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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第二十二章

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(サイモン)873 可愛いって何?

(サイモン)


ジャラジャラと胸元や指、手首と全身を飾る見るからにお高そうな装飾品の数々。

服は全体的にダラシなく着崩し、無駄にヒラヒラが多いデザインの白シャツに意味なく胸元がパックリ開いているのが最高に気持ち悪い。


まさに『お金で身体を着飾る』そのものと言える壊滅的なセンスに、思わず意識が遠くなり、ストンと表情は消え失せた。

隣に立つリリアの目もとっくに死んでいて、一切の感情が抜け落ちているのが分かる。

                    

「……ホント気持ち悪い男だよねぇ〜。何か()()()を思い出すよ……キモチワル〜。」


「フフッ。私も同じ事を思ったわ。下品で気持ち悪い不快な男って何処にでもいるのね。」


心底ウンザリとした様子でそう言ったリリアを見て、ボクは昔の事を思い出す。


◇◇

ボクとリリアは双子の兄妹で、生まれた時から母親しかいない母子家庭で育った。


『母』────と言っても性別は男で、母は男の身でありながら小さな街でたった一人僕たちを生み落としたのだ。

そしてそれからは、不自由を感じる事のないくらいの生活を送らせて貰っていたが、男性とはいえ一人親。

しかも双子をたった一人で育てるというのは中々大変な事だったはずだと思うが、母は物凄く頭が良く、知力を重視するエルフの国では重宝される存在であった。


母の資質は【妖狐人】


主に参謀、諜報、交渉などの能力に長け、更には幻影魔法に特化している能力を持っていたので仕事に困る事はなかった様だ。

しかし、『一人親』『男のくせに女の様な美しい外見』『父親知らずの子を、ましてや男の身で身ごもって出産』『人を誑かす話術や幻影魔法が得意』、その事実を知った者達の中には、心無い言葉を投げつけてくる人達も多かった。


『男を手玉に取る男娼。』

『散々男と遊んで、最後は惨めに捨てられたんだろう。』


鋭く尖った剣の様な言葉で斬りつけられた母は、どうしたかと言うと────合理的かつ正攻法なやり方で、攻撃してきた奴ら全員を身ぐるみを剥いで破滅させていった。

その容赦ないやり方に幼心に恐怖していたのだが、母はニヤッ〜と悪い笑みを浮かべてボクとリリアに様々な事を教え込む。


『何かと人を叩くヤツには、触られたくない事1つや2つ絶対ある。』


『正面から戦うより、まずは回り込んで弱みを握れ。それがこっちを舐めてるクソ野郎と対等に話すコツ。』


『相手を利用しようと近づいてくるクズには容赦するな。逆に利用して身ぐるみぜ〜んぶ剥いでやれ。』


ハンっと鼻で笑いながら、まだよく理解出来ていないボクとリリアを見下ろし頭を軽く叩くと、最後は寂しそうな顔でポツリと言った。


『知力は、力で劣る者達の最高の武器になる。頭をフル回転して関わる相手を見極めた方がいい。ついていく人を間違えると一生地獄だよ。』


今思っても小さい子供に言う言葉ではないと思うが、母は母でこの世の苦労や苦しみを知っていたからこそ、僕たちに悲しい思いをしてほしくなかったのだろうと思う。

その言葉は、大きくなるにつれて身にしみて理解していった。


まずはボク。

母にそっくりで美しい外見はとにかく人の目を引く。


好意的な目と、あからさまにチヤホヤと構ってこようとする男の大人達。

しかし、ボクが男だと知ればあからさまに嫌な態度をとってくる様なヤツもいた。

男と知っていても尚近づいてくる者達もいたが、そういう奴らの目的は全部同じ。


『物珍しい観賞用兼楽しく遊べそうなおもちゃ。』

『つれて歩く変わったペット、もしくはアクセサリー。』


この場合、ほとんどの男には恋人や伴侶が既にいて、要は────『完全な遊び感覚で将来使いたい。』『そのために、今から見せかけの優しさで恩を売って唾をつけておこう。』……それが本音のようだった。


『周りの人達は意地悪だね。でも俺だけは違うよ?』

『君の悲しみは全て分かっている!だから頼っていいんだよ。

辛い事があるなら相談して?全部受け止めてひどい人達から君を守ってあげるから。』


真剣な表情でそんなバカみたいな事をいう大人の男達に、気を抜けば吹き出しそうだった。


安全な場所から優しい言葉を掛けるだけなら誰でもできる。

言葉の裏にある本音に気づかず、上辺の言葉だけでその手をとれば地獄が待っているんだ。


そういう奴らは、『孤独』を抱えた人から、偽善の言葉で全てを奪い尽くそうとする最低のクソ野郎共。

母のいう通りだ。人生は相手を見極めなければ地獄が待ってる。

家に届いた美しい花束や高価なプレゼントと共に届く沢山の『成人後は是非第二夫人に〜。』というメッセージカードを見下ろし、ボクは完全に人生というモノを悟った。


ボクは誰かにとっての一番には決してなれない存在で、でも側に置いたり連れ歩くには最高の存在なのだそうだ。

そんな所に僕の居場所はなく、存在意義は『立って笑っているだけ』。


それってさ、生きてるって言えるの??

『可愛い』ってなんて軽い存在なんだろう。


この時点で僕の心の中には様々な感情が渦巻き、自分の気持ちがよく分からなくなっていた。


『可愛い』と言われる事は嬉しい。

大好きで尊敬する母とコピーの様にそっくりな外見を褒められると、母が褒められているという事だから。


でも『可愛い』からこんなに嫌で惨めな思いをしなければならない。

『可愛い』のせいで自分の居場所がない。


男の同級生には距離を置かれ、女の同級生からは疎まれ、大人の男の人からは気持ち悪い目で見られ続けている。


でも『可愛い』から皆が僕を見てくれる。

価値があるって思ってくれる。


だから『可愛い』は自分の大事な一部でもあるのだ。



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