第十六回
第十六回:黄耆の奇跡、消えた食材と試験の罠
サワサワ、シャラリ――誰もが諦めた荒れ地。そこに、黄金色の花を咲かせたキバナオウギが風に揺れていた。ソリが土のネチャッとした重さを変え、異国の薬草にドクドクと命の水を注ぎ込んだ成果だ。その功績は王宮を駆け巡り、ソリは見捨てられた菜園から、再び包丁の音が響く水刺間へと呼び戻された。
「……これをお届けに上がりました」
パラパラ、スゥーッ――書庫の静寂の中、ソリは医官チョン・ウンベクの使いで、一人の男と対峙した。ミン・ジョンホ。彼が捲る書物のカサリという音と、その端正な佇まいから漂う凛とした空気。初めて交わす言葉は短かったが、ソリの胸には、料理とは違う未知のトクンという鼓動が刻まれた。
だが、感慨に浸る暇はない。女官正式採用を懸けた試験まで、あと七日。
カチャカチャ、フムフム――遅れを取り戻すべく、ソリは猛勉強に励む。そんな彼女を案じた養父トックが、こっそりヒソヒソと耳打ちした。
「……いいかいソリ、試験問題を予知する古の儀式があるんだ。パッ、パッとおまじないをかければ、道が開けるぜ!」
トックのガブガブと酒を煽る音に励まされ、ソリは運命の日を迎えた。
スラスラ、バシッ!――試験当日。第一段階の筆記試験。クミョンが一番で正解し、最上級の食材をガバッと手中に収める。ソリも出遅れながら、自分の料理に必要な食材をギュッと確保した。下ごしらえを終え、本番の実技は翌朝。誰もが勝利を確信し、眠りについたはずだった。
……。
真夜中。ヨンセンと共に、復習のために調理場へ忍び込んだソリ。だが、自分の調理台をパサッと改めた瞬間、彼女の全身を凍りつくような衝撃が襲った。
「……ない。……私の、一番肝心な食材が」
しん……――そこにあるはずの、明日の一皿の「核」となる食材が、何者かによってスゥーッと消し去られていた。静まり返った調理場に響くのは、ソリのバクバクという激しい心拍音と、窓の外で不気味に鳴る風の音だけ。
ジロリ――ソリの瞳に、再び鋭い「探偵の光」が宿る。
(……盗んだのは誰? 消えた食材が残した、わずかな『匂いの足跡』を、私は逃さない)
シュッ、シュッ――。
(母様……。試験の朝、私は『無』の中から、最高の味を絞り出してみせます)




