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Artificial Magi  作者: 津賀
第2章 トウキョウ
17/34

防衛

誤字脱字等ありましたら連絡していただけると喜びます

ユウナと僕は前線へ運ぶ物資を受け取りに冒険者ギルド本部へ全速力で向かう。

ユウナを離してしまわないように僕は【身体強化】を使っていない。

実はいくつかの依頼をこなすうちに気づいたのだが、僕の体力や力は以前とは比べ物にならないくらい強くなっている。人工魔素細胞の最適化のおかげかな?見た目は完全に人だけど獣人並みかそれ以上の身体能力を素で発揮することができる。便利な体だ。


しばらく走ると冒険者ギルドに到着した。すると、荷物を担いだイヨがちょうど冒険者ギルドから出てきた。

「イヨも支援か?」

「そうだよ。わたしってばDランクだからねー。これ運んだら前線の人たちを回復しに向かうよ!」

「そうか。お互いがんばろうな!」

そうか、イヨは回復が得意だったんだったな。イヨと別れ、僕たちは冒険者ギルドの中に入る。

「じゃあ、僕達もちゃっちゃと物資を運ぶか」

「はい」

冒険者ギルドの中では受付のお姉さんやマスターなどが声を張り上げて指示を飛ばしている。

「マスター、物資の搬出終了しました!」

「よし、Dランク以下の者はそこに積まれている物資を自分の持てる分だけ持って前線に届けてこい!」

「「応ッ!」」

すごい活気だな・・・っととぼーっとしてないで物資を運ばないと

「ユウナ、とりあえず持てるものを持ったらギルド入り口に集合だ!」

「承知しましたわ!」

僕はリュックにまとめられた水や食料を持てるだけ持つことにした。水は重たいけど必須だしね。と、持ち終えたところで僕はあることを思いついた。

(そうだ、【個人空間】に荷物を放り込んで一気に持って行こう!)


【個人空間】はカムイが魔力で創りだした特殊な空間で、広域殲滅用の魔術の試し撃ちにも利用している。

「すいません!ここ一帯の荷物を一気に持っていきます!」

「坊主、何いってんだ!?できるわきゃねぇだろうが!」

僕の言ったことに対し、先輩冒険者が声を荒げる。その様子を見ていたマスターは

(あいつは、確かカムイといったか。奴の魔力量ならあるいは・・・)

