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天寿を全うした俺は呪われた英雄のため悪役に転生します  作者: バナナ男さん
第五章

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180 初めまして

( リーフ )


◇◇◇◇


「 グギャッ!!! 」



カエルの断末魔のような鳴き声と、プンッと鼻につく悪臭に、俺の意識はゆっくりと浮上していく。



「 …………? 」



そしてまだハッキリしない意識のまま、ソロ……と目を開けると、目の前にはレオンの顔があった。



あれ?さっきまでは、救助される溺れた人スタイルだったのに……?



対面式で抱きしめられている事に驚きながらも、モゾモゾと収まりのいい場所を探して細かく動く。



何々〜?もしかして、床ずれの心配かい?


そんなにやわじゃな〜い。



心の中でハハッ!と笑いながら、寝ぼけ眼を擦った。



「 もう着いたのかい?俺どれくらい寝てた?


体勢変えてくれてありがとう。


でも、俺はその程度で床ずれしないよ〜。 」



「 起こしてしまって申し訳ありません。


眠りについてから、三時間と三十八分二十六秒です。


到着はまだ掛かると思われます。 」



そっかそっか〜!


レオンの落ち着いた声を聞きながら、フッと周りを見て────ピタリと動きを止める。



まず俺、レオンに片手で抱っこされてる。


収穫した麦袋を担ぐ農民さんと、全く同じスタイル。



そして、視線は地面へ。



そこには、ひたすら赤い大地が広がっていて、その上に沢山のゴブリンの首と、首のないゴブリンの身体があった。



「 …………。 」



思わず押し黙ると、攻撃的な気配を背中に感じ、ソロ〜と後ろを振り返る。


するとそこには────相当お怒り状態のゴブリンの大ボス、ゴブリン・キングが、こちらを睨みつけていた。



< ゴブリン >


体長50cm〜1m程の人型Eランクモンスター。


知能はやや高く群れなどの集団で行動し、武器を駆使して人間を襲ってくる。


一匹では大した事ない強さではあるが、集団で来た場合討伐難易度は跳ね上がる。


またゴブリン・キングと共に現れた場合は更に上がるため注意が必要。




< ゴブリン・キング >


体長3mを超える人型Cランクモンスター。


ゴブリンを率いて時に堂々と人間の集落を襲う事もあり、非常に攻撃性の高い獰猛な性格をしている。


大剣や巨大斧を使い圧倒的パワーで物理攻撃をしてくる上、高い体力、防御力、更には物理攻撃耐性( 大 )と魔法攻撃耐性( 小 )を持っているため集団での討伐が推奨される。




「 お……?────おおおぉぉ???? 」



寝てる間に迎えていた修羅場に、ちょっと思考が追いつかない。



えっ……せ、戦闘準備────と思うより早く、今度は突如ゴブリン・キングが消えた。


いや、正確に言うとゴブリン・キングが消えたんじゃない。



レオンが( 多分 )動いて、一瞬でそのモンスターの首を刎ねると、そのまま馬車の方へとフッと戻っただけ。



俺の動体視力じゃ、追えなかった。


だから、ゴブリン・キングが消えた様にしか見えなかったのだ。



「 ???? 」



お、俺が寝ている間に一体何が……?



やっと完全覚醒して狼狽え始めた俺の目に、のんびり馬車の外でお茶をしていた様子のモルトとニール、そして御者さんが映る。


────パチッ!


そして、優雅にお茶を飲むモルトと目が合うと、モルトはこちらに近づいて来て、手に持つバラ茶をスッと差し出してくれた。



「 おはようございます。リーフ様。


どうぞ、淹れたてのバラ茶でございます。 」



「 あ、うん。ありがとう……? 」



レオンに担がれた麦袋のまま受け取って、ふぅふぅしてから飲む。


すると、フワッとバラの良い香りが鼻から抜けていった。



あっ、おいし〜い!



続けて、その薔薇の濃厚な香りと一緒に、口当たりの良い紅茶の液体がスルスルッと、胃の中まで染み渡る。



モルトの家のバラ茶は、今年も売り上げ右肩上がりだそうで、我がリーフ邸によくお裾分けとして持って来てくれる。



これがまた美味しい美味しい!



