表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

怖い話「お爺さん」

作者: 文室蓮

実話です。

数年前の夏のことです。


部活が休みだったその日は、一日中家に籠ってごろごろしていました。


ただ、夜になって母親が


「あんた、今日家から出てないでしょ。散歩でもしてきなさいよ」


と急に言ってきました。僕は、めんどくさいなぁと思いながらも渋々散歩をすることにしたんです。


夜の9時くらいだったのを覚えています。スマホと家の鍵だけ持って、大通りの方まで歩きました。


まだ深夜ではないため、ほとんどの家は灯りが点いていて、道路にはいくつかの車が僕がいつも見るより少し速度を出して走っていました。


40分ほど歩いてこんなもので終わりにしようと思い、家へ歩き始めました。


大通りから住宅街の道路に入って家を目指しました。それは車一台までならある程度は余裕を持って通れる住宅街にはよくある道路で、僕はよくその道路を使っていたんです。


使っていると言っても家から大通りに出ることでしか使っておらず、横にそれた脇道がどこに繋がっているのかは知らなくて、だから僕は少しだけ興味があったんです。


それで家に帰る前に少しだけ探険してみようと思いました。


前から気になっていた脇道に入りました。しかし、僕の期待とは裏腹にその道は行き止まりになっていたんです。その脇道は少し蛇行していて、だから奥が見えなかったんですよね。


肩透かしを食らった僕は


「なぁんだ。こんなもんか」


と呟いて、今来た道を戻ろうと振り返って歩き始めました。


しかし、その脇道から道路へと繋がる出口のところに人が立っていたんです。


多分高齢のお爺さんだったと思います。そのお爺さんは何をするでもなく、奥から出てきた僕を見ることもなく、焦点の合っていない目を何かに合わせてただ立っていました。


僕はそのお爺さんが少し怖かったんです。だって、夜中に何をしたいのかもよく分からないただ突っ立っているお爺さんですよ。


でも、そのお爺さんがいるところを通らなければならないので、出来る限り目線を下にして目を合わせないように歩きました。


一歩、また一歩とお爺さんに近づく度、僕の手には汗が滲んでいました。


下を向いている僕の視野にお爺さんの足が入ってきました。距離で言うと5mもなかったと思います。


そこで僕の中にしょうもない好奇心が生まれてしまったんです。お爺さんの方を見てやろうと。不思議ですよね。さんざんビビってたのに、僕を怖がらせる人の正体を知りたくなったんですよ。


通り過ぎる瞬間に少しだけ見てみよう。それならきっとバレないだろう。そんな甘い考えを持った僕は、横を通り過ぎるその瞬間にお爺さんの方を見ました。



僕は、そのときお爺さんがこの世のものではないんだと理解しました。



よく心霊番組でそっち系の視える人が「幽霊と人間は全く違う。形は似てるけど本能というか、直感でそれが人間でないことがわかる」何てことを言っていて(ほんとかよ?)と馬鹿にしていた僕はそのとき、その言葉の正しさを脳が発する一種の危険信号と共に明確に感じていました。


お爺さんは通り過ぎる僕を無表情で、首だけをこちらに向けて見ていたんです。


その時、僕は心臓の鼓動が早くなっていくのを感じました。


すぐに下を向いた僕は、さっきまでと同じ歩幅でお爺さんの横を通り過ぎました。そして、その脇道から道路へと出て、家の方向へと曲がろうとした時後ろで


ザッ


と何かの物音がしました。


それを聞いた僕は全力で走り出しました。一心不乱に、必死に、必死に、必死に、それで家に着いてすぐにドアに鍵を掛けました。そんな僕を見て母親が


「なに?走ってきたの?偉いじゃない」


なんて呑気なことを言っていて、強い怒りを抱いたのを覚えています。


僕はあれからあの脇道には関わらないようにしています。その前の道路も使うことを控えています。


あのお爺さんがなんだったのか、あの物音がなんだったのか、未だに僕は知りません。

みなさんも夜散歩をするときは気を付けて下さい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