「よし、カムイ。いけるんだったら一気に持ってっちまえ!」

とカムイの魔力量を知っているため助け舟を出す。

「ありがとうございます!マスター!」

マスターにOKを貰った。これで大丈夫だろう。

「ではいきます・・・開け、【個人空間】!」

「なんだこの魔術は・・・」

「僕が作った別の空間と思っていただければ結構です。さぁ、物資をこの中に放り込んでください!」

最初は面食らっていた冒険者達だったが、徐々に皆で協力して荷物を【個人空間】に放り込んでいく。

「お兄様、これで最後ですわ!」

「ありがとうユウナ」

「いえ、この様子ではギルド前に集合というのは無しということでいいですわね」

「そうだね、すぐに前線に向かおうか」

ユウナと話しているとマスターが近づいてくる。

「ありがとう。これで物資輸送の手間が大幅に省けた」

「いえ、僕のできることをしてるだけです」

「それでもこれだけの働きができるものはほとんどいない。重ねてありがとうと言わせてくれ」

年長者に感謝されると妙に照れくさくなってしまう・・・

僕が照れているとマスターが早速次の指示を出す。

「さぁ、てめぇら!とっとと前線に行って他の奴らを助けてこい!」

「「応ッ!」」

相変わらず皆さんすごい迫力だ・・・


僕とユウナが前線に向かおうとしていると、先程声を荒げた先輩冒険者の方が来た

「さっきは済まなかった。できないなんて言っちまってよ」

「いえ、僕も突拍子もないこと言ってましたから」

「そう言ってくれるとありがてぇ、俺の名前はカレル・クラリークってんだ。カレルと呼んでくれ」

「わかりました、カレルさん。僕はカムイ=カミシロといいます。カムイと呼んでください」

「おう。よろしくな、カムイ」

そういい、カレルさんが出した手を取り握手をする。握手し終わったところでカレルさんは「じゃあまた後でな」といい冒険者ギルドを出て前線に向かっていった。


「良い人だったな」

「冒険者は基本的に皆良い人ですわよ、お兄様」

「そうか・・・」

もっと乱暴な人が多いのかなってイメージだったけど、これは改める必要がありそうだ。

「じゃあ僕達ももたもたしてないで前線に向かおう」

「そうですわね」


----------------------------------------------------


前線に到着すると【個人空間】から指示されたところに荷物を取り出す。どさどさと荷物が中空から落ちてくるのを見て、案内してくれた冒険者の方が口をあんぐりと開けて固まってしまっていた。

「こ、これは一体・・・」

「僕の魔力で作った空間です」

「んなアホな」

といったやり取りはあったが、まぁ問題はないだろう。


前線に荷物を届け終わった後、まだ魔獣は到着していないということで少しのあいだ待機となった。待機中にユウナとイヨの姿を見かけたので話しかける。

「よう」

「あ、お兄様」

「やー、カムイくん」

「お前たちは休憩中か?」

「そうだよー。これから街を防衛しなきゃだし」

「お兄様は物資の受け渡しは終わったのですか?」

「あぁ、終わったよ。とりあえず待機っぽい」

「狼型なのに襲撃が遅めな気がするよー」

などと暫くの間のんびりと喋っていたが、再びピーピーというアラーム音が鳴り響き冒険者達への指示が伝えられる。

『只今1km先まで魔獣が来ているのが確認されました!遊撃に出ているCランクの方々はそのまま少し下がって遊撃を続けてください。Bランク以上の方は正面から魔獣を駆逐して頂きます。Dランク以下の方で回復が得意な方はBランク以上の方々の補助に回ってください。それ以外の方は撃ち漏らしの処理をお願いします』

「イヨは前線の補助か?」

「そうだよー。いつも通りサトシさんのパーティーの補助に行ってくるよ」

「おう、行ってこい!」

イヨは前線へと向かっていった。

「お兄様、私も前線の補助に行ってきますわ」

「あれ、ユウナも回復得意だったのか?」

「得意とまでは行きませんが、一応上級回復魔術を使えるので」

そうだったのか、僕はまだ上級回復魔術だけは使えないんだよな・・・

「そうか、そういうことだったら頑張れ!」

「お兄様も頑張ってくださいね」

ユウナも前線へと向かっていった。いつもはイヨかユウナが一緒にいてくれたからなんだか寂しく感じるな・・・っといかんいかん、今は緊急事態なんだ。僕も自分のできることを全うしよう。実戦経験の浅い僕は前線で戦うと他の人も巻き込んでしまうかもしれないから地道に討ち漏らしの魔獣を狩ろう。

と気合を入れなおしたところで


-オォォォン


狼の遠吠えがどこからか聞こえてきた。

(来たか!)