そんな素晴らしいお味のバラ茶に、舌鼓をうっていると、モルトがここまでの出来事を説明し始めた。



なんでも俺が寝てから三時間半くらいが過ぎた頃、馬車の進行方向におよそ30匹以上はいるであろうゴブリンの群れが現れたそうだ。



基本、街にはモンスター除けの結界や侵入を防ぐ防壁がある為、おいそれと街への侵入は出来ないようになっているが……街から街への移動の際に通る道には、当然そんなものはない。



運悪くモンスターと鉢合わせしてしまえば、戦うか逃げるかの二つの選択肢しかない為、移動の際は必ず護衛を雇うのが一般的らしいのだが、今回の移動にそんな者はいなかった。



てっきり馬車に、なんか凄いモンスター除けがついてるのかと思ったんだけど……??



状況を聞く限り、どうやら違った様だ。



────で、結局エンカウントしたゴブリン達を、俺を担いだレオンがお外に出てパパッと首を刈りに行ったと────……そういう事らしい。



いやいや、起こしておくれよ〜……。



悪役が背負われる麦袋とか、ホントにカッコ悪すぎる!



「 ────あぁ〜……。


うんうん……レオン、ありがとう。 」



目元をグニグニと揉み込みながら、とりあえずモンスターを倒してくれたレオンにお礼を言って下ろしてもらう。


するとレオンは「 次回は防音魔法をかけますね。 」と言ってニコリと笑った。



いや、起こして?と思いながら、俺はバラバラになっているゴブリン達の死骸を見下ろす。



とりあえず、この大量のゴブリン達の死骸を燃やすか土に埋めないと他のモンスター達が血の匂いでよって来てしまう。


そう思って、火属性魔法を使って焼こうとしたその時────……。



「 あぁ────!!!!!! 」



耳がキーン……とする様な、女性の大きな声が聞こえた。



「 ?んん〜?? 」



直ぐに声のした方向を振り返ると、コチラを指差し口を大きく開けている女の子の姿が目に映る。



ピンピンと外に跳ねた長いピンク色の髪に、黄色いバンダナを巻いたヤンチャそうな少女だ。


多分見た目からして、まだ10代後半くらいだろうか?


幼さを色濃く残した顔をしている。



格好は斥候などのスピード重視型のラフな戦闘服のようで、恐らくは何かしらの戦闘職についていると思われるその少女は、よくよくみれば、俺たちの先に倒れているゴブリン・キングの死骸を指さしていた。



「 こ、こ、こ、これ!!


ちょっとちょっと!ゴブリンキングじゃない!


緊急討伐依頼が出たからいち早く探しに来たのに……。


ねぇ、君達!コレ誰が倒したか知ってるかな? 」



「 えっ?誰って……。 」



俺、モルト、ニール、そして御者さんが一斉にレオンを指差す。


すると、ピンクの髪のお嬢さんは、いつの間にか深くフードを被っているレオンをジーッと見て、ぷっと吹き出した。



「 あはははー!流石に君達くらいの子供に倒せるモンスターじゃないよ。


こっちのお兄さんも、そりゃ〜体格は悪くないけどまだ子供みたいだし!


ソロで倒せるほどCランクは甘くないの。


もしかして何処かの高ランクパーティーが討伐したのかしら?


でも< 瘴核 >も取って行ってないみたいだし……。 」




< 瘴核しょうかく >


モンスターの心臓部に当たる部位。


非常に高いエネルギーを秘めている為様々な用途に使える。


一般的に小さな宝石の様な外見をしていて、強い個体ほど大きくエネルギー量も大きい




────えっ?Cランクってそんなに強いの?



正直レガーノには滅多にそんなモンスターは出ない為、正直強さとかはよくわからない。


だから首を大きく傾げたが、とりあえずレオンは凄い!という事でいいと思われる。



「 フフフ……。 」



ちょっと誇らしげな気分になっていると、遠くの方から「 お〜い! 」という、今度は男性の声が聞こえたため、そちらを振り返る。


するとそこには、新たに三人の人物が走ってくる姿があった。


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