コトリバコの作り方 弐
“コトリバコ”。
ネット掲示版での書き込みが元になり広まった都市伝説。
2005年に投稿されてから、今だにネットで語り継がれている呪殺系怪談。
それが“コトリバコ”だ。
外見は寄せ木細工等の箱。
箱の中は水子の死体や呪物となる物を入れた代物。
呪詛の対象とされた人物が手に取ると、死に至ると言われる呪殺の箱。
そんな都市伝説が存在する。
この世には……。
「」
……。
「」
……。
「」
「」
……。
「」
……。
「」
うん??
「……」
空白。
意識が空白から覚醒する。
意識が。
意識が覚醒する。
人としての意識が。
「え?」
気が付くとそこにいた。
何故か。
ふと遠くを見る。
暗い。
暗い闇。
一切の光を見つけられない暗闇。
月の光はおろか星すら見えない。
黒い夜空。
なのに不思議と見える。
暗闇の中で見える。
空が。
何故か。
そんな黒い夜空を見ていた。
僕は。
慌てて周囲を見回すと古びた民家が立ち並ぶ。
トタンと漆喰に白く濁った窓が特徴の民家。
何処か昭和世代の民家を思い出させる。
だけど今時田舎でしかお目に掛かれない古臭い家だ。
割れた窓。
家の明かりはない。
人の気配が無いせいだ。
廃村。
無人集落。
そんな言葉が浮かぶ。
何故ここに?
そう疑問に思った時だ。
「見つけた」
「え?」
首を曲げられた女がいた。
首を曲げたではなく。
曲げられた。
そう曲げられた。
あり得ない角度で他人に曲げられたと思われる女。
生きてるのが不思議な首を曲げられた女が横に居た。
数メートル先に。
手に錆びついた鉈を持ち。
「美味しそうな肉」
ゾワリとした。
鉈には血が付いている。
女は。
女らしき何かは。
女らしきナニカは。
ニヤアと悍ましく嗤う。
「頂きますううううううううっ!」
気が付いたら目と鼻の先に居た。
異常な速度。
異常な足の速さ。
まぎれもない人外の速さ。
女は僕に向けて鉈を振りかざす。
それを見つめる僕。
反応出来ないのだ。
突然の出来事に。
僕の頭部に振り下ろされる鉈。
それを見た僕の感想はというと暢気なものだった。
「肉って僕の事か」
そう考えていただけだった。
そのまま僕の人生は終わった。
筈だった。
シャアアアアアアアアアアアアアッ!
「おぐっ!」
突然破壊される建築物。
破壊したのは巨大な生き物。
蛇。
それも大きな蛇。
但し其の大きさは尋常ではない。
空を覆わんばかりの巨大な大きさだ。
当然襲われた女らしき者は飲み込まれた。
あれはひとたまりもないだろう。
遅い恐怖に襲われた僕は今更ながら逃げ出した。
蛇から逃げ惑う僕は古い学校に着いた。
木製の校舎。
昭和初期。
いや明治に建築された学校にも見える。
蛇がもたらす地響きを背に此処まで来た。
「遊んでよオジサン」
「遊んで」
「御兄さん」
「あ~~」
そんな時に聞こえた子供の声。
無邪気な子供の声。
純粋無垢な。
複数の声が聞こえた。
「今忙しいから……」
背後からの声に僕は苛立ちを覚える。
こんな危険極まりない環境で遊ぶ暇なんて……。
そう思った時だ。
怖気を感じた。
背後から聞こえたのだ。
複数の子供の声が。
今来た道の方角。
誰も居なかった筈の方角。
嫌な予感がして横に逃げる。
直ぐに風を切る音がした。
元僕の頭部が有った場所を。
そのまま転がり背後を見た。
そこに居た。
複数の子供達らしき物。
沢山の子供の肉体が出鱈目に繋げられた肉の塊。
大きさの違う子供が繋げられた。
親指大の10歳前後の子供の頭部が複数くっ付いた指。
異形の子供。
異形の子供の手が僕を捕えようと手を開く。
尋常ではない速さ。
反応できない。
先程の比ではない速さ。
僕はあっさりと捕まった。
その手が僕を握りしめ大きく開けた口に運ばれる。
結果として言えば僕は喰われた。
異形の子供に。
「あああ」
「ばばっば」
「あははは」
煩い。
酷く煩い。
死んだと思った僕は生き残った。
いや正確に言えば異形の子供の一部になったと言うべきか。
人差し指の先に僕は取り込まれたらしい。
はっきり言えば笑うしかない。
意識だけある状態で何も出来ない。
その癖痛みだけは感じる。
絶望より困惑が強い。
きしゃああああああっ!
ガチガチッ!
まあ~~困惑するより現状が進行しすぎてるが。
あの後は蜘蛛や百足に遭遇。
戦闘になったが異形の子供が勝利した。
家サイズの蜘蛛を簡単につぶしてるんだが……。
それはそうと気が付いたことがる。
僕が。
いや。
異形の子供が潰してる家。
材料がおかしい。
木材は分かる。
窓が透明プラスチック板。
壁が石膏。
庭の地面がオガクズに色を付けたもの。
普通におかしい。
まるでジオラマのようだ。
そして此処はどうも閉鎖された空間みたいだ。
恐らく10キロ平方メートル程だろうか?
ある地点から進めなくなる。
閉鎖された空間とはいえ分かりやすいが同じ位置に戻るような感じでは無い。
かといって終わりのない無限ループという訳ではない。
イメージとして言えば頑丈な箱の中に閉じ込められてる感じがする。
僕が動き回る異形の子供から観察した結果を言えばだが。
移動する異形の子供。
その際に襲い掛かる化け物。
いつまで続くんだろう。
そう絶望にも似た感情が僕の心を満たし始めた時の事だ。
声が聞こえた。
声らしき物。
正確に言えば何か分からない。
「イッポウ」
「ニホウ」
「サンポウ」
「シホウ」
「ゴホウ」
「ロッポウ」
「チッポウ」
「ハッカイ」。
最後の言葉を聞いた瞬間僕は。
異形の子供は空に。
何もない空に。
飛んでいく。
空と思ったのは板だった。
寄木細工の板。
それをすり抜け異形の子供は外に解き放たれる。
呪いとして。




