家族
誤字脱字等ありましたら指摘していただけると喜びます。
そういえば, ユウナは冒険者なのだろうか?
「なぁ、ユウナは冒険者として登録しているのか?」
「はい、登録していますわ」
これは意外、巫女だからてっきりこういうのはやってないのかと思った
「意外だな」
「そうですか?まぁ、確かに巫女ということを考えたらあまり褒められることではありませんわね。とはいえ、これもカモフラージュの一貫だったりするのですわ」
「どういうこと?」
「私、自慢ではありませんがヒトの中でも魔力が高い方なのです。さらに、これはカミシロ一族の特徴でもあるのですが全属性を均等に扱うこともできます。闘いの役に立ちそうな条件がそろっているのにギルドに属さずにいるのは少々不自然でしょう?それに今の時代では実戦経験を積んでいたほうが有利というのもありますわ」
確かに、冒険者ギルドに登録しておいたほうが隠れ蓑になるの、かな?
「んー?でも全属性使えるとか特殊な能力があったらいろんなところから目をつけられそうだけど?」
「ある程度目は付けられますが、冒険者はある意味人類が生き残るために必要な方々ですので変なアプローチがされることはほとんどありませんわ。まぁ、お兄様ほどの魔力があったら別ですけれど・・・」
「え?マジで?」
「マジですわ。先程サトシさんにお聞きしたのですが、お兄様ほどの魔力があれば人類が太刀打ち出来ないと言われている幻獣とも戦えてしまいます」
「Oh…」
「(本当はそのような事態になった時に、お兄様を助けるために冒険者になったのですよ)」
「え?何か言った?」
「いえ、なんでもありませんわ」
なんて言ったんだろう?声が小さくて聞き取れなかった・・・
そうして喋りながら歩いていると
「さぁ、お兄様。到着しましたわ」
どうやらカミシロ家に着いたようだ。
「ここがカミシロ家かぁ」
外観は他の家よりちょっと大きいくらいの普通の家だな。
「では、どうぞお入りください。お父様!お母様!カムイ様を連れてきました!」
ユウナに促され、僕は家に足を踏み入れた。
玄関へ上がるとパタパタパタと足音が奥から聞こえ、ユウナの両親が。
「ようこそいらっしゃいました。私はユウナの母でアザミと言います」
「いらっしゃい。僕はユウナの父のヤマトだ」
「初めまして、もうご存知かもしれませんが、僕はカムイと言います」
「ええ、存じています。長い時を経て、本当によく帰ってきてくれました」
「僕は婿入りしたんだけど、君のことは知っているよ。ユウナがいろいろ教えてくれたからね」
「お父様っ!」
「え?どういうことなの?ユウナ」
「もうっ!いいじゃないですか!」
ユウナが顔を赤くしてそっぽを向いてしまった・・・なんなんだ一体?
ユウナは【予知】によって数カ月前に近々カムイが帰ってくることを知った。そこでナギが書いた資料を読み漁ったり、どんな人か想像していたのだ。そんなことは本人には言えず思わず照れて声を荒げてしまった、というわけだがそんなことカムイにはわかるわけもない。ちなみに、この両親はそんな娘を生暖かい目で見守っていた。
「玄関ではなんだし、奥で話そうか」
ヤマトさんが提案する。
「はい、是非。父さんや母さん、それに僕の知らない弟がどうなったのかも知りたいですし」
僕たちは奥の居間に移動した。
「どうぞ、そこの椅子に座ってください」
とユウナに言われ、僕はテーブルの横にある椅子に座った。するとユウナがすぐさま隣に座る。ヤマトさんが正面に座り、その隣にアザミさんが座りという形になった。
「早速で申し訳ないですが、僕の両親と弟の足跡を教えてもらってもいいですか?」
「えぇ、いいわよ」
そう言うとアザミさんが説明を始めてくれた。
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「伝わっているのはここまでよ」
アザミさんが長い説明を終えた。
話の内容を要約すると
僕が事故にあった後、僕達が住んでいた街は魔獣に襲われてしまったため父さんと母さんは引っ越さざるを得なかった。その時には既に母さんは妊娠していて、半年以上後に弟であるタケルが生まれた。別の町に移り住んでからも研究所から僕を救出しようと計画していたけれど、研究所周辺からなぜか魔獣が発生していることがわかり近づくことさえ出来なかった。後にそれが研究所付近のマナが異常に濃いためだとわかり、僕の救出を断念した。そこで僕が目覚める前に起こる現象について、研究所から持ってきた人工魔化細胞を使って調べた。タケルが15になった頃に魔獣の大規模討伐作戦が行われた。タケルはその作戦には参加していなかったが、【予知】で視れなかった数百匹規模の魔獣の襲撃に遭った。タケルはその時、街と両親を守るために自身に人工魔化細胞を投与し|(副作用もわからないから父さんと母さんは反対したそうだ)、街に大きな結界を張って魔獣の攻撃をしのいだ。その後、父さん・母さん・タケルはこの街に定住した。タケルは英雄として名を馳せた一方で、母さん以降の【予知】の能力者に関しては口外が禁じられた。たぶんなにか厄介事があったんだろう。そしてカミシロ一族は以降途絶えること無く今まで続いてきた。
