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数々の思惑を撥ね付けて

お久しぶりです!


ただいまテスト勉強を放棄して投稿しています(゜゜;)\(--;)オイ


勉強しつつ、頑張ります



「……もうすぐだ、もうすぐですべてが終わる」



豪奢な部屋のなかで、ひとりの男が囁く。その顔は喜びと狂気に満ちており、いまにも張り裂けんばかりの想いを抱いていることが窺えた。



「……九鬼、鬼の姿をした神よ。お前たちには、私の役に立ってもらうぞ」



にやりと笑う男の顔は、狂喜と共に泣き出しそうな顔をしていた。





















「……怜青よ、如何する」



月鬼が静かに怜青に問うた。責任は怜青にあるとして、対応をどうするか怜青に委ねることにしたのだ。


対する怜青は、聞いているのか聞いていないのか定かではないがずっと沈黙を保っていた。


そんな怜青を、月鬼は特に何かを言うわけでもなく静かに見つめる。そんな月鬼と怜青の態度に業を煮やしたのは、部外者の立ち位置にいた奏彰と斂鬼だった。



「おい、怜青。なにを呑気にしてるんだ!褒美目当てに、沢山の人間が血眼になってお前を探してるってのに」


「月鬼、お前もだ。皇帝だかなんだか知らないが、相手はただの人間。一発ぶん殴りにいけばいいだけの話だろう」



このふたりは案外気が合うのかもしれないと思いつつ、怜青は声を殺しながら言った。



「皇帝は……李劉りりょうは、私がまだ瑤家ようけにいた頃に実父に連れられて行った皇宮で会ったことがある」


「っ、なんだと!?」



怜青の言葉に、奏彰が驚きの声をあげる。そりゃ驚きもするだろうなと、怜青は心のなかで呟いた。怜青が過去に関することを言うなど滅多にないことであるし、皇帝と顔見知りだなどと爆弾発言もいいところだ。



「……して、なんとする」



月鬼は動じることなく、怜青に問いかけた。斂鬼も今度は静かに状況を見守っている。



「……李劉りりょうは世間知らずではあったが、愚かではなかった。恐らく、三ヶ月前に起こった霊山の気脈の暴走が何か関係しているのだろうと思う」


「気脈の暴走?三ヶ月前にそんなものがあったっけ?」


徒人ただびとであるお前にはわかるまい。だが、私のような霊力をもった者にはわかった筈だ。そして、あれが原因で李劉りりょうの寵妃であり、皇妃である天霞てんか様になにかがあったのだろう。あれから数日もの間、皇妃の部屋の周りを術師たちがうろうろしていたらしいからな」


「そんなことが……」



怜青の話を聞き、驚きすぎて逆に冷静になった奏彰は痛ましいといった顔をした。



「……李劉りりょうが何を考えているのかはわからないが、明日あす、ひとまず皇宮に行こうと思っている。万が一のために、仮面をつけて」


「正気か」


「無論だ」



怜青の顔つきからして、その意思を覆すことは難しいと判断した奏彰は諦めたような顔をして言った。



「……わかった。だが、これだけは約束しろよ……絶対に、無茶をするな。なにかあれば必ず呼べ、どこにでも駆けつける」


「行き先は皇宮だ。勝手に入っていいところではないぞ」


「そんなの承知の上さ。オレが行ってやるって言ってんだから、そこは素直に受けとれよ」


「奏彰……」



そんなに見つめんなよ、と照れた様子の親友を見て怜青が思ったことはただひとつ。



(こいつは阿呆か……)



駆けつけるなどと言っているが、たとえ怜青が呼んだとしてもその声が聞こえるなどまずあり得ない。それに、皇宮に無断で入ろうとした時点で捕らえられるのは必然だ。


怜青が感動している、と勘違いしている奏彰が怜青の呆れた視線に気づくことはなかった。




















━━━━その日の夜



丑三つ時、暗闇に包まれた都をひとつの影が駆け抜ける。その影は皇宮の近くまでくると軽く地面を蹴り、とんとんとん…と意図も簡単に外壁を登った。明らかに人間業ではないと思われる行動をとった影は、しかし息ひとつ乱すことなく宮のなかに侵入する。



