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『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


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第十四回

第十四回:消えた錦鶏、申の刻の約束と迫る足音

 サッサッ、ピチャッ――十八歳になっても、ソリの竹箒を動かす音は止まらない。好奇心の赴くまま、禁じられた書庫や薬草園に忍び込んでは、チェ尚宮からバリバリと雷を落とされる毎日。だが、その奔放な気質こそが、王女の食欲不振を救う斬新な献立のヒントとなり、皮肉にもライバルのクミョンを助けることとなった。

 ガチャン、バサバサッ!――中宗の誕生祝に贈られた、明の至宝・錦鶏。クミョンが管理を任されたその飼育場の鍵が、不吉な音を立てて外れた。極彩色の羽が夜風に舞い、一国の命運を握る鳥が、闇へとスゥーッと消えていく。

 「……ソリ。なぜ、ここにいるの」

 「……鳥が羽ばたくバサッという音が、いつもより低く、焦っているように聞こえましたから」

 青ざめるクミョンに、ソリは迷わず手を差し出した。二人は夜の宮壁をスルスルと越え、禁を犯して街へと飛び出す。

 ソリは万一に備え、養父ドックにヒソヒソと伝令を飛ばしていた。

 「……いいかい、ソリ。明日の申の刻(午後四時)、交易船から錦鶏が届く。……しくじるなよ!」

 ドックのガブガブと酒を飲む音が、今は頼もしい合図に聞こえる。

 翌日、潮風がヒュゥゥゥと吹く港。ソリは山積みの荷物の間をタッタッタッと駆け抜け、異国の商人とジャラリと銀を交わす。

 「……申の刻。間に合ったわ」

 籠の中で錦鶏がクルゥ、クルゥと喉を鳴らす。クミョンと合流すべき酉の刻(午後六時)まで、あとわずか。

 だがその頃、水刺間スラッカンでは、二人の不在を察知したハン尚宮とチェ尚宮が、静かに、しかしドクンドクンと胸騒ぎを覚え始めていた。

 ギィィィィ……――女官たちの部屋の扉が開く音。

 「……ソリ。どこへ行ったのです」

 ハン尚宮の、低く、湿った溜息。対照的に、チェ尚宮はピキッと扇を折り、クミョンの失態を確信して唇を噛む。

 シュッ、シュッ――。

 (母様……。この鳥の羽音が、私の運命をバサリと切り裂くのか、それとも未来へ運んでくれるのか。……今はただ、走るしかありません)

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