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九話

光秀の軍勢を避けながら本拠の岐阜をめざした信長一行であったが、本能寺の変を聞きつけた各地の土豪や一揆勢が、早くも恩賞目当てに落ち武者狩りに各地に出没を始めていた。


安土城で信長より饗応を受け、堺見物の後、京の本能寺で再会を約した家康の一行も急変を知り領国に向かい脱出の最中であった。


群がる落ち武者狩りの勢力に次々に味方を打ち取られ、今は信長と蘭丸のみが必死に街道を駆け抜けるが遂に進退に窮した。


不意に街道の藪の中より突き出された槍に脇腹を突き刺された信長は、堪らず落馬した。


「早く首を獲れ、もう一人いるぞ。恩賞にありつけるのじゃ」


蘭丸を取り囲む地侍の群れ。


背中に深手を負い崩れ落ちる蘭丸の頭上に振り降ろされる白刃。


一瞬の閃光の後、蘭丸の意識が途絶えた。




服部半蔵が先導する夥しい伊賀忍群、後尾を固める甲賀忍群を率いる千代の元に、最後尾より注進が届く。


「落ち武者狩りの地侍に、包囲された侍がおります」


甲賀忍群を指揮する千代の任務は、三河の領国に脱出する家康一行の警護である。


「由緒ありげな武士と若い侍でございます。主従のようでもありますが武士はすでに命はない模様。けなげにも若い侍はその場を離れませぬ。あるいは討ち死にの覚悟とも見受けられます」


「捨ておけ…」


と言いかけた言葉を呑み込む。千代の心が動いた。


地侍が蘭丸に刀を振り下ろす刹那、千代の放った手裏剣が地侍を倒した。


苦も無く地侍勢を追い払い、うつ伏せに倒れた若い侍を見下ろす千代の目にとまった侍の脇差。


並みの侍が所持できるような拵えではない。


助け起こした若侍の顔に覚えがある。


(森蘭丸様…するともう一人の武士は…信長様)



千代はすべてを悟った。

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