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貯金残高―――

「そして土曜日の朝が来た!」


「なに当たり前のことを宣言してんの?起きてくるなり」


「えっ?えっ?あっ、独り言よ!やだお母さん!それより今日お昼から出掛けるね」


「ウキウキしてるわね彼氏でも出来た?」


「やっ!だもう!そんなんじゃないってば」


「そうなの?お母さんが今子くらいの時には毎日ラブレター貰って、いっつも周りにボーイフレンドが何人も居たんだから」


たしかにウチのお母さんは娘の私から見ても羨ましいほど綺麗でスタイルもよく年齢を感じさせない。それに比べて私が幼児体型でタヌキ顔なのはきっとお父さんの血を引継ぎ過ぎているからに違いない、怨むべきはお父さんなのよね。


でもそんなタヌキさんにベタ惚れして、大学生で一人暮らしだったタヌキさんチに押し掛け女房的に通い詰め、その後周りの反対も押しきって卒業と同時に超特急で結婚までしてしまうのが当時高校2年生、つまり今の私の1つ上だったお母さんなのです。


そう言えば小さい頃はよくアルバムとか見たけど自分のことしか見ていなかったわ、お母さんの若い頃ってどんなだったんだろう?


気になった私は食べかけていたトーストを全部口に放り込み食器を片付けるとすぐに家族アルバムを出してきてリビングのソファーで見始めました。


「私が産まれた時だ…… これはお腹の中で…… やっぱりお母さん綺麗だなぁ…… そうよ!」


私は再びクローゼットに戻ると今まで一度も気にしたこともなかったお母さんの中学の卒業アルバムを探し出しました。


「えっとお母さんの旧姓は町田・・・このクラスじゃない、ええっと、あった町田令子!あれ?・・・」


そこに居たのは私だった。いえ、今の私そっくりのお母さんが写っていました。


「お母さん、ひょっとして・・・せ・い・け・・・」バシッ!


「いったーい、ツツツ、何もスリッパで叩くことないでしょ!」


「バカなこと言ってないの!お母さんの美しさは生まれながら、ナチュラルボーンビューティーなのよ」


「でも大人になってからとこの頃じゃ全然違うよ?」


「そう?私はそんなに変わったとは思わないけど、もしそうだとしたらお父さんに恋したからかな?」


お母さんはそう言うとちょっと嬉しそうにハミングしながらキッチンに行って食器を洗いだしました。


そっかぁ、恋をすると女は変身するのね、私にもまだ可能性は残されているかも!

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