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国立フリーター大学自由学部ネット社会学科

作者: 須木伊久留

1限目:自己紹介とネット生存論




明日が来るかどうかは容易に判断できない。ましてや明日の昼飯がきちんと確保できるかどうかすら分かっていない。

こんなこと言うなら、お前はホームレスでもやっているのかと言うやつがいる。阿保か。この時代ホームレスの方がまだしぶとく生きてるじゃないか。

そもそもここ日本でホームレスになる奴らは激減しているはずだ。

よく考えてみれば、10年前くらいの少し都会の主要駅前なんかにはむやみに段ボールがあちらこちらにあった。

俺が餓鬼んちょだったころには、気になるがために近づこうとしたら親に怒鳴られたもんだ。

一方で今はというと、段ボールにくるまって前の日に捨てられた新聞を広げている()()()()()()()()()はどっかに行っちまった。

多分、どっかで働いているか、、、これだけ時間が経っているから、まぁたぶんあれだ。

という感じでホームレスってのは激減しているってわけだ。

最初に言ったしぶといってのはなんなんだって聞いてきそうな奴らがいそうだから、このわが身の現状を持って説明しよう。

まず、俺は国公立大卒で大手メーカーに新卒で入社した。そしてとりあえず2年は仕事ってものをしてみた。

「石の上にも3年」とかいう()()があるが、俺は残り1年を残して石の上からワニのいる海へ落ちてみたわけだ。

まぁ甘え甘えで言えば「石の上に2年」はいたわけだ。そして現状は何をしているか。フリーターだ。

フリーターってもんは自由で良い。好きな場所に住み、好きな時間に起きて、かけもちでバイトをすることによって正社員で働いてた金額よりも多くの給料をもらえる。

特に20代のうちはバイトでかけもちしている方が大抵は正社員時代より多くの給料を得ることになる。

いいことずくめだ。現状に満足している。現状は。

しかし、一度は正社員に勤めたことがある身だ。現状に満足していても不安が払拭されたわけではない。

そこが()()()()()()()()()との大きな違いだ。

よく考えてみろ。今の日本においてホームレスの生活をする必要性は無い。

何のための失業保険だ、何のための再雇用制度だ、何のための公共職業訓練だ。

最悪、働かなくても生きていける制度が成立してるのがこの国だ。

それでもホームレスは存在する。そう彼らはある意味でしぶといんだ。

俺なんかよりプライドは大いにお持ちであろう。それでも死ぬ気で生活しようとしているんだから、そのしぶとさには敵うわけもない。

一方で俺なんかは悠々自適に自分のしたい状況を自分で作り上げて生活しているわけだ。しぶとさのかけらもない。

プライドを捨てて、少しの金の知識があればこんな感じで生きていける。不安を拭うことなく。

ここ最近は読書とネット三昧で生きている。さてそうなるとどうなるか皆さんにお教えしよう。

まず、昼夜逆転することになる。なぜ昼夜逆転することになるのか。読書に関してはあまり関係ないが、いわばネット三昧に関しては大いにこの要因を潜ませている節がある。



ネットという世界は本当に面白い。例えばネットで知り合った人間はリアルな社会での反応とは全く異なった対応や会話をすることになる。

「ネットは顔が見えないから」「匿名でできるから」なんて声が聞こえそうだが、そんなことは分かっている。というよりもいまや自ら顔を出す人も多い。名前も本名に近く出している人だっている。

今のネットが面白いのが、本来関わる人種、年代の人が全くリアルと異なるリアクションをしているということだ。



まず10代でネットにいる彼らを説明してみよう。彼らを「自己顕示欲迷惑マスター」とでも呼んでおこう。どこの誰でもご存じであると思うが、ネットというのは大抵が虚偽によって成り立っている。そう言う点も踏まえてこう名付けよう。

