単語泥棒と深夜の女
それは常態化していて普通のことになりつつあり、いやもうなっていて当たり前のことだった。私の単語が盗まれることや諸々の現象は。私は一応オンライン作家と言っていいカテゴリに入る人種だったがこの世界がやや暗いものであると知ったのは別に最近のことじゃない。「くそウンコ!」「糞とウンコは同じだよ」「うるさい!」私は朝っぱらからイライラしていた。また単語を盗まれた。どうせサイトを巡回して目についた単語をピックアップして自分の作品に組み込んでやがるんだろう。くそ腹立つ! まあ、たとえ私の思いついたオリジナルの単語だとしてももう誰かが使っているという点では私も同罪には違いない。だからそれは百歩譲って良しとしてやる。しかし若い女が──突然の登場で失礼するが私には若い女をネットで観察するという悪癖がある。そうとも、悪癖だ──深夜に画面に映ってしゃべっているのがどうしても本物だと思えない現象が単語泥棒とどういう共通点があるのか知りたくないか? 今私の言葉に答えた野郎は実際には存在しない。自分が言ったんだろだって? 確かにそうとも言える。しかしアレは別物だ。単語泥棒もそうだし、深夜の女もそうだ。ここにいい言葉がある。“幽霊”、“心霊”、“霊魂”といった話。あなたがたがどういう見識を持っているか知らないが霊が絶対に存在しないと言い切れる人は居ないだろ? あいつらはそういう類なんだよ。どうにもできない。このイライラを終息させるには私自身がそういうものになるしかない。だからあの野郎はまあ言わば手始めだ。これからの予定はこうだ。単語泥棒のところに行って渾身の力で絞め殺す。なんの罪悪感もない。首に紫色の絞められた痕跡が残るだろうが誰も私の犯行だとは思わんだろう。それから女のほうは──男なら誰でもやる変態行為をこの私がすると思うか? まずいまいましい回線をお釈迦にしてやろう。それからカメラやマイクも。その後静かに添い寝してやる。寂しがり屋のカワイイかまってちゃんだ、喜んで受け入れるだろう。横で寝ている男が合コンで知り合った野郎という保証はどこにもない。照明をつけて頬にそっと触れてみろ。実体があれば本物だ。ただ深夜にはよしたほうがいい場合もある。とくに心当たりがない時には。私もたまに若い女が横で寝ているという錯覚を起こすことがあるがいつもああ来たんだなと思うようにしている。寂しがり屋のカワイイかまってちゃんだ。
幽霊はどんなに怖くなくてもやっぱりホラーの部類に入るんでしょうね。