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石切娘奮闘記  作者: 千夜
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朝食は一日の基本!

「お父さん、おはよう。」

「おはようレミィ。」

「おはようレミィ。まあ、よく似合っているわ。髪型も、可愛らしいわ。」

「ありがとうお父さん。」

エドワフが私の椅子を引いてくれる。

そこに座るとすぐに朝食の皿が並べらる。

茹で玉子、パン、チーズとハムにジャム。

まだコーヒーが苦手な私はミルクと紅茶をお供にする。

「いただきます」

祈りを捧げて、私はお上品にまずは卵にスプーンを入れる。

本当なら塩をまぶしてまるごと口に入れて食べたいのだけど、お父さんが目の前にいるんじゃそれもできない。

まあ食べ方を変えても美味しいものは美味しいから、別段気にするほどのことでもないけど。


朝はこうして一家揃って食事をする。

お昼は、学校や仕事の関係でみんなバラバラだけど夜は比較的一緒だと思う。

ただお父さんは仕事の付き合いで遅くなることもしばしば。

そんな時はお母さんと一緒にご飯を作る。

勿論マリィも一緒。

都会のお嬢様はどうか知らないけど、ここラン・カスターでは料理できない女の子はお嫁にいけないんだとか!

まだお嫁に行くつもりはないけど、お母さんやマリィと一緒にご飯を作るのは好きだ。

おしゃべりも楽しいし、何より料理が作れるようになっていく…自分が出来ることが増えていくことが嬉しいのだ。

「そうだ、ミミィ、レミィ。実は領主様から晩餐のお誘いを受けている。」

「あら、そうですの。いつですの?」

「それが明日の夜なんだ。急で悪いが、二人とも一緒に来てくれ。ミミィは…確か明日は婦人会だったか?」

「私は全然平気よ。お母さんは?」

「大丈夫よ、あなた。婦人会の会合は、来週ですもの。ああでも領主様との晩餐なんてお久しぶりね。」

「そうだな。なにせここのところ、ずっと臥せってらしたからな。」

山間の街、ラン・カスターの領主様はお爺ちゃん貴族。

お父さんよりも二回り程上で、優しい人でよく学校にも本を寄付してくれる教育熱心な人だ。

マルチェロ・デロン男爵。

ラン・カスターに来て三十二年のお人で、街の人からは『マル爺』とも呼ばれている。

奥さんもマル爺と同じように穏やかで優しい人。自慢のバラ園で街のおば様方を呼んでお茶会をするのが月一の楽しみなのだとか。

でも、そのマル爺も歳には敵わないみたいで、昨年の晩秋あたりから体調を崩しているのだ。

お茶会もマル爺の体調か崩れてからはとんとご無沙汰なのだとか。


ラン・カスターは空気は綺麗だけど暖かだとは言いがたい土地。

冬ともなれば厳しい寒さ。

お父さんが都会から名医さんを連れてきたり、栄養の付くものを取り寄せたりしていたけど、容態は平衡状態。

でも、明日晩餐にってことは快復したんだよね。よかった。

「お呼ばれは、私達だけですの?」

「いいや、お義父さんもだ。二人へは別に遣いを出していると仰っていたよ。」

「お祖父ちゃんも来るのね。嬉しいわ。」

お祖父ちゃん。アルノフお祖父ちゃん。

お母さんのお父さんで、私が最も尊敬する人の一人だ。

気難しいって、私の友達は言うけどそんなことない。外見は確かに怖いけど、すっごく優しい。

そうだ、今日の午後会いに行ってみよう。

「レミィ、時間はいいの?学校よ。」

私は壁掛け時計の時刻をみる。

授業が始まるまで半刻。走れば間に合うが、そんなことはしない。

今日は午前中だけだし。

「エドワフ、馬を用意して頂戴な。今日は半日だけだから、馬の乗り入れが特別に許されているの。」

「かしこまりました。」

エドワフは腰を追ってお辞儀をすると食堂から出ていった。

厩舎に行って馬に鞍を着けるためだ。

「レミィ、無理に鞍に乗らなくてもいいんだぞ?二人掛けの馬車をこの前買ったんだし、そっちの方がお前も楽でいいだろ?」

「あらお父さん、朝からそんな大きなものを道に走らせたらみなさんのご迷惑になるわ。それに、今日は午後から船着き場と石切場に行くのよ。学校から直接ね。だから馬の方が良いの。」

「おい、レミィ、それは」

「ごちそうさま。じゃあねお父さん、船着き場で会いましょう。」

私は何か言いたげ(恐らく文句)なお父さんを置いて食堂を後にした。

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