宣言!
奴隷志願者達はアルに抱き付かれホワンと幸せそうなミエールを羨ましそうに見詰めていた。
そして志願者の多くが『やっぱり、奴隷に成った方が幸せになれるんだわ!』と確信を強めていた。
此処に居る多くがそういう者だった為、アルは気付いていなかったが、『アルベルト様が幸せになれるお手伝いがしたい』と純粋に願っている者もいた。
アルが望んでいるのは正にそういう子だった。
しかし、[三食昼寝付き]で集まってくる様な者の中に居るわけが無いと初めから諦めてもいた。
アルは断る理由を探すための面接に望んだ。
結果として眷族達が推薦してきた子との面談ではアルが気に入る様な者は居なかった。
確かに四人とも優秀だったが、志願した理由はアルが好きだからではなく、危険なモンスターから身を護るための盾としてアルの奴隷に志願してきたのだ。それに、アルとの相性というよりかは推薦した眷族との相性が良さそうだった。
アルは面談で疲れた為、此処で一区切りとさせて貰い残りの7人は二時間の休憩後にさせてもらった。
この休憩所はアルが身内も入室禁止にして完全に一人になれる空間だった。
『いつ来ても此処は落ち着く…………』とアルはのんびりとお香の匂いを楽しみ好きなおやつと飲物を飲み、寛いでいたが、昨夜の徹夜の為かいつの間にか寝てしまっていた。
気が付くとアルは布団に寝かされていた。
『誰が布団に寝かせてくれたんだ?それに随分、スッキリしている…………』とアルが時間を見てみると休憩終了時間から2時間が過ぎていた!?
『どうして誰も起こしに来ないんだ!?それに静かだ………』と不思議に思った瞬間に遮音魔法が切れ、音が聞こえ出す。
部屋の外では何やら言い争いをしているようだった…………
アルは『待たせたら不味いな!』と思ったが、汗をかいて気持ち悪かった為、我慢できず『体を拭おう!』と思うとテーブルの上にはタオル数枚とお湯と大きめの着替えが用意されていた。
それらはアル好みだったのだが、服は大きかった。
アルは体を拭いながら他の服を探したが見つからず、仕方無く着てみると、サイズがピッタリで尚且つ、ぼろ布で縫われ柔らかいため気に入ってしまった。
『サイズが合ってる!?それに、こんな服作る人いたかな?』と思い出そうとしたが出来なかった。
そして部屋の外に出ようと、ドアを引くと「此処は通しません!」と叫びながら女の子が倒れ掛かって来た。
その女の子は「おはようございます!」と笑顔で明るく言って来るが服は所々破かれ、腕には擦り傷が出来ていた…………
「その服と傷はどうしたの?」分かってはいたが念のため聞いてみた。
「え?元からですよ?」と思わず騙されそうになる完璧な笑顔で言ってくるが、アルは固まって気まずそうにしている周りの人達を見て確信していた。
アルは部屋に女の子を入れ、「此処をみんなから守るために出来た傷だよね?」と治療していく。
それでもアルに気を使わせない為か「いえ、違いますよ?」と女の子は否定した。
「そっか」とアルは女の子の頭を優しく撫でて座らせた。
座ってから女の子は俯いたままだ。
「此処の部屋の整理や用意は君がしてくれていたの?」
「そうです。」と俯いたまま応えてきた。
「何でここまでしてくれるの?っていうか出来るの?」
アルはこの二日間、何時来ても快適に過ごせたため不思議だった。
女の子はアルに応えゆっくりと話し出した。
「私は瀕死の重症だった所を助けられた事があります。
異国で頼る人もお金もなく、誰も手を差し伸べては下さらず、くれるのはゴミだけでした。
このままゴミの中で埋もれ、死んでいくしかないのかな…………と絶望し諦めていた時に助けてくれた人がいました。
その人は私の治療が終わると一週間分の食べ物だけでなく旅道具と旅費までも下さり、いきなり消えてしまったのです。
私はお礼をしたくて探し回りました!それが今目の前にいる貴方です。」と顔を上げて言ってきた。瞳には涙が滲んでいる。
「でも、普通ここまでは出来ないよ!?」
「アルベルト様は異国のゴミの中で誰にも看取って貰えず、墓も無く供養もされない者がどうなるか御存知ですか?」
「…………」
アルは転生して来た時の説明を思い浮かべていた。
「その者の魂は邪悪な者に捕まってしまい解放されるまで苦しみ続けるでしょう。
アルベルト様は、私の命だけでなく魂までをも助けて下さったのです!」
「うん…………」
「私を空気だと思って無視してくださっても構いません、黙って付いて行きますのでお側で御世話させて下さいませんか?」
「そこまで思うなら、何故コンテストに参加しなかったの?」
「アルベルト様は奴隷志願者を諦めさせるために町長と相談してコンテストを開催されました。それに私が参加したら誰がこの休憩室を管理するんですか?」
コンテストに出れば、この子なら少なくとも最終段階まで残り豪華な賞品が貰えただろう。だが、俺の為に賞品が貰えるコンテストには出ず、誰の目にも入らないように静かに裏で俺を支えてくれていたのだ。
コンテストに出るには登録費が必要だった。その登録費が払えずコンテストに出れなかった者も沢山いたらしい。
アルは目の前にいる女の子を見て考えていた。
コンテストに出なかった者を選べばどういう反応があるか予想が付いていたからだ。
女の子はただアルを見詰め返し、考えが纏まるのを待つ…………
少しの間だが、黙考していたアルは突然部屋を飛び出し、
「あの子に決定する!!」と外にいる皆に宣言していた!