10代は特に面白い。普段の学校や家庭で自己表現ができない分、ネットにおいて自分を主張することには甚だ長けている。迷惑はつきものになってくるが。彼らは自分を主張することに関しては手段を選ばない。周りの雰囲気などお構いなしだ。話の構成すらも無視することができる。本当だ。「そういえば」「それで」「だから」とかいう接続詞は知らない。基本の接続詞は「でさ」「俺って」「私って」だ。

彼らにとって他人の話なんて大抵は耳には入っていない。どれだけ自分をアピールするか、名声を得るか、ただそれだけだ。

しかし、実際の学校のクラスでこんな奴らがいたらどうなる。間違いなく省かれることになる。

というか、俺なら顔も見たくないくらい無視する。本当だ。

それがネットにおいては自由に「自己顕示欲迷惑マスター」であっても生きていける。

その理由として「顔が見えないから」「匿名だから」っていうのをまた言いたいんだろう。いやもういい言わないでくれ。

こんな「自己顕示欲迷惑マスター」はネットでも省かれる。当たり前だ。というか俺が真っ先に省く。ご存じの通りネットでも「省く」行為はできる。

この「自己顕示欲迷惑マスター」が生きていけるのはそんな理由じゃない。「自己顕示欲迷惑マスター」が「自己顕示欲迷惑マスター」を擁護するからだ。ここでお互いの干渉が起きる。

「自己顕示欲迷惑マスター」は自分の自己顕示欲を大いにふるってくる。それに僕は反応せず無視する。反応するのはもう一人の「自己顕示欲迷惑マスター」。

なんかこんなこと言ってるとゲシュタルト崩壊すると思うし、自分が説明しながらイライラしてきたから「A」と「B」にしようか。疲れた。

「A」は自己顕示欲をふるう。「B」も自己顕示欲をふるう機会を狙っているわけだ。そう「B」にとって「A」は格好の獲物だ。「A」を褒めれば、自ずと「B」も評価されることになる。そして「B」は自己顕示欲を発散させるチャンスを得るわけだ。

まるでティラノサウルスじゃないかと僕は思っている。

トリケラトプスを豪快に食べている自分に威厳を示して「俺は強いんだ!こんなデカいやつを容易く仕留めてやったぜ!なぁ相棒!」って「B」がトリケラトプスを捕獲した「A」に言うわけだ。はい、劇場の完成。

というわけで、この10代のネットのありかたを僕はネット生存論1「ティラノサウルス型」と呼ぶことにしよう。



んでもって20代ってわけだ。20代になると多少なりとも社会性が出てくる。そう社会性で自己顕示欲を表現するのがこの世代ってわけだ。そうだなこの世代は「自己顕示欲調整失敗マスター」とでも呼んでおくか。

彼らはある程度社会に出ているわけだから、社会通念のことを主張し、いかにも自分が言っていることは間違いなく正しいと対話相手に対して説得してくる。

そこで登場する怖い存在が「知ったかマスター」だ。この人物は怖すぎる。10代のティラノサウルスの方がまだ可愛い。

何が怖いかというと簡単に法破りなことを言ってくる。どうした日本は法治国家だぞ。

しかも自信満々に「そのくらい知っておかないと!」って完全なる間違いを享受してくれる。あぁなんて素晴らしい先生なんだろう。刑務所での授業なら大絶賛だろうな。

社会性があるがゆえに起こるのがこの世代ってわけだ。

この人たちも通常の社会では学んできたことを自分で表現したいが、間違っていたら恥ずかしいと感じる。

それはそうだ。人間誰だって間違ったことを言うのは恥ずかしいし、即座に改善したい。それでも言いたいという気持ちがある。

まぁそう考えたとき、ネットってのは虚偽の場でもあるから、間違いを修正できる機会を得るって意味ではいいのかもしれない。ただあまりにも自信満々に間違える奴が多すぎる。こっちが恥ずかしくなる。

