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2、作戦開始

色ボケ役員達が生徒会室に入ったのを確認して、扉を少し開けて待機する。

しかし、役員共は目が据わってるっうか、荒んだ顔してんなー。


「いきなり呼び出してなんなんですか?」

「チヅルも俺達と遊びたくなったんだろ!?いいぞ!俺は優しいから謝ったら許してやるぞ!」

だから、なんでそうなるんだよ!

「これは、最終警告だ。今すぐ職務に戻れ」

うわ、すっげぇ、冷たい声…。

「なんだよ!まだ皆にいじわる言うのか?」

「フン、そんな事で太陽との時間を邪魔するんですか?くだらない。」

「仕事、しない、太陽と、いる」

「なりたくてなったんじゃないしー」

「他のやつに太陽とられちゃうじゃん」

ああ、バカだ。おもちゃ欲しがるガキより愚かなガキだ。

「それが、答えか。分かった。もう二度とここへ来るな。仕事の邪魔だ」

ちーちゃん。分かってても悲しいだろうな。一応仲間だったのに

「言われなくても来ませんよ。さぁ、太陽行きましょう」

「チヅル!なんでそんな事言うんだ?寂しいなら寂しいって、俺と居たいたならそう言えば、一緒に居てやるのに」

「いらん。仕事の邪魔だ。出てけ」

「なんだよ!せっかく俺が優しくしてやってんのに!仕事仕事って!こんなのがあるからいけないんだ!」


机の上が薙ぎ払われ、パソコンが床に叩きつけられ鈍い音が響く。他のパソコンや書類、あらゆる物が床に転がり落ちる。

さて、行きますかー!


「なんだ!この騒ぎは!」

「!あっ、総一郎!」

「また貴様か黄堂!」

「皆にいじわる言う、チヅルが悪いんだぞ!俺は悪くない!」

「ああ!?物を壊して悪くないわけないだろ!毎日毎日、器物破損繰り返しやがって!」

「総一郎まで、なんでそんないじわるいうんだよ!俺、俺っ!うえーん!」

「椎名!太陽を泣かせんじゃねーよ!」

「よしよし、太陽、泣かないで!」

「太陽、泣かす、許さない!」

何をどうみたらそうなるんだ!?


「うるせーよ。黄堂!貴様は寮で謹慎だ!今日、明日と寮から出るな!遠藤!お前は風紀員として明後日の登校まで黄堂に付け!…ああ、お前は風紀員を辞めると言っていたか、では別の…」

「します!明後日まで黄堂太陽に付き、定時連絡を入れます!」

「そうか、じゃあ頼むぞ。ああ、生徒会役員のお前達。部外者を生徒会室に入れ、器物破損行為を見過ごしたとして、今日一日の寮謹慎を命ずる!自室だと人手が足りんな。よし、最上階の談話室で就寝時間まで過ごしてもらう。異論はあるか」

抜け駆けを防ぎ、堂々と一緒にいれるなら文句はないだろ。

役員共は「仕方ありませんね、今回は貴方の顔をたてて差し上げます」との副会長様の発言で、ゾロゾロと寮へと移動する。

「遠藤!食事はルームサービスを頼めよ!最上階から出る事は許さんぞ!」

最上階は役員階。談話室は外から様子を伺えない、逆を言えば外界から遮断される完全孤立の部屋だ。

すでに役員達の親衛隊は本人の手により解散。

役員達に忠告してやるような優しい人間はアレによって排除されている。情報は入らないだろ。


携帯で部屋の状態を写真に撮る。

「しっかし、派手に破壊されたなぁ。」

「ああ、予想以上だ。」

「もう4階ごと封鎖しちまおう、そうすりゃ管理が楽だ。」

「そうだな。セキュリティも入れ替えなくてはならんだろう。」

「必要な物は?」

「昨日動かした分で見られて困るものはもうない。」

「じゃ、このまんま業者入っていいのな。」

「ああ。」

「なら、とりあえず風紀員室行こうぜ?」

「ああ。」

必要な物を手に、生徒会室を施錠して離れる。

役員棟は人がいないから静かだ。

二人並んで声を潜めながら話を続ける。階段のが近いから階段で下へ。

「昼休み後に全校集会を開く。」

「放送じゃダメなのか?」

「生徒会室の修繕の必要性とアレの理不尽さを全生徒に認識させなくてはいけないからな。生徒会は俺だけは機能している印象も必要だ。」

「まだまだ、忙しいな。」

まだしばらくはちーちゃんの飯食えねーのかと肩を落とせば「おにぎりくらいなら作ってやる」なんて優しいお言葉!

「ちーちゃん!マジ愛してる~!」

あまりの嬉しい発言にガバリと抱きつけば、ちーちゃんの身体がビクッ!てなった。あ、地雷踏んだか?

