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決戦

 レイスは街を歩いていた。

 もう既に夜も深く、人は出歩いていなかった。

 連日連夜不審な事件が続いたからだろうか? 街はあまりにも静かだった。

「静かな夜だ。私の心はこうも高ぶっているというのに。世界はあまりに落ち着いている。多少遊んで派手に神の誕生を祝おうか!」

 両手を広げ空に向かって叫ぶ。

「この私が命じる『世界を明るく照らし出せ』」

 叫んだ瞬間、街灯、ひと気のないビルの電気、明かりの消えた住居の電灯が一斉についた。

「うーん、理想は太陽がいきなり登って欲しかったのだが流石に無理か。いやいや、満足せねば罰が当たるかな。しかし、あのレイル=カーミラは時すら止めようとした私も慣れれば出来るはずだ」

 そう言いながら、多少明るくなった道を歩いて行く。

「何から始めようか、ここ最近、力を得ることのみにお熱になりすぎた。ああ、そうだとも。大事なのは力を得て何をするかだ。力を得ることそれ自体が目的になんかなってしまうと如何にも下策だ」

 芝居かかった口調で空を眺める。

「なぁ、そうだと思わないか。犬神くん」

 目線はそのまま空を見上げて呟く。

 その時、疾風と共に一匹の白狼がやって来る。

 グルルル、と唸り声を上げながらレイスの目の前に立ちはだかる。

「まだ満月でもないのに狼へと変化するとは、執念かな。いやはや、忠義深いのは犬の特権だと思っていたが、狼も適用されるようだな」

 笑いながら、レイスは髪をかきあげる。

「とはいえ、何故きた? 君では私に勝てないだろうし、ただの犬死だぞ。それを望むというのならそれもいいが、君には私の創る世界で生きる権利があるのに何故それを捨ててでも私と敵対しようとする? とんと、理解しがたい」

 両手を天に向け、頭を横にふる。

「まぁそれでも向かってくるのなら、相手をせねばなるまい。さあ来い犬神君、しつけの時間だ」

 レイスはペットを呼ぶように手招きする。

 その動作を見た瞬間、犬神が咆哮を上げながら飛び込んだ。

「それ、『お座り』」

 先程と同じように言葉を紡ぐ。

 けれど、その言葉はレイスの望む結果を生まなかった。

 先程は地面に叩きつけられた犬神が、今回はそのまま止まらず疾風のように突撃する。

「何!」

 驚きながらレイスはすぐさまその場から離れようとするが、犬神の右前足の爪が僅かに引っかかりレイスの胴体に傷がつく。

 地面に赤い血が飛び散る。

 すぐさまレイスの超回復が働き傷は消えていくがレイス自身は驚きを隠せなかった。

「何が起こった? 先程までは確かに絶対命令が効いたはずだ」

 慌てふためくレイスを尻目に犬神は狼の姿から人の姿へと戻る。

「何の策も無く、お前を追いかけたりしねーよ。テメエの力は結局の所まがいもんだ。優先順位はどうやら、俺の御主人様の方が上らしい」

 人型へと戻り、レイスに向かって語りかける。

「なるほどな。つまり、レイル=カーミラが生きていてお前に私の力が効かないように能力を行使したのか。コイツは誤算だった。やはり彼女の存在は強大だった。そう簡単には奪えはしないか」

