29 別れ
(大樹)
レーニャちゃんはそう叫んだ後、何か呪文の様なものを唱え始めた。
すると下に見た事ないような文字の羅列が浮かび上がってきて、よく漫画とかに出てくる魔法陣のような物が描かれていく。
「うわっ!何だ何だ??」
驚いて思わず椅子から立ち上がると、まるで最初からそこに机と椅子などなかったかの様にそれは跡形もなく消え、いつの間にかレーニャちゃんはその魔法陣の外にいた。
「転生先はレオンハルトの生まれた街【レガーノ】に設定しました。
ただ生まれ変わる際、魂がその世界に馴染むため数年くらいは必要なので、前世である大樹さんの記憶が蘇るのはその頃になります。
ですので、思い出したら直ぐにレオンハルトを探して下さいねー!」
描かれた魔法陣が白く光り輝くのと同時に、俺の体は徐々に透け始め周りの音も遠のいていく。
驚きながら透けていく自分の手を見つめていると、レーニャちゃんは口元に両手を持ってきて大声で叫んだ。
「────では短い間でしたが、とっても楽しい時間をありがとうございました!!
どうか第二の人生もハッピーエンドになりますように!!」
俺はもう殆ど透けてしまった手を下へ。
そして背筋を伸ばし真っ直ぐレーニャちゃんの方を向くと、最後に深々と頭を下げ、負けないくらいの大声で叫ぶ。
「森田 大樹、享年59歳!
俺の物語は全力で駆け抜けて、ハッピーエンドで幕を閉じました!!
今度はアルバード王国で、ハッピーエンドを目指します!レーニャ神様!どうもありがとうございました!!」
そう言い終わると同時に、俺の体は光に包まれその場から完全に消え去ったのだった。