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消火栓

 その頃、紅愛(くれあ)はとある小学校の前に居た。この学校は彼女にとって、少しばかり特別な場所だ。彼女は校門を背に、大声を張り上げる。

「ここには、花凛(かりん)のダチが大勢いるんだ。ここから先は通さねぇぞ!」

 彼女の目の前には今、一体の魔物がいる。彼女は変身し、光線銃のトリガーを引いた。魔物は光線の直撃による爆発に呑まれたが、案の定すぐに再生した。直後、魔物は前方へと駆け出し、紅愛の身に殴りかかった。

「おっと……!」

 魔術により相手の動きを読める彼女は、すぐにその攻撃をかわした。彼女の背後で、校門の塀が音を立てて砕け散る。立て続けに迫る拳を避けていきながら、紅愛は光線を乱射する。無論、魔物はその節度再生を繰り返す。そんな攻防が続いた末に、紅愛の動きは次第に鈍っていった。

「アイツ……なんて体力してやがる……」

 いくら相手の動きを読むことが出来ても、その動きに対応する体力がもたなければ意味はない。直後、彼女の腹部に、強烈な右ストレートが叩き込まれた。

「クソッ……!」

 その一撃により紅愛は宙を舞い、そして血を吐いた。そんな彼女がアスファルトに叩きつけられるや否や、魔物はその上に馬乗りになる。彼女の身は、敵の鋭い爪と俊敏な動きにより、並々ならぬ勢いで切り傷を刻まれていった。しかしその後方の小学校は、彼女の妹が通う場所だ。大の妹想いの紅愛は、ここで引き下がるような女ではない。

「吹っ飛べ! バケモンが!」

 光線銃の銃口から、再び高火力のビームが放たれた。魔物は一瞬だけ消し炭になるが、やはりすぐに再生してしまう。しかしその一撃は、紅愛が立ち上がるのに十分な隙を生んだ。彼女は即座に起き上がり、標的を狙撃しながら移動していく。

「こっちだ、バケモン! 追ってきな!」

 これ以上、妹の通う学校を破壊させるわけにはいかない。彼女は敵をおびき寄せ、広いスクランブル交差点に出た。すでに避難指示が出たのか、そこに民間人はいない。一先ず、これで心置きなく戦えるといったものだろう。


 もっとも、それは紅愛が体力を消耗していなければの話である。


 先程の敵の猛攻により、彼女は酷く失血している。その足取りは半ばよろけており、彼女の呼吸は酷く乱れている。このままでは、紅愛は命を落とすこととなるだろう。

「何か、手を打たねば……」

 そこで彼女は考えた。彼女が周囲を見渡せば、そこには様々な建物が並んでいる。しかし、武器に使えるものを置いた店は無さそうだ。それでも彼女は、運命に見放されたわけではない。

「こ、これは……!」

 彼女の目に飛び込んできたものは、歩道の隅に設置された地上式消防栓だ。一見、それは戦闘において有用性のある代物には見えないだろう。そんな何変哲のない平凡な地上式消防栓を目の当たりにした瞬間、紅愛は何かをひらめいたようだ。

「一か八かだ!」

 そう叫んだ彼女は光線を放ち、消防栓を爆破した。そして水が勢いよく噴き出るのを確認し、彼女は急いでそこに駆け寄った。そんな彼女の方へと、魔物は容赦なく迫ってくる。そして間合いが限界まで縮まった瞬間、紅愛は全力を籠めた光線をお見舞いした。その熱によって、彼女の標的は全身を融かされる。ここで要となるのは、両者の足下から噴き出し続けている水だ。紅愛の攻撃により液状化した魔物は、その身を水で希釈されていく。一方で、紅愛は光線を乱射し、眼前の標的の身を融かし続けている。

「ふっ……思った通りだ。限界まで濃度を薄められたら、コイツの細胞組織も生命活動を維持できねぇよな!」

 これが彼女のひらめいた戦法だ。


 やがて魔物の細胞組織はほとんど透明になり、それから勢いよく爆発した。


 勝利を収めた紅愛は光線銃の銃口に息を吹きかけ、変身を解いた。

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