「そういう事だ。その上テメエの金縛りの能力はお前自身が手放している。勝負ありだな」

 犬神の返答を聞きレイスの顔が歪む。

「フハハハ、呆れるね。馬鹿らしい。何を勝ち誇った顔をしている。人間をやめて、たかが数週間の貴様が誰を見下している。調子に乗るのは遠慮してもらいたいものだ」

「そうだな。続きはお前に勝ってからにするとしようか!」

「その態度が気に喰わんのだよ!」

 犬神が右手に風の爪を創りだし、そのまま、一直線に突っ込む。

「前に突っ込むしか芸が無いな! 『壁よ出てこい』」

 レイスが絶対命令を発動させると、地面から土の壁がせり出す。

「その程度で!」

 だが、構わず土の壁を風の爪で切り裂く。けれど、切り裂かれた壁の向こうにレイスはいない。

「ヤバい」

 とっさに辺りを確認するが、すでに遅い。視界の端、自分の右側面にレイスを見つけた時犬神は体を硬直させることしか出来なかった。

「戦いというものはこうやってするものだ!」

 レイスは犬神の横っ腹を左足で蹴っ飛ばす。

 犬神の体がふわりと浮いてサッカーボールのように転がった。

 全身に鈍い痛みが走るがすぐさま回復していく。

「化物同士の戦いというものは、時間がかかって仕方が無いな。特に超回復を持っている者同士だと決着がつかないことも多い」

 すぐさま犬神は立ち上がって反撃に備えようとするが、レイスはそれを許さない。

 犬神の目前に立ち、容赦なく蹴り上げる。

 浮き上がった体をそのままレイスが右腕で掴む。

「基本的に超回復を持っている奴は回復しなくなるまで攻撃し続けるか、強大な力で回復が効かないレベルまで粉々にするか、ハンターが使う武器のように回復を阻害する武器を使うか弱点を突くかしかない」

「ぐぅぅッ」

 首を捕まれ苦しそうに呻く。

 力を振り絞って風の爪を作って掴まれた右腕を切り裂こうとするとあっさりとレイスは右手を離して犬神の一撃を避けた。

「そして私は能力が君に効かず、決定打が無く、銀の武器も持ってはいない。したがってキミが回復しなくなるまで攻撃し続けなければならない」

 避けたレイスはそのまま蹴りをを犬神に繰り出すが犬神はその蹴りを受け止めた。

 左手でレイスの足をしっかりと固定し風の刃でレイスを切り裂く。

 だが、血こそ舞えど涼しい顔をしてレイスは話を続ける。傷はみるみる塞がっていく。

「だがね、一つだけ試していないことがあるんだよ。超回復を持った連中は頭を吹き飛ばしても生きていられるのかってことだ。首を落としただけなら死なない奴はいたが、頭を粉々にして回復するのかどうかは試した事が無いんだ。いい機会だから是非とも試させてくれたまえ」

 レイスは体を捻りながら、立っていた軸足で犬神の頭を狙って蹴りを繰り出す。

 慌てて犬神もガードをするが、回転と体重が乗った蹴りはガードの上からでも十分なダメージを与えた。

「ゲフッ!」

 蹴りの勢いで掴んでいた足を離してしまい犬神は一旦距離を取った。

 ガードをした右腕はシビリていたがすぐさま回復していく。

「結構ケンカなれしてるじゃねーかよ」

 犬神が構えを取りながら聞く。

「私の計画のために厄介なことにかなり足を突っ込んだからな。最低限心得ているさ。だが、勘違いしてもらっては困るな。これはケンカなどではないぞ。戦いだ、戦争だ、殺し合いだ。オマエがどういう認識かは知らないが、私はオマエを殺すつもりだ。もう情けなどかけはしないからな。心しろ」

「言われなくても俺もお前を殺す気だよ!」

 犬神は風の爪では無く、空気を固め圧縮し始める。

 風が犬神に向かって吹き、彼の両手に集まっていく。そして両手に空気を固めた球体を創りだす。

「犬神くんも私を殺しきる策があるらしい。では、いくとしよう」

「さっさと逝けや!」

 左手の空気の塊を自身の後方で破裂させ衝撃波を作り出し、自分自身がその衝撃波を利用して一気に間合いを詰める。

 先程よりも断然速く、案の定レイスも絶対命令で壁を創る余裕が無かった。

「獲った!」

 レイスの顔面へ右手の空気の塊を突き出す。

「舐めるなよ。犬風情が!」

 レイスもなりふり構わず自身の左手を犬神の創りだした空気の塊へ突っ込む。

 ポフッ

 一瞬間の抜けた音がしたと同時に大きな衝撃が二人の間で爆発する。

「チッ!」

「ぐぬぬ……」

 互いに吹き飛ばされ地面を転がる。

 先に立ち上がったのは犬神だった。ブルブルと頭を振りレイスが吹っ飛んだ方向をにらみつける。

 レイスは右手で左手を押さえながらゆっくりと立ち上がる。

「やるじゃないか。おかげで重傷さ」

 そう言ってレイスは左腕を上へあげる。

 レイスの左腕は肘から先が無かった。

「綺麗に吹っ飛ばされ粉々になってしまったよ。中々に痛かったよ」

 けれどレイスは慌てない。ゆっくりとこちらを見つめている。

 すると徐々にレイスの肘から徐々に腕が再生され始めていた。

「どうやら私は非常に不利と言わざるをえないようだ。私の再生能力はキミに劣るようだし、その技で頭を吹き飛ばされたら恐らく回復は間に合わないだろう。かと言ってこちらにはキミを殺しきる技があるかと言われればノーと答えざるをえない。金縛りの能力を保持したままならば、チャンスはいくらでもあったのだがね。まさか、絶対命令が効かないという事態に立ちあってしまうとは些か軽率だったかな」