ただし最近ではサイバー犯罪捜査ってやつも発達しているから気を付けるに越したことはない。そもそも変な間違えを言うくらいなら目の前にあるパソコンかスマホのブラウザ引いて、ある程度の文献探してしれっと調べればいいのにとか思ったりしてしまう。ちなみに俺は絶対に恥ずかしい思いをしたくないから実際にやっている。

まぁそういう意味で俺はこの世代を「自己顕示欲調整失敗マスター」と呼びたいわけである。

この世代もまた恐竜っぽくないかと俺は思っている。また恐竜かよって声が聞こえたが気にしない。それと博物館には恐竜の展示をしているところが日本には少ない。そんな不満を実は持っているが、そんなことはどうでもいい。

この世代はどう見てもプテラノドンだと思う。そうあの鳥の形をした恐竜だ。

奴らはティラノサウルスがトリケラトプスを食っているときに、間違いなく空中からその餌を何処かで得る機会が無いか狙っている。

「ティラノサウルスよ。そんな正面からでなく、お前の横から奪う方法を俺は知っているんだぞ」というばかりに空中であちこち数匹が飛んでいる。

その餌を奪うやつは本当にうまいこと美味しい部分を奪うやつもいるが、失敗してなんか美味しくない肉を取ったくせに「この肉も実は美味いんだぞ」と虚偽で食っている奴もいる。そんな無理するな惨めだ。

ということでこの世代はネット生存論2「プテラノドン型」と呼ぶことにしよう。



そして30代はというと、本当の社会を知っている方が沢山いらっしゃる。この世代はプテラノドンの敵になる。大抵は。

とりあえず、これより上の世代は少数派になるだろうから、それ以上の年代の特徴を知りたい方はどっかの大学のそれっぽい論文を探してくればいい。大体論じてある。

俺は飽くまでも若い世代、というより自分が実際に見ている現状で見たことを言っているだけだ。正しい論文とかそんな内容が欲しければそちらを見るのが良い。ここではただのフリーターの経験則に過ぎない。無理は禁物だ。

ということでこの30代という世代は厄介だ。本気で遊んでくる。もしくは10代以下の阿保がいるかのどちらかだ。

つまり、ネットヒエラルキーとかいういかにもN〇Kのニュースで登場するような用語が丁度似合ってくる世代だ。

そうこの世代は両極端だと思っている。あまりにも両極端だ。

社会的立場が割とそのまま自己顕示欲の形として見えてくる。分かりやすいといえば分かりやすい。

この世代は「自己顕示欲赤白マスター」とでも呼んでおこう。赤というレッドカードを引く者もいれば、白という安全な橋を渡る者もいるということだ。

実際の社会においても社会的立場が高く、表現力に優れている人はネットの世界でも力を発揮する。一方で10代と変わらないような発想を持っている人も多い。これは困る。10代のティラノサウルスが滅茶苦茶間違った主張をしてくるわけだ。ひどく疲れる。

またまた恐竜に例えてしまうことになるが、これが最後だから許してほしい。彼らはネット生存論3「ラプトル・スピノサウルス型」だ。

まぁ今の時代だ。ネットで検索してみてほしい。なんとなくイメージがつく人は多いのではないかと思う。

恐竜のとある有名な映画なんか思い浮かべてほしい。ラプトルは人間をひたすら追いかけてギャアギャア言いながら走り回っているいわば狂気的なイメージがある。一方でスピノサウルスは人間を発見したときにじっと見つめて観察し、すきを狙って襲ったり、時には仲間になったりするイメージがある。意外にも同様の種類に感じるが、どこか異なったイメージがこの30代の赤白のイメージに同化したわけである。


というわけでこのネット生存論3つの世代が大体登場するのは深夜というわけである。ティラノサウルスは大物が登場するこの時間を狙い、横からプテラノドンやラプトル、スピノサウルスが突っつきあい、一向に餌取りが終わることがない。みんな疲れを取るためにネットに登場する時間が深夜ということになるが、そこで餌取りが延々と行われてしまうのであれば、昼夜逆転してしまうのも当然の結果であるということだ。






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