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心理的所有感

作者: 白音 藍奈

心理的所有感は誰の心にも存在し、気が付くと暴走する恐ろしい物なのです。大学の講義にて。

 教育学科で心理学を学んでいる橘香織たちばなかおりはその日の午前中、大学で講義を受けていた。「このように、人間の心理とは実に複雑です」「心理的所有感」「自分の所有物とみなす事」香織の耳に断片的に聞こえてきた。先生は続けた。


 「人間には所有感という心理が存在します。それは時間やお金を使うほど、自分の物だという認識が働いていく事です。所有というのは物だけに働く物ではありません。」「所有感は人にも働きます。」「対象と結びつきが強くなるほど自分の所有物にしたい気持ちが強くなります」先生はどんどん話していく。


 「例えばアイドルとファンのトラブルで多いのはストーカーの案件ですね。このような事件は世間一般的には広く知られています。これも心理的所有感による典型的なケースです。」「対象のアイドルに時間とお金を使うほど自分の所有物にしたいという気持ちが膨らみます。」「この所有感は厄介な事に大きくなるほどなかなか自分でコントロールが難しくなるのです。」「なので心理的所有感が大きくなるほど双方で対策が必要になります。」「怠ると大きなトラブルになる危険性を孕んでいます。」先生は話を続けた。


 香織は心理的所有感が要因になってトラブルになるケースを調べてみたいと思いこっそり検索でググル。主にアイドルの件が分かりやすいのでそれにしようとした。「アイドル、ストーカー事件、トラブル」というキーワードを入れググると記事が表示された。香織が一覧を見ていると、「ん?」その中に気になるものを見つけた香織は思わずクリックした。「大学の教育学科でトラブルか?心理学を学ぶ女子大生が3日前から行方不明。教授とトラブルとの証言も?」記事の日付けはその日の午後になっていた。


 記事を見つけた香織の頭は真っ白になっていた。香織はこの記事の意味が分からなかった。それはどう見ても香織自身の事件の記事に思えた。しかも事件の日付は今日の午後だ。確かに香織は先生に午後もう少し講義の内容を尋ねてみようと思っていた。


 香織は更新ボタンを押し更新した。すると次には記事が消えていたのだ。何度チェックしてもさっき表示された記事を見つけることが出来なかった。すると「橘さん、聞いていますか?」と先生の声が飛んできた。その時、周囲に笑いが起こったのだった。


 午後、香織は先生に心理的所有感について詳しく尋ねてみた。先生は「心理的所有感は本当に気を付けないといけない。誰の心にも魔が差すことだってある。そういう時はだいたいが良くない心理が働いている時もあるからね。」と優しい口調で言った。香織は「先生にもそういうことがあったりするんですか?午前の講義でアイドルとファンのストーカー事件を例えに出されてたじゃないですか?もしかして、先生も教え子に心理的所有感を持ったりするとか・・まさか、ないですよね?」と笑う感じで口に出した。その時、身体が一瞬震え、先生の目つきが鋭くなったことを香織は見逃していた。先生は口を閉じ何も言わなかった。香織は先生と話を終え部屋を出た。


 その後、橘香織が行方不明になった。彼女が最後に目撃されたのは先生と会話をしていたという証言までだった。それから三日後、ニュースで香織の行方不明が報じられたのだった。

後日、教授が逮捕された。橘香織の遺体は××湖から発見された。逮捕された教授は橘香織に秘密を見抜かれたと思い焦りから彼女を殺害したことを供述した。

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