26 大樹の決意
(大樹)
シンっと静まり返った白い空間の中、俺は椅子にもたれ掛かったまま上を見上げ、そのまま両手で顔を覆う。
そして大きく息を吸った後、大声で泣き叫んだ。
「うわああああ────ん!!!そっ……そんなひどい話なんてないよっ!!!あんまりだ!大バカヤロ────!!!」
ワンワンと泣きじゃくる俺を見て、やがてレーニャちゃんの目からもポロポロと涙がこぼれ始め、とうとう……。
「だっ、大樹さんが泣くの見てたら……うわああぁぁぁ────ん!!!もっ、もらい泣きしちゃいます────!!」
俺同様に泣き叫び、二人で長いことわんわんと泣き続けた。
その後、なんとか落ち着いた俺とレーニャちゃんは、二人で大人しく座り紅茶を啜り、同時に、ほ〜っ……と息を吐く。
「あ〜……泣いちゃった泣いちゃった。俺、大号泣しちゃったよ。うるさくしてごめんね。」
「いえいえ〜。私も沢山泣いたのでおあいこってやつですね。こちらこそすみませんでした。
レオンハルトに憧れていた大樹さんには、とてもショックなお話でしたね……。」
レーニャちゃんがしょんぼりとした様子でそう言ってきたので、俺は鼻をズッ!と啜って頷いた。
「……うん。すごくショックだった。
本の最後は旅の途中で終わっていたから、俺、自分に都合のいいハッピーエンドを勝手に想像してたんだ。」
「そうですか……。それではレオンハルトが選んだ答えは、悲しかったのではないですか?」
レーニャちゃんの言葉に、俺はゆっくりと首を振る。
「いいや、違うんだ。その答えがショックなんじゃなくて、その答えしか出せなかった彼の人生が悲しいんだ。
レオンハルトは、その答えに一切の迷いはなかった。
普通は急に『君がこの世界の在り方を決めていいよ』って言われたらすごく悩むと思うんだよ。
『悩む』って事は選ぶ選択肢が沢山あるって事で……それって色々な経験を経て心が動かされて来たから存在するんだ。
でもレオンハルトに選択肢はなかった。
きっと彼の心は最後まで動かなかったんだ。沢山の出来事が彼の心を壊してしまったから……。
何か一つでもその原因となった出来事を防ぐ事ができたら、彼の心は動いてたかもしれないのに……俺はそれが悔しいし、悲しい。
…………あっ、また泣きそう。」
ずぴーっ!とまた鼻を啜ると、レーニャちゃんは謎の能力でハンカチを出し俺に差し出してくれた。
俺はお礼を告げてそれを受け取ると、顔をくしゃくしゃと拭き、突如ピンっ!と閃いた。
「────そうだ!!レーニャちゃん!さっき俺は、この後あの世に行ってから新たな生を与えられるって言ってたよね?!」
「はっはい!言いましたが……。────はっ!!まさか大樹さん!」
レーニャちゃんは何かに気づいた様な顔をしたので、俺は決意を込めた目で大きく頷く。
「そう!俺をアルバード王国へ……。
レオンハルトのいる世界へ生まれ変わらせてください!」




