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ウィザーズ・イン・ザ・シティ  作者: やばくない奴
ヨハネ・ベネフォード
92/116

 やがて爆炎と煙は鎮まった。ヨハネは辺りを見回しつつ、妙なことに気づく。

「おや? 先程のウィザードがいませんネ……」

 すぐに彼は己の感覚を研ぎ澄ましたが、その周囲にはヒロの魔力が感じられない。ヨハネは怪訝な顔で首を傾げつつも、周りを警戒した。


 その時である。


 突如、彼は眩い光に包まれた。その身を焼かれている彼が背後へと振り向くと、そこには変身したヒロと逢魔(おうま)の姿があった。

「あの化け物は……! なるほど、瞬間移動で彼を避難させた後、背後から奇襲を仕掛けたということですネ。面白い……」

 敵対者が一人増えてもなお、ヨハネの余裕綽々とした態度は相変わらずだった。彼はすぐに再生し、右手のハサミで衝撃波を生む。しかしその眼前の標的たちは姿を消し、衝撃波が収まるや否や彼の背後を取る。フラッシュ・キャノンの力と瞬間移動が合わされば、そのシナジー効果は侮れないものである。


 逢魔は訊ねる。

「まだ戦えるか? ヒロ」

 無論、ヒロの答えは決まっている。

「ああ、もちろんだ。君こそ、そのボロボロの体で戦えるのか?」

「俺一人では、戦えないな。だが……」

「俺たちなら、戦える」

 かつては宿敵同士だった彼らも、今は同じ想いを背負った同志だ。それからも二人は瞬間移動を繰り返し、標的の死角に潜り込んでは荷電粒子砲を放っていった。一方で、ヨハネにはアストロロギアがある。二人の動きが読めている彼は、衝撃波によって光線を打ち消していった。しかし辺りが煙に包まれていくにつれ、彼の動きは次第に鈍っていく。

「このままでは、マズいですネ……」

 つい先程までは無双していたヨハネも、もはや油断の出来ない状況だ。


 やがて彼の身に、荷電粒子砲が直撃した。彼はすぐに再生し、次の攻撃に備えて身構える。緊迫した空気が立ち込める中、ヒロは依然として荷電粒子砲を撃ち続けている。二酸化炭素に埋め尽くされた空間で俊敏な動きを維持できるのは、それこそ瞬間移動の出来る者だけであろう。ヨハネは必死に思考を巡らせ、この死闘を生き抜く術を模索した。

「衝撃波を生んでも、相手の動きを読んでも、光を飛ばしても、糸を操っても……全て瞬間移動でかわされてしまいますネ」

 一見、逢魔の使う魔術は至極単純明快なものだ。一方で、その力は融通の利くものでもある。彼の魔術と荷電粒子砲のシナジー効果も、双方がシンプルな力であるがゆえのことだろう。


――直後、逢魔はヨハネの背後に瞬間移動した。


 そして、彼の強烈な踵落としが炸裂する。この一撃により、ヨハネは瓦礫の山に勢いよくめり込んだ。

「そんな……馬鹿な……」

 彼は必死に足掻こうとしたが、瓦礫が動く様子はない。今この瞬間こそ、この強敵を倒す絶好の機会である。

「今だ! ヒロ!」

 逢魔は叫んだ。ヒロは深く頷き、己の両手に荷電粒子を溜めていく。

「これが、俺たち二人の力だ!」

 そして声を張り上げた彼は、瓦礫の山を目掛けて全力の荷電粒子砲を放った。その一発がもたらした爆発は驚異的な威力を誇っており、周囲には瓦礫の破片が勢いよく降り注いでいく。眩い光にその身を焼かれているヨハネは、最期の言葉を口にする。

「キミたちを、侮っていた……」

 そう言い残した彼は、魔法石を残して塵と化した。


 ヒロたちの勝利だ。


 ヒロは必死に瓦礫を掻き分け、四つの魔法石を回収した。それから彼は変身を解き、逢魔の方に握り拳を差し出す。

「終わったな、逢魔。俺たちは、ヨハネに勝ったんだ」

 それに続くように、逢魔も変身を解く。その拳の意味を理解していない彼は、首を傾げるばかりだ。

「……なんだ? その手は」

「これか? 俺たちは何かを成し遂げた時に、拳を重ね合わせるんだ。さあ、握り拳を作ってみて」

「あ、ああ……」

 逢魔は少し戸惑いつつも、ヒロと拳を重ねた。

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