソリは、倒れゆく人々の中で、唯一、不気味に静止している「あるもの」の音を聞いた。山風に混じって聞こえる、誰かのニヤリという、湿った嘲笑の気配。

 シュッ、シュッ――。

 (母様……。女官になったその日に、私はまた『死の味』を嗅ぐことになるとは……)

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