-----------------------------------------------


すでにその頃、前線ではサトシ達を含む高ランクの冒険者達が魔獣との戦闘を始めていた。

「アニータ!右の敵を頼む!」

「任せときなッ。イヨ、こいつ仕留めたら魔術の準備を始めてくれ!最初に数を減らすよ!」

「わかりました」

「ここは通さないよー」

サトシがシールドで魔獣を弾き、アニータが少々離れた魔獣を銃で仕留め、カイルが突っ込んできた魔獣を切り伏せる。

「アニータさん、準備できました!いつでも発動できます!」

「じゃあ合わせるよ!・・・3,2,1、今だ!」

アニータが【フレイムレイン】を、イヨが【トルネード】を同時に発動する。イヨとアニータの放った魔術が炎の暴風となり敵に襲いかかる。

イヨはこれ以上魔力を使ってしまうと回復魔術を使う魔力がなくなってしまうため、後方へと下がる。

「これで相手の攻めも弱くなるはずだ!遊撃隊と協力して一気に数を減らすぞ!」

サトシの声に周囲の冒険者達が同調する。

「「応!」」


一方、ユウナが補助で入るはずだったPTは熊の大型魔獣と交戦したため負傷者が多く出ていた。

「今回復します!・・・【ハイ・ヒール】!治癒の済んだ人から後方へと下がってください!」

周囲に魔獣の姿が確認できないからといって油断はできない。戦える冒険者が少なくなったここでは一瞬の隙を突かれて瓦解する可能性がある。

「これは・・・毒も受けていますね。それでは・・・【キュア・ポイズン】」

熊型魔獣以外にも毒を持った小型の魔獣もいたようだ。


その時、ユウナは強化した視界の端に熊の中型魔獣を捉えた。

(まずいですわ、このままではこの場が落とされてしまいます・・・回復に回せる魔力は残らないかもしれませんが、あの魔獣を倒すしかありませんわね)

ユウナは即座に攻撃に意識を切り替える。

「いきますわ!・・・幾重の炎の槍よ、【フレイムランス・かさね】!」

ユウナの周囲に何本もの炎の槍が出現し、魔獣に向かって飛んでいく。

炎の槍は正確に魔獣の頭を捉え、爆散する。

「グオォォォォアアア!!!」

魔獣が断末魔を上げ、その場に倒れ伏した。

ユウナはA級冒険者の実力を有しているが、予言の巫女という立場からあまり高いランクになることはためらわれていた。そのため、魔力の消費を無視すれば大型の魔獣でもなんとか戦えるくらいの戦闘力がある。

なお、【フレイムランス・重】は最大で400の魔術を消費する大魔術であり、その魔力消費量は出す槍の数によって変わる。

なお、ここで戦っていたのはB級パーティーだが、個人としてはC級の冒険者達だ。決して弱くはないが、かなり強いというわけでもない非常に微妙な戦闘力である。


「お、お前、回復魔術だけじゃなくて上級攻撃魔術が使えるのか」

「えぇ、それよりももう回復に回せるだけの魔力が殆どありませんわ、ここは他の方に来ていただいて一時撤退しましょう」

「わかった」

そうしてユウナと負傷した冒険者達は医療班の待機する本陣へと退却した。


---------------------------------------------


戦闘が始まってしばらく経つと、状況は膠着状態となっていた。冒険者達は魔獣を討ち滅ぼすことはできておらず、魔獣は冒険者達の守りを突破できていない。

カムイも前線が討ち漏らした数匹の狼型魔獣を狩っている。前線で物資が不足しないよう運んでいたりしていた。

すると突然


-オオオオオォォォォォォオオオ!


という雄叫びのような声が遠方から聞こえてきた。

(なんだ、今の声は!?)

カムイの疑問はすぐに解消された。

『先程、街の東にある森の中からA級魔獣のオーガが群れで街に向かっているという情報が入りました!このままでは守りの薄い東から侵入され街が落とされてしまいます!どうか前線で戦闘していますB級以上のパーティーの方で東に向かえる方はいないでしょうか!?通信端末からギルド直通で連絡をください!』

(これは、まずいな・・・)

主戦場である西は現在膠着状態となっており、要となっているA・B級のパーティーが抜けるだけで魔獣優勢に傾くだろう。するとオーガは食い止めれてもこちらが食い止めれなくなる。

(どこまで戦えるかわからないけど、行こう!)

カムイは決意し、ギルドに連絡を入れる。

『こちらマスターだ』

「E級冒険者のカムイです。オーガの討伐に向かいます」

『お主の魔力は知っておるが、戦えるか?』

「戦って見せます。僕が食い止めている間にこちらのカタがついたら応援を寄越してくれるんでしょう?」

『もちろんだ。そこまで言い切るのならオーガ討伐を頼む』

「わかりました!それではすぐに東へ向かいます!」

言うやいなやカムイは全力で【身体強化】にあわせて【ウィンドアシスト】を掛けて駆け出す。

(間に合えよ・・・!)