「っ!…い、いきなり、抱きつくな。というかお前キャラ崩れてないか?」

「あ?俺基本フランクだぜー?スキンシップやボディタッチも多いしな。ここじゃ気をつけてるけど、ごめん、ちーちゃん苦手だった?」

「この学園じゃ握手すらしないようにしてる。」

「あー、そだなぁ。そうなるよな。ごめんな。気をつけるわ。」

「いや、そーくんには、不快感はないから大丈夫だ。」

不快感はなくてもびっくりはしたんだな。すまん、ちーちゃん。

気を紛らわすようにとりとめのない話をしつつ階段を降りる。

降り切った時には、気まずさはなくなってた。

昔は生徒会と対立して4階にあったらしい風紀員室を、利便性で1階にした先先代の風紀員長グッジョブ!

「しっかり働く部下がいて羨ましい限りだ…。」

バタバタと忙しそうな気配がするドアの前で、ちーちゃんがしみじみと溜息を吐く。

「まあ、風紀は外部や一般生徒が基本だし、恩恵の意味分かってるからなぁ。戻ったぞ!」

ドアを開いて声をかければ

「委員長!おかえりなさい、って生徒会長!?」

振り向いた牧野の声に全員が手を止める。

「生徒会室がアレによって壊滅させられたんで会長様だけ救出してきた。あいつらは二日寮に謹慎処分だ。

しばらく執務室で生徒会の仕事するからよろしくな!」

その言葉に唖然、怒り、極まって黒い笑顔さまざまな反応が返る。


「生徒会室が復旧するまでの間、よろしく頼む。」

ちーちゃんが言えば、みんなびっくり顔。まあ、普段俺様だもんな。

「これから留守頼む事もあるから紹介したいとこだが、どーする?」

「風紀員の顔と名前は記憶してるから、先に工事の件を相談してきていいか?あ、集会の声かけ頼めるか?」

「あいよ、気をつけてな?」

「そちらこそ」

クスリと綺麗に微笑むと、風紀員たちの溜息が聞こえる。


「え、会長ってあんなだったか?」

「すんげーまとも!」

「っか員長って会長と仲悪くなかったんッスか?」

「あ?生徒会と風紀で権力対立はしてるが、俺らはなんもないぞ?」

「そうなんッスか!?」

「思ったより、話しやすそうな方なんですね。」

「ああ、人まとめるのに楽だからってエラソーにしてっけど。真面目だし礼儀にはうるせーぞ?」

「堕落せずに、お一人で仕事してるの見てたら納得ですよ、で?集会ってなんですか?」

「生徒会室、および役員棟4階の封鎖、生徒会の仕事は会長様だけしかしてないんで風紀員室に間借りして行う旨の連絡、及び、風紀員の人事発表を昼休み後に行う。」

「ついに遠藤クビか!」

「役員も一緒に引きずり落せないんッスか?」

「役員は手札が揃い次第だな、そっちは会長さまが動いてくれてるから、もうしばらく頑張ってくれ。」

「はい!」


***

side智弦


一体何度目だろうかと辟易しながら呼び出し音を聞き続ければ

『もしもし?』

ようやく、相手が捕まった。

「3日もあったんだ、折り返しくらい入れたらどうだ」

『ごめん、ごめん。携帯手元に無くて。ちぃから連絡なんて、一体何があったのさ?』

「…先月転入してきた、理事長の甥と自称する少年が役員達を虜にし、好き勝手暴れ、授業妨害、器物破損、暴行傷害を繰り返し、生徒の学園生活がままならない状況にあることは、ご存知で放置してるんですよねぇ?『理事長』センセ?」

「…は?え?甥ってなに?転入生なんて、あいつから何も聞かされてないぞ!?」

「あいつ?」

『え?隆史に理事長代理頼んでるよな?』

「斎藤さんは二週間前に辞表を置いて出て行ったが?」

『は?マジで?え、じゃあ今の学園って』

「俺が一人きりで必死で機能させてんだよ!父さんには連絡済みだからな!とっとと戻って始末しろ!」

『は、はいぃ!』

「…まったく」


やはり犯人は斎藤隆史。

理事長の秘書だった男か。

確かあれは理事長に好意を持ってたからなぁ。痴情のもつれとはいえ、やっていいこととだめな事があるだろ!大人のくせに!


