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十二話

全快した蘭丸は、千代に対し心から感謝の礼を述べた。


「ひとえに蘭丸様の御武運、神様の御加護のたまものでござりましょう」


控えめに応じる千代も美しい顔を綻ばせる。


幸せなひと時であった。


蘭丸が眠り続けた半年余り、戦国の世は目まぐるしく動いている。


千代は自分が探った世の動きを、細かく蘭丸に聞かせた。


蘭丸もまた、自分の知るすべてを千代に語った。


地侍の白刃が振り下ろされる刹那、千代の必殺の手裏剣に救われたこと。


丁重に埋葬された信長の遺骸。


甲賀の地に匿われ千代の寝食を惜しんだ看病の日々。


千代は驚愕して、聞き入るばかりである。


「蘭丸様はすべてをご存じなのであろうか…不思議なお方…」


端正な蘭丸の風貌に魅入られながら心中でつぶやく千代であったが、蘭丸生存の噂は少しずつ広がりつつあった。



蘭丸は今、時世の中心にいる。




商人や旅の僧を装う他国の間者が多数街道を往来するに及んで千代は、信頼に足る近衛前久を頼った。


「まずは鷹峯の我が屋敷に御移りなされますようにとの、我が主の口上でござります」


甲賀の里に出向いた近衛家の使者が、蘭丸に拝謁して、前久の全快の祝いの言葉と共に丁重にのべた。


数日の後、近衛家より二丁の輿が到着した。


輿に乗る蘭丸と千代、供の巫女達の前後を近衛家の警護の侍達が固める。


主自身が門前で出迎える中、一行は屋敷に到着した。


御殿の上座に座る蘭丸に対し、前久が丁重に尋ねる。


千代は脇で聞き入る。


「まずは我が屋敷でおくつろぎあれ。領国にはいつお帰りでござりましょうか」


「帰るつもりはありませぬ」


蘭丸の言葉に前久は仰天した。


「では御所に昇殿して天下に号令をなされるおつもりでしょうか――」

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