おとうさん?娘?
魔法や魔紋についてもっと色々聞きたかったが、エリザベティス2世のタイムスケジュールが迫ってきたと言うので、今日はここまでだ。
「時尾様。身勝手な頼みとは存じておりますが、何卒宜しくお願いします。」頭を下げてそう言うとエリザベティス2世は部屋を出た。
おほん!「時尾様。魔法については私達がお答え致します。…が、本日はお疲れとお見受け致しますので、どうぞ、客間でお休み下さい。」赤いローブの人はそう言って頭を下げる。
(確かに色々ありすぎて頭も体もフラフラだ…それを見抜かれたのか。)「そうします。」
明日は魔法について王宮魔法師が教えくれるらしい…
メイドに連れられて、客間に案内された。
めちゃくちゃVIP待遇の部屋だ。部屋の外にはメイドと兵士が常に待機しており、何かあれば声をかけて欲しいとの事だ。
食事やお風呂は部屋に完備されているが…
とりあえず、寝た!zzz…
娘を失くして絶望するわ!突如として異世界移動するわ!女王や大勢の人の前で萎縮するわ!で…疲れたのだ!
ドタドタドタドタドタドタ…
足音が聞こえる…
カーテンから光が射し込んでいる(もう朝か…)
()
「ちょ、待ちなさ~い!」
「いや~~~!」
子供が暴れてる?
俺は扉を開けて顔を覗かせた。
すると、ピンクの塊が俺の腹にタックルしてきた!
「ブォッフ!??」凄まじい衝撃で部屋に戻された…
「キャーーー!賢者様!大変!申し訳ありません! 」少女を追いかけてきたメイドが即座に謝罪する。
腹に乗ってるピンク色の物体を見ると…
小さい少女がいる。ピンク色の髪にピンクの服、目は空色で、5歳ぐらい…娘と同い年ぐらいのとても可愛らしい少女だ。
「大丈夫?何処か痛くない?」心配して声をかけたら…
「おとうさん!」少女ははっきりとそう言った。
(え?桜?)思わずそう思ってしまった…
しかし、見た目も…声も…全く娘とは違う!
「よく見てごらん!俺は君のお父さんじゃないよ!」冷静に少女に諭した。
だが…
「う、う…あ~~~~!!」泣き出してしまった…
「ああ!ごめん!ごめんね!ほら、大丈夫だよ~!」
少女を抱えて抱っこしたが…
「あーーーー!」足をバタバタして余計に暴れだしてしまった!
「申し訳ありません!すぐに連れて行きます!」
そう言ったのはメイドのメアリーさんだ。
メアリーさんは少女を抱き抱えようとした。
俺はそれを止めた!
「大丈夫ですから。」
俺は少女を下ろして「おとうさん!ですよ~~!」といない、いない、ばぁー!をした!
少女は泣き止んで、笑ってくれた。
こう言う時は、叱ったり、冷静に諭すよりも敢えて乗っかる方が早くから泣き止んでくれるのである。
そして、肩車して部屋を2週ほど回った。少女は大笑いしてくれた。(良かった…)
「良し!じゃあ、終わりです!」少女を下ろし、メアリーさんに預けようしたが…少女は行きたくないようだ。
むしろ、俺の足にしがみついた。(困ったな…)
「チェリー=ブロッサム!これ以上迷惑をかけてはいけませんよ!」メアリーさんが強く言う。
しかし、子供に強く言うのは逆効果な時もある…
(チェリーか…桜と同じ名前だな。)少し親近感が沸いてきた。
「チェリーちゃんって言うんですか。可愛い名前だね。俺の名前は時尾 翔って言…」
「おとうさん!」食い込みに言われた…何でだ
「この子の両親はどちらにいますか?」メアリーさんに聞いてみと…
メアリーさんは少しうつ向いた。そして俺の耳元まで近づき小さな声で耳打ちした。「とある事故でご両親共に他界されています…両親の親族は誰もこの子を引き取らなかったので王宮で管理しているのです。」
(管理って…モノ扱いみたいに)
(俺がこの子の父親に似てるのか?なら仕方ない!もう少し付き合うか。)
「チェリーちゃん、何かして遊ぼうか!」
「うん!」
「この子としばらく遊んでも大丈夫ですか?」そうメアリーさんに言うと…
「なら私もお側にいます」と返されて俺と少女の真横に来た。
…信用無し!
「何して遊ぼうか?」俺は聞いた。
「ん~~!かくれんぼ!おとうさんがおにね!」と指指して言うと部屋から飛び出して行った!
「いけません!」メイドさんの制止も聞かず少女は走り出す。「あ~もう!」メイドさんは追いかけて行った…
とりあえず一人残された俺は10数えた…1、2、3…
9、10!「もう良いか~い?」
「……………シーーーン」(返事が無い!寂しい)
とにかく、かくれんぼのスタートだ!
部屋から右に行ったのは見えたが、この宮廷…広すぎる!これじゃあ、あのすばしっこいのは捕まらんわな~。
そこで俺は、「チェリーちゃ~ん!もう良いか~い?」と大声で聞いた。
「…………もういいよ~」小さく返ってきた。
(良し!もう見つけたも同然だ!返事をした時点で俺の勝ちは見えた!何故なら…)声の方へ行くと、柱の影にピンクのヒラヒラした服を見えた。
(あんな服装や髪をしてたら目立つからな!)俺は強気だ!
「チェリーちゃん!み~つけた!」
「あ~!みつかっちゃった!」少女は嬉しそうだ。
「ねぇ!こんどはすごいものみせようか?」少女は自慢気に言っている。
「お!何々?」
すると少女は、手を合わせて…「ん~えい!」
少女の手と手の間に風が起こっている!
「すごーーい!」(いや!マジで凄いわ!こんな子供が魔法を使えるのか!)
「でしょー!」少女は誇らしげだ。
次に少女は水を出して浮かばせた。その次は、光を出した。
そして最後に、火を出した………(火!??)
「それ危ないからしまいなさい!」(宮廷が火事になるーー!!)
しかし、俺が叱ったためか…少女はビックリして、弾みで火を大きくしてしまった!
「「わーー!」」二人して叫ぶ
「水!水水!みずーー!」
その時、火は踊るように舞い出した…
火が人の形になり曲芸をするかのように俺と少女の周りを舞っている。
(…綺麗だ。まるでサカースの曲芸だ…)
「すごーい!きれー!」少女はおおはしゃぎの様子
そして火の人形はパフォーマンスを終えた曲芸師のごとくお辞儀をして、消滅した。
「宮廷内で火魔法を使ってはいけまんよ!」赤いローブを着た男の人が優しい声で言う。
この人は…ミカエラル=ハーティー公爵だ。
「探しましたよ。時尾様。それにブロッサム嬢。朝食が出来たのでお呼びに上がりました。」ハーティー公爵は俺の部屋に行ったが不在なので宮廷内を探していたらしい…
「すいません…」
「いえいえ。朝食が済みましたら魔法についてお教え致しますよ。」
魔法についての授業が始まる。