戦いの後
誤字脱字等ありましたら連絡していただけると喜びます
「・・・・!・・・!」
まどろみの中で僕に向けて話しかけてくる声が聞こえる。
(誰だ・・・まだ眠いんだ・・・)
「・・・さ・!おに・・ま!」
(まて、なんで僕は寝ているんだ・・・?)
「・ム・・・!カ・イ・・!」
(そうだ、確かオーガが攻めてきて街を守るために戦ってたんだっけ・・・そうだ、ここで寝てる場合じゃない!)
「お兄様!」「カムイくん!」
「っ!街はどうなったんだ!?」
ユウナとイヨに呼ばれながら僕は目を開け、とっさに状況を聞く。
「よかったですわ・・・お兄様・・・」
「目が覚めたんだね・・・カムイくん。街はもう大丈夫だよ」
「魔獣の襲撃を凌ぎ切れたのか・・・」
「西の方は膠着していたのですが少しずつ魔物の数を削っていくことで徐々に冒険者優勢になっていって、最終的には殲滅できましたわ」
「こっちの方はカムイくんのお陰で被害はでてないよっ」
「そうか、それはよかった」
ユウナとイヨに結果を聞き、ほっとする。しかし、目を開けた時のユウナとイヨの反応、随分心配かけちゃったみたいだな・・・
「心配かけてすまなかった」
「無事みたいでよかったよかった。ところで、正面に光の壁みたいなのがあって通れないんだけど・・・これカムイくんが張ったの?」
「あ、解除するの忘れてた。ちょっと待ってろ・・・」
あの壁消えてなかったんだな。さっさと解除しちまおう。
「あ、壁が消えましたわ」
「これで普通に行き来できるようになったね」
「ごめんなさい」
どうやらあの防御魔術が往来の邪魔になっていたようだ。ということで素直に謝る。
「そういえば傷は無いようですが、どうして倒れていらしたんですか?」
「どうやら身体を維持するために結構魔力を使ってるみたいで・・・オーガとの戦闘で魔力が切れたんだ」
「そうだったのですか・・・」
「普通は魔力が切れても魔術が使えなくなるだけだもんねー」
「もうちょっと省エネで魔術を使えるようにならないとダメだなぁ」
「精進あるのみですわ」
とっさの時でもちゃんとイメージしながら魔術を使う訓練をしないといけないな。あとは体術もちゃんとやらないと。速く動けてもそれを生かせなかったら意味が無いしね。
「それではオーガ討伐の証を回収して冒険者ギルドに戻りましょう」
「証?」
「オーガ討伐の証拠になるのは角と牙2本だね。棍棒でもいいと思うけど大きいし・・・」
「現実的に角と牙を回収しましょう」
「了解」
手分けして近くに倒れているオーガの死体から角と牙を剥ぎ取り、回収する。
「これで全部ですわね」
といいユウナとイヨは回収したオーガの角と牙を渡してくれる。
「10匹もいたんだね。というかオーガ10匹倒しちゃうカムイくんって・・・」
「凄まじいですわね・・・」
「オーガってA級の魔獣だっけ?」
「そうそう、サトシさんたちのパーティーで1匹相手にするのが精一杯だよ!」
「あいつらそんなにすごかったのか・・・」
確かに攻撃を受けた時の衝撃は凄まじかった。【硬化】をかけていなかったら一撃で頭から潰されていただろう。
「【硬化】がなきゃ死んでたな。1撃貰った時にかなり吹き飛ばされたし」
「さすが【硬化】ですわね。今の話からしますと脳震盪も防いでくれてるようですね」
「でもすごい衝撃感じたんだけどなぁ・・・」
もしかして脳の魔素細胞が自律的に衝撃を殺してた?まさかな
「何はともあれ生きてるんだから問題ないっ」
「ま、それもそうだな」
とりあえずこのことは横においておこう。
「じゃあ冒険者ギルドに報告しに戻ろうか」
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「とうちゃーく」
「お、英雄さんが帰ってきたぞ!」
「マジか」「よく生きてたなっ!」「おかえりなさい」
冒険者ギルドについた瞬間周りにいた冒険者達に声を掛けられる。
「え?何?どういうこと?」
僕が戸惑っていると、ユウナが事情を教えてくれる。
「お兄様はA級魔獣であるオーガを単独で何匹も討伐したのですよ?そんなことができるのは今このギルドにはいませんわ」
「そうなの?」
「そうなのです。ですからオーガを倒した後、お兄様が倒れたという報告を受けてそわそわしていたんですよ」
「あの場に斥候みたいな人もいたのか?」
「ええ、戦闘は得意ではありませんが【遠視】が得意な方々ですわ」
なるほど、監視体制もなにげにしっかりしてたんだな
そしてどうやら西の魔獣襲撃に気を取られすぎてオーガの襲撃に気づくのが遅れてしまったという。まぁ、東は割とすぐに森があるから結構接近されるまで気づきにくいとのこと。
ユウナと喋っているとカレルさんが近づいてきた
「カムイ、お前すげぇな!」
