23 旅の終わりと終焉
そんな旅も半分が過ぎた頃、レオンハルト達の前に一人の男が現れる。
男の名は<ゼノン>
彼はレオンハルトが産まれる前、その魂に呪いをかけた邪神であった。
ゼノンは最強かつ不老不死の化け物で、ジェノス、フローズ、ゴーンがどんなに攻撃を仕掛けても傷一つ負わせることができない。
呆然とする三人には目もくれず、ゼノンはレオンハルトに言った。
《英雄レオンハルトよ。
君が選択を間違えないように私は君に呪いをかけた。
今まで君が見てきたもの、体験してきた事はその手助けとなるだろう。
そして君が私を殺すことで、私が教えたかったことは全て君に贈る事ができる。
────さぁ、私の首を落とすが良い!》
『呪い』とは、同等の代償を払わなければかける事は出来ない。
ゼノンは英雄レオンハルトに呪いをかける代わりに、不死身である自身の命を捧げたのだ。
それは レオンハルトの攻撃のみを通し、一切の抵抗が出来ずその全てが致命傷になる代償であった。
それを聞き終えたレオンハルトは、やはり何一つ思うことはなく、あっさりとゼノンの首を跳ね飛ばす。
すると首は弧を描く様に宙を舞い、ぐるりぐるりと回転しながら下へと落ちていったが、その顔はまるで世界で一番の幸せを手にしたかのように酷く穏やかな笑みを浮かべていた。
そして彼の首が地面に着地し、完全にその生が終わりをつげると、突如レオンハルトの体が輝きだす。
目も開けられぬ眩い光────それにパーティーのメンバー達は驚き目をつぶったが、ソフィアだけはその光の正体に気づいていた。
これは呪い解除の光だ!
そうしてやがて光は徐々に収まっていき、目の前に現れたレオンハルトの姿に四人は目を見開く。
まるで伝承に聞くイシュル神そのものの様な輝く銀色の髪と瞳、透き通った白い肌にこの世の美を集結しても足りぬ程の美しい顔。
更に元々持っていたしなやかで軍神すらも敵わないであろう鍛え抜かれた体と合わさる事で、まさに神が地上に降臨したかのような完璧とも言える姿がそこにあった。
レオンハルトの呪いは、それをかけた本人が死亡したことで完全に解除され、彼は本来持つ真の姿を取り戻したのだ。
そして呪いが解けた後、またしてもレオンハルトの環境はガラリと変わる。
行く先々でレオンハルトは神の様に崇められ、今までと真逆といえる感情を至るところでぶつけられることとなった。
そしてそれはパーティーの仲間達も例外ではなく、特にフローズはレオンハルトに対しあからさまな好意を隠さなくなると、それにより彼女に惚れていたゴーンは堪えることのできぬ嫉妬心を彼に向けるようになってしまった。
そうして別の意味で不穏な雰囲気になってしまったパーティだったが、その後も旅は続き、数々の困難を乗り越えやがて旅の終着点【イシュルの聖大樹】へ……。
────と、ここでこの物語は幕を閉じる。