 ふーむ、とレイスは右手を額に当てて考えこむ。

「非常に情けないが逃げるか! 恐らく逃げて態勢を整えてから戦ったほうがいいだろうね。だが、せっかく神になったのに情けなく逃げるというのは格好がつかんな」

「オイオイ、逃げ切れると思ってんのかよ!」

 優性に立った思っている犬神が凄んで言う。

「では聞くが、犬神クン、キミはさっき見たいに狼になれるのかな? もしなれないならば私は逃げ切れる。私の絶対命令はキミに効かないだけであって、それ以外には通用する。さっき見たいに土の壁を作り出せたように。ありとあらゆるものをキミへの障害物にして私は確実に逃げきってみせる。元々逃げるのは得意な方なのだよ私は!」

 犬神はレイルの言葉を思い出す。彼女は今夜の内に決着をつけろと言った。

 でなければレイルが死んで誰もレイスにかなわなくなると。

 意地でもこの場で決着をつけなければならない。

「偉そうに言うことかよ。神様の名が聞いて呆れるぜ」

「そうだな。だが、ここでやられるわけにもイカンのだよ。せっかく手に入れた力だ」

 話していく内にレイスはどんどん逃げる意思を固めていくように感じる。

 逃げられる前に一気にやるしか無いと感じた犬神は再び風を両手に集め始める。

「フフフ、一気に殺しに来るつもりか。だが、甘い。『土よ、彼をつつむ牢獄となれ』」

 レイスが叫んだ瞬間、犬神の立っていた場所の地面がせり上がる。

 慌てて犬神がその場から離れようとするが、犬神を包み込むように大規模に地面が盛り上がり立方体を作り始めていく。

「安心していいさ。そのまま土に閉じ込めて殺すなんてことはしない。決着をつけるときはきちんと私の手で殺してあげよう。だから、しばしの別れだ」

「待てよ! 本気で逃げるつもりかよ!」

 土の檻に体を包み込まれながら犬神が叫ぶ。

「そうだ、残念ながらね。だが、必ずお礼参りはするさ。必ずね」

 檻に向かって犬神が風の弾をぶつけるが吹き飛んだ部分がすぐさま補修されてしまう。

「ふざけんな、逃げんなよ。ちくしょう」

 終ったと犬神は思った。

 土がドンドン厚く上塗りされていく。視界からレイスの姿が消えて行く。

「じゃあな、犬神くん」

 さっそうとその場からレイスが去ろうとした時、近所迷惑なバイクの轟音が、道路からでは無く夜空から響いた。

「どこに行こうっていうんですか?」

 レイスが空を見上げると大型バイクが自身目掛けて突っ込んでくる。

「くらいな」

 勢い十分でレイスの顔面目掛けて八神は全く躊躇うことなく突っ込んだ。

 レイスはとっさに右腕で前輪を受け止める。

「ぐううう!!」

 顔に血が上り、二三歩後ろへたじろいだがレイスはバイクの勢いを殺しきる。

 そしてバイクを端へ放り投げる。

 慌ててバイクに乗っていた八神がバイクから飛び降りる。

「突然押しかけてゴメンナサイ。だけど、動物虐待には反対なもんでね」

「全く貴様らは邪魔しかしない。吹けば消えるような命のクセにどうして私の邪魔ばかりする」

「簡単すぎるだろその答えは。アンタが人をころすからですよ。だから僕はここにいる」

「ああ、もういい。さっさと『死――

 恐らくレイスが死ねと言いかかった瞬間銃声がレイスの言葉をかき消した。

 見ると八神の手にはいつの間にか大口径のリボルバーが握られており銃身から煙が上がっていた。

「グフッ!」

 そして、レイスの口からは真っ赤な血が流れていた。

「あんまりべらべら喋らないでください。アンタの言う通り喋れば(吹けば)死ぬ(消える)命なんでね」

「ぎざ――」

 レイスが八神を睨みつけ喋ろうとすると容赦なく八神は銃弾を放った。

 銀の銃弾はレイスの口に飛び込み、舌を吹き飛ばしている。

 八神が使用している武器は教団が創りだした人外用の兵器である。レイス自身に命の別情は無くとも修復には時間がかかる。

「オイオイ、ワンちゃん、さっさとその牢屋から出てこいよ。じゃないと僕が全部終わらせるよ」

 土に覆われ箱の様になった檻に向かって八神が叫ぶが返事は帰ってこない。

