90 カルパスの思惑
( ドノバン )
「 ……あぁ、ご察しの通りだ。
カール様とマリナ様はもう既にその準備を進めているよ。 」
カルパスは眉を寄せ不快を一切隠さない表情を浮かべた後、指をパチンッと鳴らす。
するとカルザスの足元の影から小さなクリーム色の鳥が勢いよく飛び出してきた。
< チュール鳥 >
体長5センチほど、淡いクリーム色の羽をもった鳥型モンスター。
耳が非常に発達していて何十キロも先の音まで聞き取る事が出来る。
チュール鳥は、パタパタとカルパスの周りを飛び回り、ちょこんとその指先に留まる。
カルパスの資質は【 影従士 】
珍しい中級資質で、自身の影の中に様々な動物やモンスターを住まわす事の出来るスキルも持つ。
この資質は特に諜報に優れていると言われていて、こいつはその能力を存分に生かし、常に外界から情報を仕入れている。
「 こいつが掴んだ情報なんだが、やはり将来的にリーフ様を排除なさるおつもりらしい。
邸を中心にモンスター達に監視させてはいるが、カール様とマリナ様が本気になれば私達だけでは恐らく守りきれないだろう。
しかし戦闘資質を持つ者を雇う事は徹底的に邪魔されている。 」
「 なるほどな、その点レオンなら、まだ資質も判明してない上に呪いつき……まさに渡りに船って事か。
監視の目を逃れられる。 」
「 その通り。
リーフ様は私の息子の様なものだ。
むざむざと殺させやしない。 」
カルパスは、指に留まっていたチュール鳥を影に戻すと、また視線をやや下に伏せ浮かない顔を見せる。
そのらしくない表情に俺はため息をつきながらポリポリと頭を掻いた。
「 それだけじゃねぇよな〜。
お前レオンも助けたいから俺に二人まとめて面倒見させるつもりだろう。
リーフは一応公爵家だからな。
側に置いておけば表立って迫害する奴はいなくなるし、呪いがうつるもんじゃねぇって証明にもなるしな。
イザベルと戦わせたのも実力をただ測るためだけじゃなくて、戦闘のセンスがないなら護衛として置くのは辞めようとしたからだろ?
護衛は危険な仕事だからな。 」
「 ……買い被りすぎだ。
今回はたまたま利害が一致したに過ぎん。
私は今の今まで見て見ぬふりをしていたくせに、レオン君の強さを利用しようとしてる最低な男だよ。
……レオン君の姿を見て己の罪をまざまざと見せつけられた。
他ならぬリーフ様によってな。 」




