4月 皇子
僕と同じだと思った
孤独だと
エーデル帝国の14番目の王子として生まれ周囲から敬われて来たが、それは僕の皇族としての地位ヴィオレット・紫苑・エーデルシュタインの名の元だけだった。
皇位継承権も末の方なので私の扱いは兄達姉達と比べるとどこかぞんさいだった。
勉強も剣術の訓練や踊りの稽古も力をつくして来たが、周囲は誉めそやしたが他の皇族と比べるとどこか劣って居た。
そんな中、スピリトペトル王国との交流の話が出て皇族の一人を学園に留学させるという話が僕の方に回って来た。
帝国とは違い精霊信仰が強く「魔」の使い方は自然に流れに任せたものだそうだ。
・・・正直劣って居ると感じだ。
何か変わるかなと思っていたが、ここでも同じように僕の容姿と地位を褒めるだけであった。
これでは帝国と同じ
少し失望した。
しかし、気まぐれで中庭に足を運んだとき
彼に出会った
正直、初めは慈善視察で見た物乞いみたいだと思った。
彼は周囲の自然魔力を引き寄せて自由自在に使っていた。
まるで自然魔力と話して居るみたいに
帝国では見たことがない自然魔力の扱い方だった。
それからというもの彼に会うために中庭に通った。
彼の名前はノウン、侯爵家の子息として産まれたが小さな頃から無口無表情だったそうだ
なんでも彼は、教会から認められた高魔力保持者で常人の約二十倍のオド体内魔力を持っており、将来は教会の幹部と考えられて居たが、魔力が上手く扱えずに周囲に撒き散らし水浸しにしたり、ボヤを起こしたりして居る。
授業には出て居るが質問したり発言することが無いそうだ。教師が問題を解く様に言っても答えず睨みつけるだけだそうだ。
テストや論文は書いて居るが字が判別しづらくて受け付けられない。
運動は基本体を動かすのが億劫そうで鈍いが、目を離したら一瞬で移動したりして居る。
何を聞いても言っても無口無表情なので、何を考えて居るのかが分からない。
殴りかかった生徒が居たが、「何か」に弾かれたそうだ。(魔力では無いかと僕は思う。)
事あるごとに家に抗議がいく様だが、『学園で処理してくれて構いません』と無関心だそうだ。
と僕に近寄った彼の妹とその友人達とやらが全部話してくれた。
コイツらは「あの人は貴方様の側に置いて良い人では無い」「あの人は貴方様に相応しく無い!」とうるさく囀っては邪魔をして来る。
誰を側に置くか何が相応しいのかは僕が決めるというのに
彼に近づく人はおらず皆遠くから陰口を叩くばかりで彼は一人だった。
こんな自然魔力を扱える人間なのに勿体ないと、そう考え彼に付き添う事にした。
彼が無口無表情なのは周囲が虐げるからだろうと、僕が優しくすれば答えてくえるだろうと思って居た。
甘かった。
彼が登園するとき迎えに行って教室まで付き添い、昼食は一緒にてべて放課後は勉強を教えてと彼に付き添ったが、彼は黙って睨むだけだった。
それより驚いたのは、昼食を引き寄せた果物や野菜で済まそうとしたのだ。自然魔力で引き寄せたらしい。手を使わず果樹から果物をもぎ取るのは僕にも出来るが、いきなり彼の足元の地面から芋が出て来たのは驚いた。
「すごいじゃないか!」と褒めたら引き攣った顔で見つめられた。
褒められるのは初めてみたいだった。
次からは彼の分の昼食も用意させた。
放課後勉強を教えようと考え、まずノートを見せてもらったら、何やら図形やら紋様やらがグチャグチャと書かれており何が何か分からない。
書取りをさせてみたら字が汚いので僕が書いた字を手本にして字の練習をさせた。
計算は式を使わずに答えをそのまま書いて居る暗算ができるみたいだ。答えは全問正解だった。
本を与えてみたら、パラパラとめくって脇に置いた。興味は無いらしい。
彼が喋らないので筆談でのしようかと思っても彼が字の意味が分かって居るのかが分からない
それならと魔力を玉状にして彼に投げてみたら弾き返して来たので、話をしたいときは魔力を飛ばすことにした。
凡人なら体ごと弾かれてしまうが、同じ高魔力のぼくなら大丈夫だ。
この形式で交流を持ってみた。