第十二回
第十二回:松の実の刺し傷、十八歳の覚悟
サクッ、サクッ……――女官見習いたちの定期競技。静まり返った修練場に、松の実の殻を剥く繊細な音だけが響いていた。
急遽変更された課題は「松の実刺し」。ソリは、クミョンから密かに教わったスゥーッと通す技法で、見事な二位を勝ち取った。
「……ソリ、あんた。クミョン様に媚びを売って教わってたのね」
ヒソヒソ、ピリピリ……――仲間たちの視線が、鋭い針となってソリの背中に突き刺さる。「裏切り者」というレッテル。ソリは反論せず、ただ自分の手のひらに残る松の実の微かな油の匂いをじっと味わっていた。
(……技は盗むもの。味は、一人で守るもの。母様、私は孤独を恐れません)
その頃、宮廷の裏では、チェ尚宮がカン・ドック夫妻をジロリと呼び出していた。
「ミョンイの娘……心当たりはないかえ?」
「へ、へぇ……。そんな高貴なお方のことなど、あっしらガブガブ酒を飲むしか能のない白丁には……」
ドックの妻の機転が、嘘をスラスラと真実のように塗り固めていく。
バタン、バタン!――深夜、宮廷に響き渡る抜き打ち検査の足音。逢瀬を約束した女官のバクバクという心臓の音。そして、最高尚宮の部屋でヒソヒソと行われる闇の診察。病を隠し、権力を握り続けようとする老いた欲望が、暗闇の中でドロリと脈打っていた。
……。
それから、月日は流れた。
シュッ、シュッ、シュッ……――包丁がまな板を叩く音が、以前よりも格段に鋭く、そして正確なリズムを刻んでいる。一五一四年。ソリは十八歳。その瞳からは幼さが消え、研ぎ澄まされた「神の舌」を持つ女官へと成長を遂げていた。
ピチャッ、ポタリ――完成した汁物から立ち上がる湯気を、ソリはスゥーッと吸い込む。もはや、味わうまでもない。音と匂いだけで、その料理に隠された「誰かの殺意」や「食材の悲鳴」が手に取るように分かる。
「……お待たせいたしました。本日の『真実』でございます」
ソリは、大人びた手つきで膳をカチャリと整えた。
十八歳のソリ。彼女の物語は、ここから本当の意味で「味覚の戦場」へと突入する。
シュッ、シュッ――。
(父様……。研ぎ澄ましたこの刃で、次は誰の嘘を料理して差し上げましょうか)