「いえ、それほどでも・・・というのはこの場合には良くないですかね?」
「ハッハッハ!オーガを単独で討伐したお前が言うと嫌味にしか聞こえねぇよ!」
「ではこう言い換えましょう、ありがとうございます!」
「そうだ、素直に受け取っときゃいい」
「ではそろそろマスターに討伐報告をしてきますね」
「おう、またな!」
カレルさんと別れて受付に立っているマスターの方へ歩いて行く。
「よく戻ったな」
「えぇ、生きて戻れました。では早速報告させて頂きます」
「うむ」
「東門へ到着した際、10体のオーガが視認できましたので交戦し撃破しました。こちらが討伐の証である角10本と牙20本です」
僕は持って帰ってきたオーガの素材をマスターに渡す。一部は欠けていたりするが、まぁ大丈夫だろう。
「確かに、オーガのものだな。よろしい、それでは特別報奨金500万MとBランクへのランクアップを与える」
「報奨金500万Mにランクアップですか・・・!?」
しかも一気にBランクにまで・・・
「金はオーガの素材を売却した時の価格と討伐報酬、さらに街の防衛報酬を合わせたものだ。ランクアップについてだが、お前の実力だとAランクでも問題ないんだがまだ時間がたっておらぬだろう?」
マスターの目が光る。確かに、僕は冒険者としても日が浅いし目覚めてからの日も浅い。
知識的に不十分、ということか。
「わかりました。謹んで受け取らせて頂きます」
「金は大金であるためこちらで預かっておく。引き出したい時はあの端末にギルドカードを差し込んで魔力を流してくれ」
僕はマスターの指した機械を確認する。ATMっぽいな
「了解です」
「さぁ、これでクエスト報告は終了だ。おい!てめぇら!今日は宴だ!!」
「「うおおおおおおお!!」」
僕の報告が終わるとマスターが突然声を張り上げ、周りの冒険者達が呼応した。
「宴?」
「おうよ、街を無事守れた祝いだ。当然お前にも参加してもらうぞ」
宴か、そういうのもいいな
「えぇ、当然参加しますとも!」
と参加表明をしたところで1人の冒険者から声が上がる。
「マスター!奢りなんだろうなー!?」
「当然だ!今日は冒険者ギルドが酒も食いもんも出してやる!」
「さっすがだぜ!」
などと言うやり取りの裏で受付のお姉さんたちがせわしなく動いて準備をしている。
手伝おうと思ったがお姉さん達の鬼気迫る顔を見た瞬間萎縮してしまった。断じてヘタレではない。
宴は訓練場でやるということでテンション高めの皆と訓練場へ向かう。
全員が飲み物を持ったところでマスターが乾杯の音頭を取る。
「今日は全員ご苦労だった!てめぇらのお陰で無事街を守ることができた!てめぇらは最高だ!じゃあ乾杯ッ!」
「「乾杯!」」
近い者同士で杯を打ち鳴らす。チンッという小気味いい音があちこちから聞こえてくる。
「お兄様、本日はお疲れ様でした」
「カムイくんおつかれ~」
「2人ともお疲れ様」
僕とイヨとユウナが杯を打ち鳴らす。するとすぐにイヨが
「さぁー!一杯食べるよーー!」
どこかへ走り去っていった。
「相変わらずすごい食欲ですわね」
「まぁ、それがイヨだしな」
「私たちはのんb「おいカムイ!」」
ユウナの発言を遮ってカレルさんが来る。
「あっちでお前の話を聞きたいってやつが固まってるぜ!ちょっとへ来てくれ!」
「え、でも・・・」
僕はユウナの方を見る。
「行きましょう、お兄様。私もお兄様の話が聞きたいですわ!」
「妹さんの許可も出たんだ、とっとといくぞ!」
僕は引っ張られるような形でカレルさんについていった。
それから僕はオーガと戦った時のことを話し、腹に入らないくらい食べ物を食べ、色々な飲み物(ジュース)を飲んでいた。
何時間かたって、宴は終了となった。ちなみに宴が終了するまでイヨはずーっと何かを食べていた。
ユウナと家に帰り、ヤマトさんとアザミさんに挨拶をして部屋に戻る。
風呂はユウナに先に使ってもらっているためちょっと待機だ。
部屋にいる間、僕はオーガとの戦闘を思い返していた。
(やっぱり実際の戦闘で魔術を使わないと、試射してるとはいえ開発しただけだったら欠点がわかりにくいな)
(それに【身体強化】に【ウィンドアシスト】を使って身体能力を上げたところでそれを活かす体術も覚えないと)
(あとは戦闘中でもある程度しっかりイメージしながら魔術を使えるような訓練が必要だ)
など色々反省していたところで
「お兄様、上がりましたのでお風呂にお入りください!」
下の階からユウナの声が聞こえてきた。
「わかった!今から入る!」
(とりあえず風呂に入って寝よう)
その後風呂から上がり、ベッドに入ると何かを考える間もなく僕は眠りに落ちた。
カムイくんはBランクになりました
イヨさん完全に食いしんぼキャラ・・・