109 レオンの中身
( リーフ )
初めて会った日から日に日に表情が豊かになっていくレオンは、偽りの世界の中で、現在幸せに暮らしている。
己を虐げ拒絶する世界こそが幸せ!
そんな新たな概念を、傷ついた心は作り出してしまった。
そんな彼の精神状態は、はたしてどうなっているのか……?
俺はゴクリと唾を飲み込んだ。
レオンは現在めちゃくちゃ強い。
流石は英雄、デタラメな強さをもっていると思う。
最初の頃はそれこそ先天的にその強さを持っていたのだと思っていたが……今後レオンが発現する予定のスキルを改めて考えた時、ふっと思ったのだ。
もしかして現在の彼の強さは、つらい経験や体験から発現したものなのではないか?────と。
思えばスキル〈 叡智 〉も母親に暴力的に言われた言葉がきっかけだしなぁ……。
痛ましい経験を振り返り、心はズンッ!と重くなる。
そして痛みだした胸をドンドンと叩いて落ち着こうとしたが……更なる疑惑に、その痛みは酷くなっていった。
もしかして、俺の下僕宣言やその他の虐めのせいで、あの強さが引き出されたのでは??
そんな疑惑がグルグルと頭の中を巡り、更にそれと同時に浮かんできたのは、このまま同じ事を繰り返して大丈夫なのかという不安だ。
このまま進んでいったら、未来が大きく変わるんじゃ……?
途端に焦りが前面に出てきて、どうしよう……と動揺して体はゆらゆらと揺れてしまい、そんな俺をレオンは不思議そうに見てきた。
そんな無垢な瞳を向けるレオンをチラッと見て、更にう〜ん……う〜ん……と考え込む。
もし、これ以上精神を病んでしまえば、” レオンの心を壊す出来事を防ぐ ” という目標は崩れ去り、まさしく本末転倒に。
しかし、虐めをやめてしまえば、これ以上強くならないかもしれない。
いくらレオンが強いとはいえ、物語のレオンハルトに匹敵する強さはまだないはずだし……それはそれでまずい気がする。
よって、ここいらで調整が必要────つまり、レオンの現状を知るため、スキル< 鑑定( 改 )>を使ってみるべきだ。
そう答えを出して、よしっ!と拳を握ったのだが────……。
なんだか人様の日記を盗み見しているようで気が引けるんだよなぁ〜……。
ハァ~と大きくため息をついた後、俺はレオンを気遣う様におずおずと話しかけた。
「 レオン、その……嫌だったら無理にとは言わないんだけど……君の(ステータスの)中身をみてもいいかな? 」
「 ────えっ……? 」
レオンは驚いたように眼を見開く。
まぁ、確かに突然そんなこと言われても……だよねぇ〜?
レオンの心情としては、急に全ての個人情報を " み〜せ〜て〜 ! " なんて言われても……ってところだろう。
レオンは、見開いた眼を徐々に普段通りに戻すと、じわっと耳を赤らめこう言った。
「 それは……先に進む為……ですか? 」
おぉ??なんだかレオンがやたら前向きな発言をしてきた!
先に進む……そうそう。
人生は常に流れ動き、その上に乗って歩いている俺たちは、それに合わせて常に先へと進まねばならない。
あの最強無気力少年のレオンがそんなポジティブな発言をするとは……!
おじさんは感激した。
「 その通り!!俺たちは常に先に進まなければならない!
もちろんゆっくりでいい。
俺たちは俺たちのペースで先に進もうね。
────じゃあ見させてもらってもいいかな? 」
「 ────!っはい!わかりました!
リーフ様にならば、俺はなんであれお見せしましょう!! 」
レオンは、パァァァ〜!と光り輝く瞳に、ピンク色に染まった顔を俺に向け、ココ最近で一番の喜びに満ちた顔で見てくる。
見られる事にそんなに喜びを感じるとは……。
前世で ” 露出することで興奮するんだ! ” と告白してきた友達を思い出してしまった。
ま、まぁなんにせよ見せてくれるというなら遠慮なく……!
覚悟を決めて、俺はレオンに対しスキル< 鑑定( 改 )>を発動してみる。




