転生前
案の定、俺は死んだ。眼下には俺の死体がある。
どうやら、幼児は無事な様だ。だが、保護者は喜んではいないようだ……
一応、警察職員の手前は子供に抱き付いてもう離さないという姿勢を見せてはいるが、子供から故意に手を離して歩き携帯操作に夢中になっていた風に装おうとしたようだ。
あれでは、運転手も利用されて憐れだ、確かに周りを確認しながら制限速度と車間距離を守っていれば問題なかったが、……
それにしても、あの幼児は今後も無事でいられるのか心配だ。
まぁ、死んだ俺ではどうすることも出来ないから、もし、あの世で見かけたら声を掛けてあげよう。
それはともかく、死後の世界があるとは思わなかったがあの世があるなら亡くなった親に会えるなと俺は内心喜んでいた。
そこへ、いきなり頭上から声掛けてくる存在が居た。
俺は予想していたのか期待していたのかそれには驚いてはいなかった。
だが、予想外の言葉に驚いていた。
「残念ですがっ!て何が残念なんだ?」
「貴方はあの世へ行けません、だから、あの幼児にも親にも会えません」とその得体が知れない存在は言った。
「神様ですか?」
「まぁ、貴方の死後を任された者です。下界の者とあまり関わりを持ってはならないので、姿は御見せできませんが、そのため稀に悪い方に騙される方もいます。基本的に善良な方にはそのような輩は来ないのですが。」
「じゃあ、なんて呼べば良いんだ?」
「好きに呼んで下さって構いません。」
「では、神様と呼ぶよ。あの世へ行けないってどういうことだ?それに、あの幼児は今後どうなる?」
「あの幼児の事は貴方には関係無いのでお話出来ません。それと、あの世へ行けないというのは貴方はまだ、十分に生きてなくこの世での修行が足りてないからです。」
俺は微妙に納得いかないながらも人から修行が足らないと言われたら「そうか……」としか言えなかった。
「それでは本題なのですが、貴方には他の世界に生まれ変わって修行をし直して貰います。」
「この地球ではなく他の世界へか?」
「はい、同じ世界に連続して生まれ変わる事は出来ません。」
「わかった。どういう世界かは教えて貰えるのか?」
「それを教えたら修行になりません。ただ、貴方に適した能力と鍛えたらその分は身に付くようにするだけです。それから、貴方がこの世界で行ってきた分はポイントとして使えるようになります。」
「分かった。それで、どうしたら良いんだ?」
「私からは特に何もいう事はありませんが貴方の思いのままに生きてください」
「分かった。」
「それでは転生を開始します」
そして、俺は暖かい心地に包まれた。