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陽の当たる道

「お兄ちゃん! 学校遅れないようにちゃんと行くんだよ!」

 玄関先で犬神の妹が元気よく声をかけ、犬神がしぶしぶうなずきながら見送る。

 犬神自身制服にすでに着替えており、いつでも学校へは行ける状態ではある。

 だが、なんとなく気が進まなかった。

 体中が痛いのもある。疲れ果ているのもある。学校がぼろぼろになっているのもある。だが、それ以上にレイルを失ったことは犬神の中に大きな穴を作っていた。

「ご主人様が望んでいないのはわかっているけど、いきなり日常を再開しろっていわれても、なんだかな……」

 気が向かないまま、玄関のドアを開ける。

 まぶしい太陽が目に入り、思わず目を細める。

「やっとお出ましかよ。こっちにはそんなに時間ないってのにさ」

 外に踏み出した途端いきなり声をかけられる。

 目が声の方向を追いかけるとここ数日で自身の記憶に強烈に焼きついたバイクに跨った、これまた忘れたくても忘れられそうもない顔をした男とシスターがいた。

「八神!」

 昨日共闘した相手を見て思わず身構える犬神。

 そうである。昨日は共闘したが相手は教団のハンター。自分たちを付け狙う存在である。

「決着をつけに来たのかよ」

 突然の来訪者にもう力も残っていないのに、虚勢を張りながら声を出す。

 もうこうなれば犬神には、抵抗する方法は無い。人狼の力は昨日全て失い、ただの人間へと戻ってしまったのだから。

「おいおい、そんなに身構えないでくれよ。昨日は一緒に世界の危機を救った仲間だろ。それに、今の君はただの人間なんだろ?」

「だったら、なんの用だよ! あいにくお前を家に招くほど仲良くなったつもりはないぜ」

 八神はやんわりと微笑みながら、バイクから降りる。

 そして、こちらへと近づき俺の目の前までやってくると……勢い良く頭を下げた。

「昨日はどうもありがとう。君がいなくちゃ多分最悪の結末を迎えてたよ」

 突然の相手の行動に犬神は面食らいながら、ワタワタする。

「ちょっ! なんだよ。別段俺は」

「いいよ。ただ僕がお礼を言いたかっただけさ。じゃあ、早く学校に行きなよ。あそこにいる女の子が待ってるみたいだよ」

 見ると電信柱に隠れながら綾芽がこちらをチラチラと覗いていた。

「ああ、俺も最後にあんたに言っとくよ。サンキューな」

「じゃね、ワンちゃん。願わくば神の御加護があらんことを」

「バイクに乗ってる男には似合わないセリフだな」

 犬神はそうやって皮肉を投げながら綾芽の所までかけて行った。

「ねえ、あの人だれ?」

「さあ? 俺もよく知らねえ。ただ悪いやつじゃなかったよ」

「ふーん? それより大ニュースだよ。昨日学校でガス大爆発が起こってさ、勉強会とか全部なくなっちゃてさ。ただ不思議なことに、あんまりその時の記憶が残ってないんだよ。みんなすごく恐ろしかったってのは覚えているのに」

「そいつは大変だったね」

「更に不思議なことに、救助してくれた人もわからないんだよ。近くの救急隊員が来たときには私達校庭にいたらしいんだけどね。そこまで逃げた記憶とか全くないんだよ」

「へぇー、そうだな、きっとお人好しのヴァンパイアと狼少年がなんとかしたんじゃないかな」

 そういうと、綾芽は怪訝そうな顔でこちらを覗きこむ。

「大丈夫? 白夜くんがそんなつまらないギャグ言うなんて」

「ほっておいてくれ!」

 楽しく笑いながら喋り犬神は後ろを見る。

 すでにそこに八神はいなかった。



 聞こえてる? ご主人様、俺なんとかやっていけそうだよ。












 犬神と別れた八神はバイクを順調に飛ばしながら慣れ親しんだ街を離れていく。

「追われてるのにわざわざ会いに行きたいっていうのがあの子とは」

 いささか呆れながらテレサが言う。

「まあ学校が分かればあとは簡単に住所ぐらい絞れますしね。シスターがパソコンに明るいのも助かりましたし」

 八神は教団から出る間際にテレサの手を借りて犬神の住所を調べていた。

「そして、何を言うのかと思えばただのお礼とはね」

「お礼は大事なんですってば。ごめんなさいとありがとうが言える奴は基本的にいいやつですからね」

 テレサはふと目を細め八神の腰に回した手に力を入れながら聞いた。

「あの子が羨ましいの? あなたが大事な人を殺して、この真っ暗な世界から引き返せなくなったのに、あの子は陽のあたる世界に戻った。それが羨ましくて憎いんじゃない」

 静かな声はバイクで高速移動しているというのに一言一句正確に耳に届いた。

「別段後悔はしてないですよ、僕は。それに真っ暗な世界の先に朝があるんじゃないですか。僕の歩む道は決して昨日に向かってるわけじゃないですよ。そう思えば、そんなに悪くもないでしょ」

 そう言って八神は微笑み、バイクのアクセルをひねる。

「そうかもね」

 テレサは苦笑しながら振り落とされないようにしっかりと八神にしがみついた。


 

いろいろと忙しかったり事件があったりで遅れました。


まあこれで完結です。


なんか色々と難しさを知りました。

次の作品はどうなるやら


というより私の就活どうなるやら・・・・

まあ明日からがんばろう

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