 代わりに地面に向かってハンマーをたたき落としたかのような重たい音が響き、檻にヒビが入りかけるがすぐさま修復されていく。

「そうだそうだ。さっさと出てこい。それまでの相手は僕がしといてやるよ」

 口に手を押さえているレイスに向かい左手にリボルバーを握り右手で銀刀を抜いて襲いかかる。

 レイスも犬神に吹き飛ばされようやく回復した左手で交戦する。

 だが、押しているのは八神だった。

 レイスが直線的に差し出した手刀を半歩だけ体をずらし紙一重で躱すと銀刀でレイスの胴体を斬りつける。

 返り血が八神の体に振りかかる。

 レイスも自らの傷など全く考えず、蹴りを繰り出す。

 地面を這うような蹴りを八神は飛んで避ける。

 空中に飛んだままレイスの首を狙って一撃、これはレイスが後ろに飛んで逃げるが、距離を取られることを嫌った八神が着地後すぐに追いかける。

 そこへレイスがカウンターとして蹴りを繰り出すがその蹴りに八神が銀刀をあわせる。

 真っ直ぐ伸びた足に棒を突き立てるかのようにさっくりと銀刀が刺さる。

 苦痛でレイスの顔が歪みその歪んだ顔へ八神が鉄拳をぶち込んだ。

「まずは一発、神父を殺した分だ」

 殴られたレイスはそのままその場に倒れこむ。

 銀刀や銃で出来た傷と違い、殴った傷はすぐさま治っていくが八神は満足気だった。

「本当にさっさと出てこいよ化け犬。オマエが出てくるまで待つつもりはないからな」

 後ろの土の檻に声をかけ再びレイスに向きあう。

 レイスは苦しそうに顔を歪ませながら自らの足に突き刺さった剣を抜こうとする。

 それを見ながら八神は一旦リロードを済ませる。

「ゥゥゥゥゥゥウゥゥ!」

 声にならないうめき声を上げながらレイスは剣を抜くと、剣を杖にしながら起き上がる。

 力を手に入れたはずの自分が化け物である犬神どころか、ただの人間のハンターにいいようにあしらわれている。

 神である私が簡単に人間に傷を付けられる。

 耐え難い。

 ゆっくりとレイスは思考を閉じていく。

 なまじ自分に力があるからあれこれ頼ってしまう。それが隙になっている。

 ならば、殺意のみを持ったモノとなろう。

 慈悲なく、情なく、目の前にあるものを壊すモノとなろう。

 レイスはゆったりと血みどろの顔を上げ、真正面に立つ

「――ス!」

 血のしたたりおちる口から言葉が発せられる。

「―ロス!」

 言葉は上手く聞き取れないが何を言いたいかは分かった。

「ウォォォオオオ!」

 レイスは獣の様な咆哮をあげて、八神を睨みつける。

 虫に向かって人間が全力の殺意を持たない様に、今まで人間として見下していた八神に向かって明確な殺意を向ける。

 一瞬、一瞬だけその殺意を向けられた八神の動きが止まる。

 足が、手が、思考が、純粋なる殺意によって停止させられる。

 止まった時間は一瞬だが、相手は化物で八神は人間である。

 戦うためには常に刹那の判断が必要だ。

 動きが停止してしまっている八神はレイスにとって格好の的だった。

 全身の治り始めている傷から血を吹き出しながら八神に向かって飛び込み八神の使っている銀刀で八神を斬りつける。

 斬られる寸前で八神も体をひねり躱そうとしたがあまりに遅すぎた。

 研ぎ澄まされた剣は八神の体を豆腐でも斬るようにゆったりと切り裂いた。

「くっ!」

 体を走り抜けていく激痛に思わず意識を手放しそうになる八神だったがこらえる。

 幸い傷は深いが即死につながるほどでもなさそうだった。

 ただ、勝機は手放したと言っていいだろう。

 銃は相手の傷を与え、治りにくくするだけであり、銀刀はレイス自身が握っている。殺すための手段が少なすぎた。

 だが、ここで引き下がる程八神は諦めはよくなかった。

「ハハハ、負けたよ。残念無念のまた来襲ってとこだけど。ごあいにく様この傷じゃ逃げるのも厳しいらしい。だから、これは僕の最後の悪あがきだ。覚えておいたほうがいいよ。アンタは神なんかじゃない。人間にすら傷を付けられる、ただの人外だってことを」

