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貯金残高100円

薄暗い廊下を私は一人駆けている。


刈谷先輩にクリスマスの日に訪問する時間を確認しに行かなきゃいけないわ。


刈谷先輩の教室に着くとそこでは先輩と高藤さんが楽しそうに話している。他には誰も居ない。


「じゃあクリスマス約束よ」

「おう」

「嬉しい!」


そ……そんなぁ……刈谷先輩、クリスマスは一緒に過ごす約束をしたじゃないですか、それともなんですか?私に幸次君や幸乃ちゃんやお婆ちゃんの面倒を看させて刈谷先輩は高藤さんと仲良くデートするのですか……?やっぱり可奈が言った様に私のことを利用しているだけなんですか?そんな、そんな、あんまりです。


はっ!?待って!これは良くあるヒロインの勘違いなのよ!ヒロインは二人の関係に勝手にヤキモチ妬いて一人で怒ってるんだけど、実は……そうよ!高藤さんの家がケーキ屋さんとかで刈谷先輩にクリスマスの日のアルバイトを頼んだりしていて、刈谷先輩も貧乏だからケーキを報酬に快く引き受けたりしていただけだった、とかいうアレに違いないわ!そうよ!きっとそう!


えっ!嘘?刈谷先輩が高藤さんを抱き寄せた!えっ!?ヤメて!キスなんてしないで!


もしかしてお金なの?お金が目的なの?刈谷先輩!そんなダメですよいくら貧乏だからってお金の為に愛を売ってしまっては。


「貧乏が悪いのよ~、貧乏が~、う~ん、う~ん」


ガバッ!


やっぱり夢よね、知ってたわよ最初からハハハ……アハ……アハアハハハハ


「起きた?今子」


「お母さん、ここ、ウチ?」


「そうよ、大変だったのよ、学校から連絡あって急いで迎えに行って病院まで連れて行って、インフルエンザじゃなかったけど"しばらく安静にしてなさい"ですって。可奈ちゃん心配してたわよ連絡しなさいね」




― 今子、生きてるか? ―


可奈からメッセージが入っていた。


― 大丈夫、心配かけてごめん ―


返信するとすぐに電話が掛かってきました。


「ほんと心配したよ今子いきなり倒れるんだもん」


「ごめんね、もう大丈夫だよ」


「刈谷先輩も心配してたわよ、わざわざ私のところに様子を聞きに来たんだから」


そうなんだ、嬉しい。でも刈谷先輩……ごめんなさい、いくら夢の中とはいえ、私、刈谷先輩のこと信じきっていませんでした。


「まあ冬休み入ったんだし元気になったら遊ぼうね」


「うん、連絡する。可奈、ありがとう」


可奈との電話を切ったのと同時にお母さんが部屋に入ってきました。


「可奈ちゃん連絡ついた?そう言えばアンタうなされてたわよ『貧乏~、貧乏~』って、どんな夢見てたのよ、おかしいわね」


「……」


「それとさっき刈谷君って友達が訪ねて来たわよ」


「ひぇっえっ!!!」


私は急いで部屋の窓を開けて外を見たが見慣れた風景の中に先輩は居ませんでした。


「もうずいぶん前よ、イケメンね、今子の彼氏?」


「お母さんどうしてその時無理にでも起こしてくれないのよ!刈谷先輩何か言ってた?ねえ?」


「うん、『無理しないように伝えて下さい』だって、それから『明後日は中止にするから家で休んでおいて下さい』って」


「えええ~、そんなぁ~」

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