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新たな敵

 あれから数日後、奇妙な現象が発生し始めた。今、市民たちの生活を脅かしているものは、ウィザードでもヴィランでもない。テレビ画面に映ったニュースキャスターが、真剣な顔つきでニュースを読み上げる。

「東京都内の数カ所にて、正体不明の魔物の存在が報告されました。魔物はいずれも狂暴であり、視界に映った人々を見境なく襲うとのことです。魔物と出くわした者は直ちにその場から避難し、ウィザードに通報してください」

 あの男を倒してもなお、ウィザードたちの仕事は終わらなかった。これからも民間人を守るため、彼らは戦い続けなければならない。


 その頃、ヒロたちは瓦礫の山の上にいた。そこにはテクノマギア社の看板の残骸も転がっており、その場所があの社屋の跡地であることを物語っている。そして社長である日向(ひゅうが)を失った今、彼らを率いるのは別の人物だ。

「つい先ほど、五件の通報があった。各自、ショートメッセージに記載された場所に向かうように」

 四人に指示を下したのは、天真(てんま)だ。ウィザードとしての経験が豊富な彼は、先代社長の後を継ぐこととなったのだ。ヒロたちは深く頷き、すぐさま駆け出した。天真は深呼吸を挟み、そして独り言を呟く。

「相変わらず、忙しいね……ボクたちは」

 社屋の跡地に背を向け、彼もその場を後にした。



 *



 ヒロが向かった先は、彼がよく一人で佇んでいる公園だ。そこで彼を待ち受けていたのは、名状し難い異形の魔物であった。

「変身!」

 すぐにウィザードの衣装に身を包んだ彼は、己の右手に炎の剣を生み出した。直後、彼のすぐ目の前に、魔物の爪が迫る。

「速い……!」

 彼は咄嗟の判断により己の頭部を守ったが、その両腕に深い傷を負ってしまう。それは引っ掻き傷というより、もはや切り傷であった。魔物はうめき声のような鳴き声を発しつつ、その鋭い爪でヒロの身を傷つけていく。無論、ヒロも防戦一方ではない。

「食らえ!」

 叫び声を上げた彼は、炎の剣を勢いよく振った。魔物は激しい爆発に呑まれるが、すぐに再生してしまう。そしてウィザードであるヒロは、この瞬間に一つの真実に気づく。

「魔力を感じない……コイツの再生能力は、魔術によるものじゃない!」

 何やら眼前の魔物は、遺伝子構造的に再生能力の高い生き物らしい。晴香の再生能力と違い、その細胞は自動的に再生するようだ。それゆえに、この魔物は大きな利点を持つ。

「……脳を一撃で仕留めても、もはや意味はないだろうな」

 己の意志によって再生を行う魔術とは異なり、今回の敵の体は意志の介入を経ずに再生する。つまるところ、この魔物に炎の剣など通用しないということだ。


 そこでヒロは、剣の刀身に茨をまとわせた。彼が剣を振るたびに、何本もの蔓が発射される。一方で、異形の魔物は依然として凶暴性を発揮しており、眼前のウィザードの身を傷つけていく。その身を茨に締め付けられつつも、この化け物は何かに取り憑かれたように攻撃を続けている。直後、魔物はその剛腕で眼前の標的を殴り飛ばした。ヒロは後方へと吹き飛びつつ、微量の鮮血を吐く。そして彼が飛ばされる位置に先回りした魔物は、口を大きく開いた。その俊敏な動きに対処できなかったヒロは、下半身を咥えられてしまう。何やらこの魔物は、彼を捕食しようとしているようだ。


 無論、ヒロが茨の剣を使ったことには理由がある。突如、魔物の体の節々から、無数の蔓が生えてきた。その体から養分を吸われているのか、魔物は酷く苦しんでいる様子だ。その口が大きく開かれたのと同時に、ヒロは無事に脱出した。彼が鋭い眼光を向けている先で、その標的は徐々にしぼんでいる。


 やがて全身を植物に吸収された魔物は、勢いよく爆発した。


 炎と煙を帯びた木々の残骸を見下ろしつつ、安堵したヒロは変身を解除した。

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