 八神はレイスに向かって銃を向ける。

 八神の皮肉にもレイスは全く反応しなかった。

 レイスの脳内には殺意しか無かった。

「一言いい忘れてた、俺の武器に刻んである術式は『遅延』。単純に言うと治りにくくするんだ。つまり、ハンターが使っている武器だから、そして、お前たちが化け物だから治りが遅いってわけじゃないのさ。だから、この銃弾を撃ちこむ場所は!」

 八神は銃弾を犬神が囚われていた檻に向かって放つ。

 銃弾が撃ちこまれた檻に内側からの犬神の攻撃で鈍い音が響き、ヒビが入る。ただし、今回の土の檻はすぐさま修復が始まらない。

 ゆっくりと、ヒビを消そうと土が補強を始めようとしているが、虫の脱皮のように非常にゆっくりとだった。

 そこに二度目の音が重なり、土の檻が壊れる。

「こんなことなら、さっさとワンちゃんに任せるんだったなぁ。あとは任せたよ」

 飛び出してくる犬神に八神が声をかけるが、

「知るか、俺はアイツをヤルだけだ」

 冷たく犬神はあしらい両手に風の弾を作り出し、レイスに向かっていく。

 レイスは突然飛び出してきた犬神に驚きつつも手元を見てニタリと笑った。

 現在レイスの手元には人狼を殺すための銀刀があるのだ。

 これで切り裂けばあっさりとカタがつく。

 さらに犬神も捨て身で一直線に飛び込んでいる。

 向こうの攻撃は頭でも吹き飛ばされない限り大丈夫だが、こちらは犬神を一突きすればいい。

 迫り来る犬神へレイスが神経を集中させる。

 犬神が宙を駆って片手の風玉を突き出す。

 それをレイスは左手を突っ込み、自らの左手を犠牲に風玉を爆散させる。

 体が吹っ飛んでいきそうな衝撃が走るが両の足で踏ん張り、右手の銀刀で犬神の胸を貫こうと突き出す。

「勝手に僕の剣を犬の血で汚さないでくださいよ!」

 だが、そこへまたしても横槍を入れられる。

 八神は拳銃の残弾全てでレイスの右手をピンポイントで撃ちぬいた。

 犬神の胸へと向かっていく剣の軌道がそれる。

「終わりだよ。テメエの何もかもがな!」

 犬神は残っているもう片方の風玉をレイスの顔面へ殴るように叩きつける。

「ヴぞだッーーー!」

 治り切らない舌でレイスが叫ぶ。顔に驚愕と絶望を浮かべながら。

 弾ける様な音が響き、レイスの悲鳴が途切れると、辺りに静寂が戻る。

「やったのか?」

 犬神が不安げに言う。

 相手は超回復も使ってくる。顔を吹き飛ばしてもそれで決まりとは限らない。

「ワンちゃんは映画とか見ないのかよ? そういう事言う時に限って大概敵がパワーアップするからやめろよ」

 八神も全身に鈍い痛みを感じながら立ち上がる。

 そして、転がっている人影をよく見る。

 見るとレイスの体は首から上が無かった。だが、超回復が始まる気配も無かった。

「取り敢えずこれは返してもらうよ」

 そう言うと八神はレイスの手から銀刀を奪い取り、そのままレイスの背中から突き刺して地面に張り付けにした。

「さーて、ワンちゃん、これからどうしようかな。僕としてはいろいろと助けられた部分もあるから、ここでは見逃そうと思う。レイル=カーミラとも約束したしね。だからキミはレイル=カーミラの所へ行ってあげなよ。この化け物は教団が責任を持って処理するからさ」

 そう言うと八神は手に持っている拳銃を地面へ置いて両手を上に上げた。

 犬神はそんな八神の行為をロクに確認もせずに、

「ありがと」

 そう言ってあっさりと八神に背を向けて学校の方向へ駈け出して行った。

「あんなふうにあっさりとハンターに背を向けて。僕がここで拳銃を拾って背中から撃つってことを考えないのかな? まあそんなやつだから、頼っちゃったのかな? まあいいか、取り敢えず仇は獲れたよ。クソ神父さま」

 ひとりごとをつぶやきながら八神は明るくなり始めた東の空を眺めた。

 

何か色々遅くなってスイマセン。


色々ゴタゴタしまして……



(言えない、研究室で麻雀が流行って先輩達に毎日十二時ぐらいまで付き合ってる何て言えない)

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