母と娘
お母さんの笑顔が うれしかった。
「今日は何の勉強をしたの?」
「歴史の勉強!」
そっと撫でられた 頭のぬくもり。
「お母さんにも教えてくれる?」
「うん、いいよ!」
私たちは二人で 小さな教室をひらいた。
口を 大きく大きく開く。
「氷山や タイタニッくん 沈めたな」
お母さん なぜか引き攣る。
「あらあら。やんちゃな友達がやっちゃったのね。他にはあるの?」
「エジソン! 教えてあげる!」
お母さんの顔 期待に染まった。
「電気椅子 直流すぎて 焼け焦げた」
お母さんは真顔になったの。
「今月のおこづかいなしね。それと電気椅子には交流を流したの」
「ごめんなさい……」
しょんぼり 下を向く私。
「挽回させて!」
お母さんは再び笑った。
「もちろん」
私は元気いっぱい。
「芭蕉を詠むね」
「楽しみ」
「古い崖 サッフォー飛び込む 水の音」
お母さん 邪悪な笑みで。
「来年のお年玉もなし それとサッフォーの飛び込みは作り話よ」
「えー、それは困る! これならどう?」
私のね 一番のお気に入り。
「ジュリエット ロミオとともに 夢の跡」
「まあいいか……」
お母さん 不思議そうに私を見る。
「ねえ。電気椅子なんてどこで覚えたの?」
得意げに「漫画偉人伝!」
お母さんのお目々はまんまる まるまる。
「その漫画攻めすぎね。サッフォーは?」
「レスボス島でイチャイチャしてた人!」
お母さん なぜか顔を赤くした。
「だれから教えてもらったの?」
「お兄ちゃん!」
お母さんは とてもとても大きなため息をついたの。
どうして?