侵入したのはひとつの部屋だった。部屋の主は褥のなかで寝ている……と思われていた。が、しかし



「貴様は何者か」



扉の方から声が聞こえる。影が振り返ると、そこには不敵な笑みを浮かべた皇帝が立っていた。


雲に隠されていた月が顔を見せる。部屋の窓から月明かりが射し込み、影の全体を照らし出した。



「よもや、わざわざ自ら出向いてくれるとはな……鬼の仮面」


「……お前の目的は私ではない、九鬼だろう」


「ほぉ、察しがよくて助かる」


「……だが、九鬼は連れてきてはいない」


「っ!」



余裕な顔をしていた皇帝が、初めて顔を歪めた。その顔に怒りが満ちる。



「わかっていて連れてこなかったのか!」


「当然。目的がわからぬ以上、茶番に九鬼を付き合わせるわけにはいくまい」



あっさりと告げる鬼の仮面に、皇帝は悔しげな顔をする。そんな皇帝を一瞥し、仮面は皇帝に問いかけた。



「皇帝、お前の目的はなんだ……ここ数ヶ月からして、さしずめ皇妃に関わることだろうとお見受けするが」


「…ああ、そうだ。皇妃を……天霞てんかを取り戻すことだ!魔界に囚われた我が妃の魂を、化け物どもが闊歩する場所から!」


「……皇妃の魂が、魔界に囚われたというのか」


「……正嶺しょうれいがそう言ったのだ。間違いない」


「魔界に……」



しかし、おかしい。魔界に魂が囚われるなど、そうあることではない。三ヶ月程前に霊山の気脈の暴走はあったが、そんなことで魔界に繋がる鬼門が開くわけがないし開いた気配もない。ここの気脈と鬼門は全く関係ないところに位置しているからだ。



「……暫し待て」



鬼の仮面……もとい怜青は皇帝に待ったをかけたあと目を閉じ、皇宮内の気配を探る。その様子を、皇帝は訝しげに見ていた。



(……確かに、ない)



皇宮内の人間の気配を探っていた怜青は、皇妃が住まうもされている部屋から魂の抜けた身体を感知した。魂が抜けていることで、恐らく仮死状態となっているのだろう。だが



「……このまま仮死状態が続けば、やがて皇妃の身体が衰弱して時を刻むのをやめるだろう」


「なんだとっ!」



皇帝が驚愕しているが、そんなことよりも皇妃の魂の行方が気になる。やはり鬼門が開いた気配もないし、もし魔界に囚われたというのなら魂は喰われ、身体は朽ち果てているはずだ。三ヶ月も無事にもとの姿を保っていられるわけがない。


どうしたものかと思案していた怜青の耳に、皇帝の驚きの声が届く。



「ここから皇妃の部屋の気配を探ったというのか?そんな術師が、正嶺を除いて他にいるなど……」



皇帝の言葉に反応こそ示さなかったものの、怜青は心のなかで首をかしげた。正嶺でなくとも、これくらい普通にできるだろうと怪訝に思ったからだ。しかし、そんなことよりも皇帝に伝えなければならないことがある。



「……皇帝、本当に皇妃の魂が魔界に囚われているというのなら、こちらに残っている身体が無事なはずがない」


「っ、なにっ!?」


「……魔界に住むものたちにとって、魂は極上の餌だ。もし魔界に囚われたなら皇妃の魂は喰われているのが普通だ。そして、魂が喰われているのであればこちらに残っている身体は朽ち果てている」


「なら、無事だということではないのか!?」


「身体を伴っているのならまだしも、魂だけの状態ではできることなどたかが知れている。だというのに、わざわざ魂を残しておくなど有り得ない」



ほとんどの場合が喰われている。しかし、僅かではあるが他の選択がないわけではないのだ……この皇帝は当て嵌らないので、それは有り得ないと思うけれど。


怜青の言葉に、皇帝は怜青に顔を歪めながら懇願した。



「……頼む、我が妃を救ってはくれまいか」



普段は賢王と呼ばれし皇帝の弱々しい姿に、怜青は同情よりも懐かしさがこみあげた。幼き頃、李劉りりょうは誰よりも怖がりで泣き虫だった。虫に泣かされるくらいに。


怜青の考えていることなど露知らず、皇帝はじっと返事を待った。そして。



「……言っておくが、私は九鬼の主ではない。それでもか」


「?九鬼の主ではなかったのか…だが、まぁいい。そなたほどの力なら、問題ないだろう」


「……頼んでいるのはそちらだというのに、随分と偉そうな物言いだな」



先程までの殊勝な態度はどこへいったのか


怜青との会話で平静を取り戻したらしい皇帝に呆れ顔になりつつも、怜青は窓辺に手を掛けた。



「行くのか、だが私の頼みを引き受けてくれるか返事を聞いていない」


「さてな……今宵のことは他言無用だ。あと、あのわけのわからぬ命令は下げろ。指名手配されているようで気分が悪い」


「そうか、わかった……しかし鬼の仮面、私はそなたに会ったことがあるような気がするのだが……一体そなたは何者だ」


「さて、その質問には答えかねる」



そういうと、怜青は来たときのように外壁を意図も簡単に下り闇に紛れていった。



「……鬼の仮面、感謝する」



なぜだかわからないが、皇帝は彼が引き受けてくれたと思っていた。不思議と懐かしさを覚えるあの男の背に、皇帝は最後の希望を託したのだった。

ありがとうございました!( ̄- ̄)ゞ


誤字脱字等がありましたら、ご指摘のほど宜しくお願い致しますσ( ̄∇ ̄;)

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