貯金残高31250円
「お兄ちゃんは優しくて勉強もスポーツも出来て凄く格好いい私の憧れだったんです!間宮先輩、あなたは私からそんな大事なお兄ちゃんを奪ったんです!」
「どういうこと?確かに『付き合ってほしい』って言われたことはあったけど私はきちんとお断りして、だからともちゃん、あなたはから北野君を奪ったりなんかしてないよ?」
「そんなこともちろん知ってます。ただ、そのことがあった後、お兄ちゃんは……お兄ちゃんは……」
嘘!?まさか!?やめて、そんな……聞きたくない
「あの後お兄ちゃんは勉強もスポーツもやめて部屋に閉じ籠ってダラダラと生活しゲームと美少女フィギュアだけが生き甲斐の『完全引きこもりキモオタ』になってしまったんです!!!私の格好いいお兄ちゃんが……」
ん?ん……とりあえず自殺しちゃったとかじゃないのね
「私はそんなお兄ちゃんを見ていられなくて間宮先輩!あなたに復讐することを誓ったんです!」
「ちょっと!ちょっとちょっと!」
「なんなんですか?こんなシリアスな場面で双子漫才師みたいなそのツッコミは?」
「いやいや、ともちゃんそんな理由で復讐なんて…」
「"そんな"とは何ですか!?"そんな"とは!?部屋で一人でデュフデュフ笑いながら美少女フィギュアのスカートを覗き込んでるお兄ちゃんを私は見てられないんです!」
「そ、そりゃちょっとともちゃんには可哀相だけど、もしかしたら北野君にとってはそれが幸せなんじゃないの…かな…って」
「とにかく私は間宮先輩を許しません!その為に中学校の頃から先輩に近づいてこの時を待っていたんですから!先輩?先輩にとって大切な人って可奈先輩の他にも居ますよね?」
ま、まさか刈谷先輩?
「知ってました?最近刈谷先輩のお弁当ずっと私が作ってるんですよ?フフ」
「刈谷先輩も毎日楽しみに待ってくれてるみたいで」
嘘……でも『男の人を射止めるには胃袋を掴め』って誰かが言ってたし……刈谷先輩まさか食べ物に釣られて……
「私、今日このあと刈谷先輩と待ち合わせしてるんです。告白します、きっと付き合うことになります私達」
「そんな!そんな私に復讐する為に?私から大切な人を奪いたい為だけに?」
「初めはそのつもりでした、でも……本当に好きになっちゃったんです刈谷先輩のことが」
「ともちゃん……」
「私が"こういう女"だって刈谷先輩にバラしますか?そうやってまた私から大切な人を奪いますか?正々堂々と勝負しませんか?」
私は何も言い返せませんでした。
「じゃあ私行きますから」




