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Artificial Magi  作者: 津賀
プロローグ
4/34

両親

誤字脱字の指摘がありましたらよろしくお願いします。


7/26 改稿しました

時は少し遡り、事故が起きた日の朝。

カムイが学校へ行った後、家では以下のような会話がされていた。

「準備はしっかりしておかないとね」

「大丈夫、手順はこれまで何回も確認しただろ?」

「不安なのよ。アナタ、長時間【解析】できるくらいの魔力は用意できてるんでしょうね?」

「心配ない。このために上質な魔石をたくさん手に入れておいたからね。キミこそ本当に【予知】では今日なんだろうね?」

「ええ、間違いないわ」

「・・・よしわかった。なら僕は予定通りに動く。」

「でも、やっぱりいい気分じゃないわね・・・」

「あぁ、事が起きるまで僕達はただ待ってることしかできないんだからね・・・」

「ここで暗くなっててもしょうがないわ。研究所に行って最終確認をしましょう」

「そうだね」


この会話の主はカムイの両親、上城ヤシロと上城ナギである。


カムイとその両親は特殊な魔術の使い手である。

父親であるヤシロは、触れたものの構造を調べることができる【解析】、母親であるナギは未来に起きる『事実』を知ることができる【予知】という魔術を使うことができる。

【解析】は使用する魔力により調べる粒度を変えることができ、最小では原子レベルで構造を把握することができる。

【予知】は発動のタイミングといつの未来を視るかということを自分でコントロールすることはできない。

これは彼らが時間を掛けて調べた特性であった。

特に、【予知】は発動のタイミングもランダムであったため、その特性を調べるのは非常に難しかった。


なお、ヤシロの言っていた魔石とはそれ自体が魔力を帯びている石のことで、魔石に含まれている魔力は人が使うこともできる。


ヤシロとナギはともに人工魔化細胞の研究を行なっており、iPS細胞の技術を応用することで人工魔化細胞の作成と量産に成功している。

この『人工魔化細胞』は、人の持つ少ない魔化細胞を人工的に生み出したものである。

しかし、人工魔化細胞はガン化してしまう確率が非常に高く実用はできないという問題があった。

そこでヤシロとナギは【解析】により不良部位を正確に特定し、問題の出ないように細胞を初期化する方法を考案した。

ただし、この方法もヤシロの【解析】ありきの方法で、さらに各個人にあわせたチューニングが必要となるため公表はされていない。



そしてヤシロとナギは10年ほど前、【予知】により「この日、カムイが死ぬ」という事実を知った。

そのため、【予知】があった日からカムイの魔化細胞を解析し、それに合わせた人工魔化細胞を作成し続けている。

そう、この二人は「死ぬのは避けられなくても、死んだ後の蘇生ならできるはず」と考えたのだ。

どう考えても倫理的に問題があるが、医学的意義が非常に高いことから、今のところ黙殺されている。


とはいえ、なぜiPS細胞ではなく人工魔化細胞でやろうと考えたか説明する必要があるだろう。

人工魔化細胞を幹細胞にした場合、魔力通してどのような構造をとらせるか指示するだけで任意の分化を起こすことができるという特殊な性質がある。

この性質と【解析】を組み合わせることでカムイを蘇らせることができる、とヤシロとナギは考えた。

ただ、分化した後、細胞同士の結合の仕方などを最適化しなければいけないため、人工魔化細胞任せではどれだけの年月がかかってしまうかわからないという問題もある。


研究所で準備に奔走していた二人のもとに1本の電話が入る。

「カムイが病院に運ばれたの!?」

「ああ、そうらしい。ダンプカーに撥ねられたにしては綺麗な遺体らしい」

「そう・・・、カムイ・・・」

「僕は遺体を引き取りに行くけど、キミはどうする?」

「私も行くわ。アナタだけに辛い思いはさせない」

「そうか・・・ありがとう」

そして、今計画が始まった。


--------------------------------------------


「うっ」

「カムイ・・・」

「でも、僕達はやらなきゃいけない」

「そうね・・・」

「これから僕はカムイの脳の構造を【解析】をする。すまないが機材の調整を頼む」

「わかったわ。これも覚悟していたこと、最後までやり遂げましょう」

そう言ってヤシロとナギは作業に没頭した。


しばらくし、作業の終わったナギがヤシロに声をかける。

「アナタ、こっちは終わったわよ」

「もう少し待ってくれ、後少しで【解析】も終わる・・・ よし!終わった!」

【解析】を行うためにカムイの頭に載せていた手をどけ、黙祷を捧げる。

「すまないな、安らかに眠ってくれ・・・」

そう言い、カムイの遺体を用意しておいた棺に安置する。


「後は全身像を投射するだけね。入力装置を起動するわ」

そう言うやいなや機械音声が響く。

『構造入力装置起動、魔化細胞へ投射を行います。特定の器具を装着し、構造を想起してください』

この構造入力装置はヤシロが設計し、国が作ったもので、ヤシロの【解析】で得られた構造を魔力の照射により魔化細胞に反映するものだ。

ヤシロはMRIに似た装置の中に入り、先ほど取得したカムイの脳の構造と、健康診断と言って予め取得しておいたカムイの体の構造を正確に思い浮かべる。

『構造を認識しました』

「これでいいのよね?」

ナギの問いに対し、ヤシロが答える。

「あぁ、後はこれでうまくいくかどうかだが・・・」

「きっと、うまくいくわよ」


『構造情報の投射が完了しました』

「よし。あとは魔力を与え続けれるようにこの溶液に入れて、構造の最適化を補助しつつ待つだけだな」

「そうね。何日くらいかかる・・・」

その時、研究所内に『ビー ビー ビー ビー』という警報が鳴り響く。


『火災発生、火災発生』


「どうしてこんな時に!」

-グルルルル

火災の警報だけでなく遠くから獣のうめき声のようなものも聞こえてくる。


「何!?今のうめき声!」

「とりあえずカムイを地下に!」

「今やってるわ!」

ナギが機械の操作をするとカムイを入れたカプセルが地下へと吸い込まれていった。

「これで安全なはず。さぁ、私達も逃げましょう!」

「すまない、カムイ」


--------------------------------------------


「なん、とか脱出、できた、な」

「ええ、でも、なんだっ、たのかし、ら」


そう言うと二人揃って研究所の方を向く。

研究所は煙を上げ、さらには断続的な地響きも聞こえてくる。


「なにが、起こったんだ」

「わからないわ。とりあえずここから離れてから調べましょう」

二人は呼吸を整えるとすぐさま移動を開始した。


これが世界で最初の魔獣による襲撃である。


魔獣についてはまた後ほど

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