カムイは祈りながら走った。


カムイが東門へ到着するが、周囲はまだ静かだった。

(間に合ったか・・・)

カムイがほっとしていると。


-オオオオオォォォォォオオオオオ!


先ほどは遠くに聞こえた雄叫びが今度は迫力を持って聞こえてきた。

カムイは正面を見ると10体ほどのオーガが確認できた。オーガは体長5mほどの巨人だった。

(結構近くまで来てるな・・・)

そう思いつつ、カムイはさらに【硬化】を自分にかける。

(先手必勝だ!)

「魔力の閃光よ、敵を貫け【グングニル】!」

カムイが日頃から開発していた広域殲滅魔術の1つを発動する。

すると、空中から魔力のレーザーが地上に降り注ぐ。

「オオオオオォォォオオオ!」

5体のオーガが頭から魔力の光に貫かれ、絶命した。3体のオーガが腕など体の一部を失い、残りの2体のオーガは運良くレーザーに命中しなかった。

(ッチ!もっと高密度にしないとダメだな!)

などと反省していると腕を失い怒ったオーガが突進してくる。

(あの勢いで門に突撃されたらヤバイ!僕の後ろの一定範囲に防御魔術を掛けるか)

「頑強な守りよ【グランウォール】!」

範囲防御魔術をかけ、突っ込んできたオーガのタックルを躱す。すると、防御魔術の壁にぶつかったオーガがよろめいたため、ナイフに魔力を通してオーガに斬りかかる。

「喰らえッ!」

掛け声とともに炎を上げるナイフを振り下ろし、オーガを背から袈裟斬りにする。

【魔力付加】のかかったナイフの切れ味は素晴らしく、ほとんど抵抗を感じることなくオーガの肉を断った。

オーガの絶命を確認すると、突進しようとしていた残りのオーガに向かって魔術を放つ。

「幾重もの爆発よ敵を吹きとばせ、【エクスプロージョン・重】!」

炎の上級魔術である【エクスプロージョン】を15個ほど同時に展開し、同時に爆発させる。

とてつもない轟音が周囲を襲う。爆発の瞬間の閃光を避けるためにカムイは目を瞑る。


が、それがいけなかった


爆発を他のオーガの肉体で防ぎ、かろうじて生き残ったオーガが突進してきたのだ。

オーガの突進をモロに受け、背後の防御魔術に叩きつけられる。

「ぐ、う・・・」

ダメージはないものの凄まじい衝撃を受けてよろめいてしまった。その隙を突いてオーガが持っていた棍棒をカムイに向かって振り下ろす。

するとガキィィィンという金属質な音が辺りに鳴り響き、カムイはさらにフラついてしまった。さらにオーガからの追撃が加えられるが、

「舐めるなぁぁぁぁ!」

カムイは持っていたナイフにとっさに魔力を通し、オーガの足を切り飛ばす。

「グオオオオオオォォォオ」

体制を崩したオーガに対し、胴を横薙ぎに斬って上半身と下半身を分離させる。

オーガの死を確認し、周囲を見渡す。

もう周囲にオーガの姿はなかった。

「これで、終わりか・・・」

そうつぶやくとカムイは最後の気力を振り絞って背後にあった防御魔術を解き、自分の前に張り直した。

魔術を張り直したところで、カムイは意識を手放した。


まだ戦闘に慣れていないカムイはイメージが足りない状態で魔術を発動しようとするため、魔力の消費量が数倍に跳ね上がる。また、カムイは持っている最大10万の魔力のうち、約5000を体を維持するために使っている。今回は残り魔力が5000近くなったため身体が一時眠りにつくという選択肢をとった。

そのためカムイは眠りにつく際

『魔力不足を検出しました。

身体を維持する魔力を保持するため一時眠りにつきます。

周囲のマナを吸収し、魔力を補充します・・・・・・・・残り約2時間』

という声を自分の中から聞いた。


まだカムイ君は魔術の使い方がなっちゃいません。

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