『新西方7星』結成‼︎
「それじゃ、これより自己紹介を始めます! 」
「「「イェーイ」」」
なぜ今自己紹介が始まったのか?
それは一昨日、私とリーダーの何気ない会話がきっかけとなる。
「上級回復魔法と支援魔法が得意分野なのか。すごいな、まだ20歳にもなっていないのに上級魔法を使えるのか」
「はい、回復魔法は小さい頃から母に教わっていたので」
その時私たち2人はチームの拠点がある町の付近にある荒野に来ていた。目的は新しく入団した私のステータスをリーダーが確認するためである。私は回復と支援魔法しか使えないので、魔物に攻撃するのはリーダーだ。哀れにも今回の試し撃ちの標的に選ばれたのは岩石獣の群れだった。
「奴らにしよう。それじゃあまずは俺に支援魔法をかけてくれ! それと、俺は戦闘で攻撃魔法を使うことはない。」
「わかりました」
私は魔力を込め、手のひらに白く輝く術式を展開する。それをリーダーに向け、
『物理攻撃力上昇』
と唱えた。
すると、術式の放つ光がリーダーの方に飛んでいき、吸い込まれる。
「すごいな」と呟いたリーダーは身を潜めていた岩陰から岩石獣の正面の位置に移動する。手に握るのはS&Wm500というリボルバーと弾薬35発。200メートル程の距離があるが、岩石獣達はそれに気がついた様で、スピードを上げ、突進してくる。
対するリーダーは攻撃の構えを取り、
『対軍蹴撃2連‼︎』
と、攻撃を放った。
放たれた攻撃は暴風と化し、周りにあった草木、岩もろとも一瞬にして岩石獣達は破砕された。
ざっと500頭位いたものがリーダーの軽く放った攻撃により今では20頭も残っていない。
攻撃後、一瞬にして距離を詰めたリーダーは標的に銃口を向け、
バン! バン!バン! 爆発音が響く。
辛うじて生き残ったものもリーダーの手に握られたS&W500により次々と倒されていく。
そして30秒後、岩石獣の群れはリーダーの手によって1匹残らず狩り尽くされた。
その中から、まだ原型を留めている死体を3体ほど選び、それを運びながらこちらへ戻ってきた。
「食料確保」と呟いた。
すごい、凄すぎる。こんなこと常人には出来ないだろう。
「安心した、これなら6人全員分の支援を任せても大丈夫そうだ!」
こんなすごい人に認められた私は少し嬉しく思った。
しかし、次のリーダーの言葉にその喜びはほとんど吹き飛ばされた。
「1か月後の魔王討伐の戦友が増えたな!」
いきなり飛んでもないことを言い出したぁー〜ー!
「魔王討伐!?!?!?」
私は突然の爆弾発言にしばらく声が出なかった。
だって魔王討伐というのはそう簡単にできるものではないのだ。この世界の歴史上、魔王討伐が決行されたのは十数回、そしてそのほとんどが返り討ちに遭って失敗している。何せ魔王は悪魔の加護を受けている最強の存在。この世界で一般的な人間の100人分の力を持っていると言われているAランク冒険者をダース単位で吹き飛ばすことができるという。そんな怪物相手に1か月後、戦いを挑むというのだ。
だが、リーダーはなんとでもないというような顔での拳銃を手で回している。
少しおかしいのではないか、この勇者・・・
「あ!そういえば、自己紹介をすっかり忘れてました。私の名前はユウカ・ササキといいます! これからよろしくお願いします!」
何せ拠点に着いてから、『時間がない』と1時間もせず連れだされたのだ。まだ誰ひとりとして名前を知らない。
「ユウカか、俺の名前はカナ・ルーミールこちらこそよろしくな!」
会って3時間、はじめての自己紹介。新鮮とはいえない。
「それにしても自己紹介か、・・・ よし! 帰ったら一人一人自己紹介だ!」
そして、今、自己紹介が始まった。
「まずは俺から! 『新西方6星』リーダー、カナ・ルーミールだ、得意武器は拳銃と短機関銃、接近戦担当だ!」
リーダーは高身長で体格も良い白髪のイケメンだ。性格も明るく、まさにリーダーという感じである。
「俺はサブリーダーのキース・ルイ、得意武器は軽機関銃、リーダーと同じく接近戦担当」
キース様も身長は普通なものの、イケメン。黒髪で性格はリーダーとは対照的で暗めだ。
「俺の番っすね!名前はセンリ・アサン、狙撃手をやってるっす!」
なんか銃多くない?銃で魔王討伐なんて聞いた事も見た事もない。普通なら剣とか魔法とかを使うものだと思うのだが・・・
「そうそう、俺光の精霊魔法も得意っすよ!」
お、ついに『魔法』という単語が出てきました!
センリ様は白髪の小柄な青年という感じだ。
「次は僕ですね、ケイスケ・ユウキです、炎の魔法剣が得意で、接近戦担当です。どうぞよろしくお願いします。」
身長はそれほど高くない。腰に1本の剣を装備している。
「次は私ね、爆撃担当のスカイ・ローズよ。よろしくね。」
今度は馴染みやすそうなお姉さんっぽい人だ。ロングヘアで・・・、ちょっと待った、今この人何と言った? 爆撃ですって!? どんな思考回路をしていれば魔王に爆撃を食らわせようという発想にたどり着くのだろうか?
まぁでも優しそうな人だし、後で話しかけてみよう。
「次は俺の番ですか、俺の名前はラーデ・ランス、防御役を務めています。今後ともよろしくお願いします。」
今度は賢そうな人だ。青色の髪のイケメンで、腰に拳銃を装備している。
そして、
「ユウカ・ササキといいます。回復と支援を担当させて頂きます。よろしくお願いします!」
最後に
「それじゃあ、新西方6星改め、新西方7星、結成だ!」
こうして、私はこの新西方7星の一員となったのだ。