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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
プロローグ(大輝、レーニャ、死後の世界にて)
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18 アーサー登場

帰宅した三人の騎士は、悩みに悩んだ。



このことを報告すれば、様々な貴族達から総攻撃を受けるかもしれない。


しかし彼らの正義感は強く、またこのままでは世界が滅んでしまうことを確信した彼らは、勇気を振り絞り、当時の上官に学院で見た光景をそのまま報告した。



するとその上官も、彼らと同様正義感の強い男であったため、直ぐにそれを上へ報告。


そしてそのまた上へ、また上へとその報告は伝えられていき、とうとうそれが王の耳にも入ると、すぐに各所の権力者たちを呼び寄せ緊急会議が開かれることとなった。



そのメンバーの一人である、アルバード王国第一王子<エドワード>



彼は、レオンハルトが初めて王宮に姿を現した時その場にいた一人で、その醜くおぞましい姿にその人物が英雄レオンハルトであるということを、真っ向から否定していた人物だ。



元々身分に重きを置く彼にとって、平民生まれ、しかも娼婦の産んだ父親不明の子というのすら受け入れがたいのに、禁忌の色に醜い姿……更には現在の身分が奴隷とくれば、受け入れることなど到底無理な話だった。



それは、その場に集められたほぼ全ての貴族たちも同様の思いを持っており、中にはレオンハルトの現状を知っててもこれ幸いと黙っていた者たちまでいた。


そのため、レオンハルトの状況が王の口から語られた時、エドワードは我先にと声高々に言い放つ。



「それは彼の怠慢が引き起こしたことであり、学ぼうとしない彼の自業自得だろう。

学院は自身の立場や、それに応じた振る舞い方、そして自身の身分にふさわしい行動を学ぶ場である。

部外者は口を出さず、引き続き身分が上の者に仕えながら学ばせれば良い。」



その意見に賛成するように、殆どの高位貴族達はエドワードに拍手を贈った。


そしてその拍手がなり終わる頃、一人の人物が挙手をする。



アルバード王国第二王子<アーサー>だ。



アーサーは、他国への見解を広げるため、今の今まで世界中を飛び回り、つい先程アルバード王国に帰還したところであった。


そのためアーサーは、レオンハルトにまだ直接会っていない。


また、元々身分に囚われず冷静で合理的な性格であったアーサーは、この場の誰より客観的に物事を見る事が出来た。



発言を許されたアーサーは、エドワードへ視線を向けゆっくりと話し始める。



「確かにエドワード兄上のご意見も一理あります。しかしそれは、今まで学ぶ環境があった者に対してでしょう。

レオンハルトの経歴に目を通しましたが、彼は小学院にすら一度も通っておらず、文字はおろか恐らく言葉も満足に話せないはずです。

そんな彼が突然たった一人高学院に放り込まれ、一体どうやって、そして何を学ぶのでしょうか? 

王族ならば、あらゆる観点から意見を述べるべきだ。」



最もな意見に、エドワードは顔を赤らめグッと声を詰まらせた。


アーサーは、そんなエドワードからあっさり視線を外し、今度は父である王へ視線を移す。



「ただ家を与え、本を読めとだけ伝えただけでは、どうすることもできませんよ。父上だってそんな事は分かっていたはずです。

なぜその様なことをしたのですか?」



エドワードは王に対するアーサーの発言に「不敬である!」と異議を申し立てたが、王本人がそれを諌めた。



シン……と静まり返る部屋の中。皆が見守る中で、王は一言────……。




「怖かったのだ……。」




囁く様な小さな声で言った。




王は博愛の精神の元、イシュル教と平和を誰よりも愛する男だ。


彼にとって、レオンハルトの禁忌的な『黒』と、神さえ解けぬ呪いは、正常な判断能力を失うほど恐ろしいモノだった。


そんな王ができた唯一の事は、レオンハルトに最低限の生活を送らせることだけ。



それを理解したアーサーは、それきり口を閉ざした王を見てため息をつく。



彼のしたことは、王として浅はかであったと言えるが……その考えを改めろということは、例えば水生生物にこれから陸上で暮らせと言うようなもの。


人生と共に歩んできた価値観は、そう簡単に変わるものではない。



アーサーは静まり返った部屋のなか、周囲の者達全員を一瞥してから続けて言う。



「彼がイシュル神の愛し子、【英雄レオンハルト】であることは疑いようのない事実。

あなた方は自身の持つ価値観を突き通し、この世界と心中するおつもりですか?」



王を初めとする半数以上の重鎮達が、青ざめて視線を下げたが……エドワードと彼を支持する一部の者たちは、それでも尚、自分達の正当性を訴えた。


アーサーはそれをため息で返し、最後にもう一度周りを見渡した後きっぱりと告げる。




「何が『正しい』か、『正しくない』かは関係ない。

自身を虐げるその『正しい世界』とやらを、レオンハルトは救おうと思うかどうかです。」────と。




これには流石のエドワードも他の異議を唱えていた貴族達も青ざめ、口を閉じる他なく、それでも悔しげにエドワードはアーサーを睨みつけたが、アーサーはそれを一切無視し王に言った。



「どうかこの件は、私にお任せください。私はまだ彼に直接お会いしたことがありません。ですので、まずは会って見極めたいのです。

【英雄レオンハルト】が、どのような人物なのかを。」



王は下を向いたまま、アーサーに全てを任せると告げ、そして最後に────「すまぬ……。」と小さく呟いた。




それからアーサーは、すぐに行動を始める。



実はこれより少し前から『レオンハルト』という人物を知る為、自身の管轄する諜報部隊に彼の調査を命じていた。


そしてレオンハルトが学院で虐げられているのが紛れもない事実であると知った彼は、専属騎士の<アルベルト>と共に学院へ向かう。



自身の目で『レオンハルト』という男を確かめるために。



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