３１ 転生したのは？
（大樹）
窓から差し込む朝の眩い光────俺の意識はその光によって急速に覚醒していく。
何だかとても長い夢を見ていたかの様な……？
そんな不思議な気分のままパチリと目を開けると、最初に目に飛び込んできたのは、ピカピカと黄金色に輝くベットの天満であった。
おおお？？？
全く馴染みのないそれを見つめながら、更にフカフカと体を触るベットの柔らかさにも驚かされる。
今まで薄っぺらいせんべい布団でしか寝た事がないのに、これは未知の感覚だ……。
「んん〜？？とりあえず……よいしょっと！」
その感触に後ろ髪をひかれつつ、モフモフベッドから起き上がると、そのまま周囲を見渡した。
全体的に見て、美術館とかで見た事ある様な中世ヨーロッパ風のデザイン。
それで統一されている内装は、非常に綺羅びやかでゴージャスな内装をしている。
「お、王室御用達……？」
広い広〜い部屋の中、ワイン色や新緑色、白、黒、金色……と色をふんだんに使ったデザインの家具達には、見たことないくらいの大ぶりの宝石や金細工が施され、まるで絵本に出てくる王様の部屋の様だ。
多分一つでも壊したら人生終了……。
こっ、これは相当お金持ちの家に生まれたのかも……！？
俺は反射的にゴクリっと喉を鳴らす。
【アルバード英雄記】の世界観は、剣や魔法、モンスター蔓延るファンタジー世界なのだが、文明的には中世ヨーロッパくらいを想像すると分かりやすい。
政治は【王政】で、王様をトップに王族、貴族と身分が続いていき、残りの８〜９割くらいがその下に位置するいわゆる一般人に相当する平民さん。
そしてこの国、アルバード王国はこの身分に重きを置いた価値観が根強いため、王族、貴族と平民の生活には雲泥の差がある。
勿論貴族の中にも階級がある為一概には言えないが、王族や貴族の生活はシンプルに言えばザ・セレブ。
豪邸！溢れる高級品！豪華な食事！……と、贅を尽くした暮らしを日々送っているはず。
そこまで考えて、俺はキョロキョロと自分の寝かされていた部屋を改めてもう一度見渡した。
つまり、この『ちょっとサングラス持ってきて〜』と思わず言いたくなる様なピカピカのお部屋は間違いない。
────貴族の部屋だ。
「これは完全に予想してなかった事態だぞ〜？」
最初からかなり衝撃的な出来事に遭遇し、困った俺は頭をポリポリと掻いた。
てっきり何処かの平民の子として生まれ、畑耕したりニワトリを追いかけ回したりする生活を想像していたのに……。
まさかのお偉いさんの元に生まれてしまった様だ。
「前世でド貧乏だった俺がお金持ち……。」
とりあえず俺の乏しいお金持ちのイメージ、札束を持って自身の顔をパタパタ仰ぐ姿を想像し、ぷっと吹き出した、その時────……。
────コンコン。
部屋の扉を叩く音が聞こえた。
「はっ……はーい！ 」
ビクっ──！！と驚いて体を震わせた後、あわてて返事を返す。
すると「 失礼します。 」という声とともに、メイド服の様な服を着た一人の女性が入って来た。
年齢は二十代の前半くらいだろうか？
前世でも馴染みのある茶色い髪を、きっちり上で纏めてお団子にした清潔感あふれるヘアー。
キビキビしたキャリアウーマンというよりは、優しい近所のお姉さんを想像させる穏やかそうな顔立ちと雰囲気を持ったとても可愛らしいお嬢さんだ。
そのお嬢さんは格好からもこの家の侍女さんだと思われ、その手には顔を洗うための湯を張った洗面器とタオルがある。
そして彼女はこちらの様子を伺いながら、俺に向かって言った。
「おはようございます、リーフ様。朝の洗顔用のお湯とタオルをお持ち致しました。」
