表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『絶対味覚の毒見侍女と、父を陥れた天才包丁人――宮廷に潜む嘘を、私は舌で暴く』  作者: 水前寺鯉太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/51

第十回

第十回:真夜中の失態、冷え切った蔵の誓い

 ヒタヒタ、サワサワ――真夜中の王宮。退膳間テソンカンの薄暗い廊下を、ソリと友人ヨンセンの二人の影が、忍び足で進んでいた。好奇心か、あるいは空腹か。二人が不用意に触れた膳が、無情な音を立てて崩れ落ちた。

 ガチャン、ドシャッ!――王に供えられるはずだった夜食が、床の上でベチャッという音と共に散らばる。

 「……どうしよう、ソリ!」

 ヨンセンの震える声。直後、廊下の向こうからドカドカッと荒々しい足音が近づいてきた。

 ギィィィィ、バタン――二人は有無を言わさず、退膳間の奥にある冷え切った蔵へと放り込まれた。鍵がガチャリと閉まる音。そこにあるのは、冷気と、行き場を失った食材たちのしん……とした沈黙だけだった。

 ブルブル、ガチガチ――寒さに震えるヨンセンを、ソリはギュッと抱きしめた。暗闇の中で、ソリは床にこぼれた夜食の残骸から漂う、わずかな「焦げた匂い」をスゥーッと吸い込んだ。

 (……失敗の味。けれど、この悔しさは忘れない)

 翌朝。

 扉がバタンッと開き、訓育尚宮フニュックサングンの鋭い眼光が二人を射抜いた。

 「……身の程を知らぬ見習いめ。王様の膳を汚すとは、万死に値する」

 訓育尚宮の声は、氷の塊をバリバリと噛み砕くように冷酷だった。彼女は、泣きじゃくるヨンセンを無視し、すべての責任をソリに押し付けた。

 「ヨンセンの分まで、お前が償え。今日から一週間、訓練場の外を一人で清めよ。……一欠片のゴミも残すな」

 サッサッ、シュッ、シュッ――広大な訓練場。ソリは一人、竹箒を手に取った。仲間たちがウフフ、オホホと楽しげに調理の基礎を学んでいる声を背に、彼女は黙々と土を掃き続けた。

 ザッ、ザッ、ザッ……――箒が地面を擦る音が、ソリの心の中でシュッ、シュッと包丁を研ぐ音に変わっていく。

 「……見ていなさい。私はこの土の下にある『根の味』さえも、いつか自分のものにしてみせる」

 ジロリ――ソリは、遠くで自分を冷笑する見習いたちの視線を、鋭い眼光で撥ね返した。手のひらにできたマメがズキズキと痛む。だが、その痛みこそが、今の彼女にとって唯一の「生きている証」だった。

 シュッ、シュッ――。

 (母様……。掃き清めたこの道の先に、必ず真実へと続く階段を作ります)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