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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
プロローグ(大輝、レーニャ、死後の世界にて)
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28 今後の目標

(大樹)


レーニャちゃんは俺の話を聞いて、しおしおと力なく椅子に深く座りこんだ。


そして泣きそうな……だけど何処か嬉しそうにも見える表情で俺を改めて見返してくる。



「……分かりました。そこまでの決意ならば、私もこれ以上反対はしません。

ただ二つほど注意したい事があるので、それだけ説明しても良いですか?」


「ありがとう!勿論だよ。一体何だい?」



俺が背筋をピンと張ると、レーニャちゃんはニコッと笑顔を見せて自分の指を2本立てた。



「まず、一つ目。

先ほどお話しした<強制力>と、もう一つの力、<補正力>についてです。

<強制力>は、運命を元の流れに戻そうとする力の事ですが、仮にそれで戻せないくらいの強い力で運命の流れを変えた場合、次に働く力がこの<補正力>です。

これは単体で戻すのが難しくなった運命を元の運命へ戻すため、()()()()()()()()()()()()()()の事をいいます。

この<補正力>は予測が難しく、どんな形で現れるかわかりません。

ですので、あまり大きく運命を変える事はやめた方がいいかと……。」



なるほど、と俺は必死にその事について考える。



「えっと……つまりはレオンハルトの未来を大きく変えると、他に犠牲になっちゃう人がいるかもしれないって事かな?」



「その通りです。例えば、大樹さんが何らかの妨害をして、レオンハルトを英雄として見つからないよう隠したとします。

すると、代わりに英雄と仕立てられる人が出てくるわけですが、その人が悪人だった場合、更に多くの人が苦しめられる……そんな最悪の未来に変わってしまうかもしれません。

そして結局最後は、元の運命通りに世界が消え去る……でエンドというわけですね。

このように補正が最悪な形で現れることもありますので、レオンハルトに関する未来を大きく変えるのはやめた方がいいと思います。」



レーニャちゃんの分かりやすい例えに、俺は『なるほど!』と納得した。


いくらレオンハルトを助けるためとはいえ、本来犠牲にならない筈の人達を犠牲にするわけにはいかない。


────しかし……そう考えると、やれる事は結構限られてくる。



俺は冷静に、レオンハルトに起こる未来を一つずつ頭に浮かべていった。



レオンハルトの心を壊す大元は、母親から捨てられ奴隷にされてしまった事件。


もしこの出来事を止めた場合────その時は辛うじてレオンハルトの心を守る事はできても、多分一生そのまま母親に搾取され続ける生活を送らなければならなくなる。


恐らくそれにより、じわじわと真綿で首を絞める様にレオンハルトの心は壊されてしまうはずだ。



「う〜ん……それじゃあなぁ……。」



大元を変える事の難しさに、思わず頭を抱えてしまった。



子供を捨てる選択をする人にも、複雑な理由があるかもしれない。

しかし、レオンハルトの母親の理由は……この先改心する事はとても難しいと思う。


きっと彼女の目は、この先一生レオンハルトに向かない。


一瞬で捨てられるか、一生利用されて都合のいいおサイフになるかの二択になるはずだ。



「…………。」



ブンブンと首を横に振った後、更にその先の事を考えた。



次にレオンハルトが母親に捨てられた後、奴隷になる未来を変えた場合。


必死にお金を稼いでそれを防いだとして、レオンハルトは神託まで一人暮らしを続けるわけだが……そうすると途中でリーフに殺されるんじゃ?という心配が前に出てくる。



リーフのイジメはスーパーハード。


下手をしたら死んでもおかしくないほどだった。


それこそ鉱山にいた方が安全では?と思うほどに……。



それに奴隷にされなかった事を母親が知ったら、新たに借金をさせられるかもしれないし……。


そもそも奴隷でないレオンハルトは高学院に入学後『奴隷から開放されるため』という理由がなくなっちゃうから、リーフと決闘しない可能性もある。


そうすると周りにレオンハルトの強さを知ってもらえず、リーフも失脚せず、その先もことごとく英雄レオンハルトを潰しに掛かってくるかもしれない。


更にリーフに加担していた悪徳貴族達も全員失脚させられないので、タッグを組んで嫌がらせしてくる事も……?



「……うぅ〜。」



考えれば考えるほど頭がごちゃごちゃとしてきて、頭を抱えながらレーニャちゃんに聞いてみた。



「例えばさ、周りの人間が直接関わらない事件……左目をなくす事件とかなら、他で代用が効くかな?

他の人間との関係性が変わらなければ、結局はレオンハルトの心の変化だけで環境は変わらないかもと思ったんだけど……。

そう考えると、右手を失くすのも、リーフとその家族が無事なら防いでも問題ない……かも……?」


「うーん、そうですねぇ……?確かにその二つは防いでも問題なさそうな気がします。

左目を失くすキッカケになった事件は逆にない方が良いですし、確かに他で代用は難しくないかもしれませんね。

右手をなくす事件も、結果的にリーフ達が無事なら問題ないかと……。

ただ、レオンハルトが奴隷になる事、リーフに虐げられる事、それは変えない方がいいかもしれません。

悲しいですが、奴隷にならなければ母親との縁は切れずに一生彼女に搾取されながら、結局心は壊されるでしょうから。

リーフに関しても、彼はレオンハルトの力を引き出すために欠かすことの出来ない存在です。

もしリーフに虐げられなければ、レオンハルトはあの強さを手にすることはないと思われます。」



やっぱりか〜……。


ほぼ予想通りの答えに、俺はへなへな〜と力なくテーブルに突っ伏した。



────そうなのだ。

悲しい事に、レオンハルトの強さは辛い体験があってこそのものであった。


本当は辛い思いをしてほしくはないのだが、それがないと強くなる事ができない。


つまりはレオンハルトを襲うであろう数々の敵に打ち勝つ事が出来ず、最悪一生リーフの奴隷のまま……なんて事もありうる。



俺は、よしっ!と納得して顔を上げると、レーニャちゃんはニコッと笑って話を続ける。



「あと、2つ目に注意していただきたいのは、大樹さんが生まれ変わる人物は選べないという事です。

こればかりは完全なランダムなので、生まれ落ちるまで分かりません。

ですので私に出来ることは、レオンハルトが生まれるであろう場所の近くに転生させる事のみになってしまいます。」


「なるほど……。」



どんな親元に生まれるかによって、レオンハルトへの助力の仕方が変わってくる。


まぁ、それは生まれ変わってからおいおい考えていけば大丈夫だろう。


とりあえずは、近くに生まれるだけでも十分過ぎるくらいだ。



「うん。大体理解できたと思う!だから、ターニャちゃん、俺をアルバード王国に……レオンハルトのそばに転生させて下さい。」



三度目の正直!とばかりに、俺がペコリと頭を下げて頼み込むと、レーニャちゃんは、ガタンっと勢いよく立ち上がり両手を上に挙げる。



「分かりました!!大樹さんならきっと大丈夫です!最高のハッピーエンド期待してますからね!」



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