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第七話 後宮の怪



 舞踏会から数日後。

 落ち着きを取り戻した後宮の、竜胆の宮で、私はお茶を飲みながらふと気になってマイラに聞いた。


「ねぇ、マイラ。私がカイルさまと一緒に舞踏会に出たせいで、カイルさまが少女趣味(ロリコン)だと思われるようなことにはなってない?」


 私の年齢が二十四才だということは、カイルにもマイラ達にも話してある。

 けれど遠目に見ただけでは、たぶん私がとうに成人した大人だとは思ってもらえないだろう、悲しいことに。

 一緒に歩いて入場するはずが、直前でなぜか抱きあげられてそのまま入っちゃうことになっちゃったから、余計にその印象は強まったはず。


 そう考えて落ち込み気味に聞いたせいか、マイラは励ますように答えてくれた。


「大丈夫ですよ、姫様。上位貴族たちの間にはそれとなく話を流してありますし、あのドレスでしたら姫様をただの小さな子どもと思う者などいないでしょう。本当によくお似合いでした」

「ありがとう、マイラ。それなら、いいんだけど……」


 まあ、確かに、あんまり露出しないようにしながらも胸のサイズを強調するデザインだったよね、と思って納得する。

 私の脳細胞を犠牲に成長した胸肉が、初めて活躍したと思えばいいのだろうか。

 なんだか複雑な気持ちになったけれど、カイルにおかしな噂が立たなければそれでいい。


 ……大丈夫、だよね?


 なんだか果てしなく心配だけど、こんなところで私が心配していてもどうにもならないから、いいかげん頭を切り替えようと別の話題を探す。

 そしてふと、気になったことがあったのだった、と思い出した。


「そういえば、マイラ。カイルさまの寵姫……、じゃなかった、側妃? って、何人だっけ?」


 私以外の、と訊ねると、マイラは平然と答えた。


「七人です」


 わぁ~、前に聞いた時から十人も減ってる~。

 なのにマイラさん、「最初から七人ですが何か?」みたいな顔してる~。

 分かってる、私分かってるよこれ、聞いちゃダメなやつね?

 ハイハイ、もう聞かないから、聞かないからね~、大丈夫よ~。


 心の中でぶつぶつ言いながら、「そっか~」と引きつった笑みで頷いた。


 舞踏会でカイルのそばに来ようとする女性たちがいて、誰も紹介してくれないので周りの噂話で彼女らが側妃なのだと知って、(ああ、あの人たちが側妃なのか。さすがに皆さん、美人だなぁ)と感心していたのだけど。

 十七人いるはずなのに、どうも数が少ない気がしたのだ。


 私の気のせいか、舞踏会に出席を許されている側妃が少ないだけか、そのどちらかだろうと一度は思ったものの。

 先日の“害虫駆除”の件もあるし、もしや、と思って聞いてみたらまさかの正解だったっぽい。


 べつに正解しなくてよかったのになぁ。

 むしろ正解しちゃったせいで今ちょっと泣きそうだ。


 後宮こわいわ~。

 絶対巻き込まれたくないわ~。


 そんなことを思いながら、冷めかけたお茶を飲んだ。






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