親父には報告したから近々見つかるだろう。横領した金で校長は買収してたが、教頭はなにも知らなかった。

すげ替えるのは校長だけで済む。

いっそ大変な思いをした教頭を校長にしてはやれないのだろうか…


まずは、あのバカ役員共を引きずり落としてやろう。書類も整ったしな。

手にしたままの携帯を操作して電話をかける。

「あ。そーくん?」

『こんな時間にどした?』

ああ、そーくんの声聴くと落ち着く。

「ようやくゴミ掃除だ。詳しくは明日話す。対抗策も用意出来た。」

『マジで!?ちーちゃん優秀すぎる!』

「あ、ありがとう…じゃあ、また明日。おやすみ。」

『おう!おやすみ!』


コレが片付いたら、そーくんに何作ってやろうかな?洋食和食中華イタリアン…どれでも好きそうだったけど。




***   生徒諸君に問う!



昼休み、風紀員長様が校内放送で緊急集会を告知された。

前回は会長様以外の生徒会役員の方達から、親衛隊の放棄と解散が言い渡されて親衛隊の子達が泣き出したり、倒れたり大変だった。

今回はなんだろう。


講堂に入ったら、壇上には生徒会長様の姿もあった。

仲の悪い事で有名なお二人が並んで話をしている。

なに?あの糞マリモにはまらなかったと思ったらそこがひっついてたの?

風紀員長と生徒会長どっちが攻めですかぁ!!

思わぬ組み合わせに一部の人間は浮き足立ち、一部の人間はトップ二人の出現に何が起こるのかと身構えた。


「時間となった。いない者には近しい者が伝えてくれ」


プロジェクターでスクリーンに映し出されたのは大地震でも起きた後の様な室内の写真。あれ?これって


「本日午前。生徒会室で執務中だった生徒会長が、執務を放棄している役員に対し改善警告をした所、黄堂太陽によりパソコンを始めとする備品の破損行為を受けた。

データ等は生徒会長が保存、管理していた為問題はないが、以前よりの破損行為などもあり、修繕工事を行う事になった。この為4階は閉鎖する。また、セキュリティの問題、並びに生徒会長単独で執務を行っているため。今後は風紀員室の執務室にて生徒会の執務を執り行う事になった。告知などはしない為、生徒間で周知してくれ」


静寂が講堂を支配する。

今までも大概酷かったけど、何この惨状。そして、他の役員達は何をしてるの?こんな事するような奴を好きだなんて、恋は盲目っていうけど見えないとか言う問題じゃないよ。

あ、本棚までヒビが入ってる。

書類は破られて踏みつけられてる。


「次に、生徒会長から話しがある。」


会長様は真ん中に立つと講堂を見回した。

顔色も悪く、隈が出来、少しやつれてしまっても、存在感を失わせない王者の風格。やっぱり上に立つ人間は違うんだなぁ。なんて思ってたら


「学園に通う生徒諸君。

私の力不足で役員達を取りまとめられず、転入生の暴挙を許している事。

本当に申し訳なく思う。すまない!」


あの、会長様が頭を下げるなんて!

音の無い悲鳴が聞こえた。

しかも、その内容はあまりにも理不尽な内容なのに。

姿が涙でぼやける。

皆が押し黙る中で


「会長様は悪くないです!」


声が上がった。


「会長様も被害者だ!」


次々と会長様を擁護する声が上がる。


「…ありがとう。トップとして責任をとり、この座を下りる所存だが、学園の運営が以前のように戻るまでは生徒会、会長として務めを果たすことを許して欲しい。」

ああ、会長様は顔と家柄の良いだけの暴君だなんてとんでもない!

なんて立派な方だったんだろう。

お一人で全ての仕事をなさるなんて、想像以上に大変でお辛いだろうに

学園の為に背負って下さってたんだ。

あんな転入生にうつつを抜かして、役員の仕事を投げ出して、尽くしてくれる子達を蔑ろにしたあいつらとは全然違う。

本当に責任を持って、役員である事に誇りを持っていらっしゃるんだ!

「会長様だけが、生徒会長です!」

「これからも会長として学園をまとめて下さい!」


ああ、会長親衛隊の子達泣いてるけど嬉しそう。そうだよな。敬愛して尽くしてる相手が、こんな素敵な人なんだもん。僕も会長様のファンになっちゃったよ。

他の親衛隊の子達は悲しい、悔しい、羨ましい。かな。

「続いて、風紀から辞任報告がある。職務怠慢を理由とし、風紀委員会副委員長の遠藤直哉を解任する!」

ああ、ついにか。

役員達はいつ断頭台に立たされるのかな?


「本日の集会はここまでだ!みな、速やかに教室へ戻ってくれ。」



ゾロゾロと歩く生徒からは

「ついに副委員長切られたな。」

「会長様だけじゃ、会長様が倒れてしまわれる!」

「役員の解職要求しようぜ!」

「俺署名用紙持ってる!」

「なんであるんだよ?」

「役員ムカつくから署名運動するつもりだったんだ!」

「でも、あれ生徒会解散請求だよな?会長様はどうなるんだよ」

「役員個人名書いてりゃ会長様は除外できんじゃないか?」

「解職請求にすれば良いだよ!」

「俺、やる!会長様があんなに頑張ってくれてんのに!」

「よし!やろうぜ!俺らの学校だもんな」

「おーい!解職請求の署名するから筆記用具持ってる奴貸してくれ!」


署名の紙が必要枚数埋まるのに時間は大して要らなかった。




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