24 衝撃の事実
(大樹)
「……じゃあこの本の主人公は……レオンハルトは、本当にこの本の通りの人生を歩むのかい?」
俺の問いに、レーニャちゃんは申し訳無さそうに眉をぎゅっと寄せる。
「────はい。この本の主人公レオンハルトはこれからアルバード王国に生まれ、この本の通りの人生を歩むでしょう。」
俺の人生の目標、目指し続けた憧れの人、レオンハルト。
そんな彼が現実にいる事に驚き、更にこれから悲しい未来が待ち受けている事に心を痛めた。
「そ……そうなんだ! じゃあさ、本の中では【イシュルの聖大樹】に向かうところで終わっているけど、務めを果たした後、彼はどうなるんだい?
なんたって呪いは解けたし、モテモテになったし、きっと今までの人生が報われるような、誰もが羨む最高のハッピーエンドを迎えたんだろうね。」
心の痛みを吹き飛ばす様に、明るい調子でレーニャにそう聞くと、彼女は俺を気遣うようにチラリと見てから、静かに首を振る。
「いいえ、レオンハルトは……いえ、彼のいた世界はすべてが『無』になりました。」
「??『無』?……それって一体……?」
レーニャちゃんは少し考える素振りを見せた後、ゆっくりと説明し始めた。
「人や動物、モンスターや植物も、そして空も川も山も空間さえも、『存在する』という定義を持つものが全てなくなる事です。
『死』ではなく『無』です。
今後そこからは何一つ始まる事も、終わる事もない。それが『無』の世界……。
ちょうど今、私達がいるここと同じ様な場所です。」
語られる衝撃的な内容に呆然としながら、俺は改めて今いる場所を見渡す。
何処までも続く白いだけの世界。
これが────……。
これがレオンハルトの辿り着いた終着点……?