というのが父さんと母さん、そしてタケルのおおまかな足跡ということらしい
「ヤシロ様とナギ様は魔石と刻印魔術を使った動力機関の生みの親でもあるのよ」
「え!?あの車とかに使われいるやつですか!?」
「そうよ。基礎となる技術を生み出しただけではあるけれど、ヤシロ様とナギ様がいなければ今のような生活はなかったと思うわ」
「そんなことまでやってたんですか・・・」
すごいな、父さん母さん・・・
「それにしても、良く記録が失われずに残っていましたね」
「今までは散り散りになっていたんだけどね、ユウナがかき集めてまとめてくれたのよ」
「そうだったんですか。ありがとうな、ユウナ」
「い、いえっ!とんでもありませんわ!」
ユウナがまた顔を赤くしている。なぜだ
「あらあら。じゃあちょっとお茶を淹れるわね」
「すいません」
アザミさんがふふふと笑いながら台所へと向かった。そこで、今まで聞きに徹していたヤマトさんが口を開いた
「それで、これからどうするのかっていうのはなにか考えているのかい?」
そうか、これから生きていくには色々と必要な物もあるんだ・・・お金とか住む場所とか
「いえ、まだなにも考えていませんでした・・・。とりあえず冒険者をやって今がどういう状態なのか把握しつつコツコツお金を稼ごうかなと」
「泊まる場所のアテはあるのかい?」
「いえ、ありません。稼いだお金で宿を借りようかと」
「それだったら、家にいてくれたらいい」
「え!?そんなの悪いですよ」
とヤマトさんに返答したところでアザミさんが戻ってお茶を配ってくれる。
「そんな事言わないで、私たちは貴方と家族になりたいと思っているわ」
「いや、でも・・・」
そこまで甘えてしまうのは悪い気がする。
「私もお兄様ともっとお話をしたいですわ」
「ほら、ユウナもこう言っている。なにもすぐに家族のように接してくれというわけではない。カムイ君のペースで徐々に慣れていってくれればいい。まだ街にも慣れていないだろうしね」
「そこまで言っていただけるのでしたら・・・僕からも、ぜひよろしくお願いします!」
知り合いも殆どいない今、こういった好意は素直に嬉しい。
さらにユウナがびっくりの発言をする
「そうだ!ねぇ、お兄様。新年度から学園に通ってみてはいかがでしょう?」
「それはいい考えだわ」
「え?学園?」
イヨとかも通っているあの学園かな?
「イヨとかも通っているっていう?」
「その通りですわ。授業についても、お兄様の時代から科学の進歩は停滞しています。そのかわり魔法学が発達はしましたけれど、今から少し勉強すれば高等部3年生から通えるはずですわ」
「そうなのか?」
「ええ、戦闘の実技試験もありますが、お兄様でしたら大丈夫でしょう」
「でも、お金が・・・」
「お金なら任せなさい。カミシロ一族はこれでもお金はある方なのよ?学園に1回通うくらいどうってことないわ。それよりもカムイ君が今の時代について知って、友達を作ってくれる方が重要よ!」
最後のほうのすごい剣幕に押されて僕はつい頷いてしまった。
「僕も学園に通うのはいいことだと思う。友と冒険することほど心強いこともないしな」
「そこまで言ってくれるのでしたら、是非学園に行きたいです」
そういえば街に帰ってきたらイヨに教科書を見せてくれるよう頼んでたな。
「イヨに教科書借りて見ておこうかなぁ」
「イヨさんの連絡先は冒険者ギルドで登録しておきましたので、連絡しておきますね」
「ありがとう」
言うやいなやユウナはすぐにイヨと連絡をとっている。
「明日朝10時に冒険者ギルドで教科書を貸していただけるそうですわ」
「おお!」
「ただし交換条件を出されてしまいましたわ」
「どんな条件?」
「お兄様の初クエストには連れて行くように、だそうです。もちろん私もついていきますよ?」
「いや、まぁそれは構わないけど」
これは格好悪いところを見せれなくなったな
「じゃあ色々決まったところで夕ご飯にしましょう」
「これからよろしくお願いします!」
その夜はアザミさんの手作りシチュー(かぼちゃ入りシチューで非常に濃厚な味わいだった)を食べ、ラッキースケベなんてなかった風呂に入り、用意された部屋に備え付けられていたベッドにダイブした。
ふかふかのベッドから反力を感じつつ僕の意識は落ちた。
次話にて初クエスト?