貯金残高―――
先輩には金曜のうちに冷蔵庫の中に入っていそうなものを書き出してもらっていて、それで作れる料理を考えるのが約束でした。
肉(合挽き)、ソーセージ、きゅうり、たまねぎ、人参、ブロッコリー、たまご、豆腐、納豆・・・etc
思っていたより色々あって「これならアレしかないでしょう!」と昨夜のうちに図書室から借りてきた節約料理の本の1ページをノートに書き写していたのです。
お母さんには少し遅くなることも許してもらい、私はお昼過ぎから先輩んチにお邪魔しました。
お婆ちゃんの了承を得て部屋の掃除と節約アイテムの準備をし、料理を作り、夕方お婆ちゃんと幸次君とでワイワイと話している時、先輩は幸乃ちゃんを連れて帰ってきました。
「ただいまー」
「帰ってきた!」
「おかえり」
「お邪魔してまーす!幸乃ちゃんこんにちわ」
「・・・」
幸乃ちゃんは私が声を掛けると刈谷先輩のそばからサササササっと幸次君の後ろに移動すると幸次君の背中越しに黙って私を見つめていました。
ま、まだ2回目だもんね…馴れてなくてもしかたない、大丈夫!頑張るんだから!
「兄ちゃん早くご飯食べようぜ!」
フフフ、幸次君は完全に私の味方なのよね。"男子を射止めるには胃袋を掴め"って本当ね、刈谷先輩!先輩の胃袋も私がギュッと掴んでみせますわよオホホホホホ。
「間宮!」
「ハッ!」
「お前またなんか妄想してただろ?」
「えっ?いえっ!そんな!さっさっ食べましょ食べましょ準備しますね」
「ジャジャジャジャーン」
「おお!ハンバーグか美味しそうだな」
「でしょ?でしょでしょ?先輩」
「でもこんなにたくさん作ってるけど肉あったか?冷蔵庫に」
「エッヘン!そこなんですよ!せ・ん・ぱ・い!」
私は空になった豆腐の入れ物を名探偵のようにして皆の前に差し出した。
「これ、豆腐ハンバーグなんです。正確に言うと 豆腐"超かさ増し"ハンバーグなんです、それからこの野菜スープも冷蔵庫の片付けをしながら有るものだけで作ったんですよ、さらにはこの炒め物!これもブロッコリーの茎をですね」
「イマ姉ちゃん早く食べようよ!」
幸次君が我慢できずに私の得意気なスピーチを止めに入ってきました。
「そうね、食べましょ、でも先輩!ほんと約束通りおウチに有るものだけで作りましたよ、幸乃ちゃんもいっぱい食べてね、幸次君!幸次君には"お姉ちゃん"の分もあげる、いっぱい食べなさい、"お姉ちゃん"頑張ったんだからね、『お姉ちゃん』もう一回呼んでウヒヒヒ」




