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ウィザーズ・イン・ザ・シティ  作者: やばくない奴
ヨハネ・ベネフォード
91/116

無謀な戦い

 ヒロはあの街に駆けつけた。そこではすでに、ヨハネが彼を待っていた。

「おやおや、どんな魔法石を携えてくるのかと思えば、まさか量産型の代物で来るとはネ。そんなもので、ヨハネさんを倒せると思っているのですか?」

「ああ、俺は負けない。俺はもう、仲間を悲しませない!」

「大した度胸ですネェ。悪く言えば、無謀で愚かとでも言うべきですか。フラッシュ・キャノンには所詮、荷電粒子砲を撃つくらいの力しかないというのに」

 今回ヒロが持ってきた魔法石は、フラッシュ・キャノンだ。ヨハネが余裕を感じるのも、無理はないことだろう。

「それでも、熟練されたウィザードが使えば、その火力は馬鹿にならないだろう」

「どうでしょうネ。ヨハネさんは五個も魔法石を持っているのに対し、キミが持っているのは安物一つだけ。ヨハネさんが打てる手は、いくらでもありますヨ」

 確かに、彼には様々な攻撃手段がある。一方で、ヒロには平凡な魔法石が一つあるだけだ。それでもヒロは、戦意を失わない。

「変身!」

「変身」

 両者が変身したのを皮切りに、死闘が幕を開けた。ヒロは荷電粒子砲を放ったが、その一撃はヨハネの放つ光線に打ち消されてしまう。相手の動きを読み、星型の光を操れるヨハネにとって、相手の攻撃を打ち消すことは実に容易だ。続いて、彼は己の右手をハサミに変え、それを閉じることにより衝撃波を生み出した。ヒロは荷電粒子砲を放ち、その衝撃を打ち消そうとする。直後、彼の前方から糸の束が迫ってきた。糸は光線を飲み込み、彼の身を巻き込んで燃え上がる。

「まずい……!」

 ヒロが叫んだのも束の間、今度は円弧型の炎が彼の眼前に迫ってくる。その大きさは、彼が今まで放ってきたものを一回り上回っていた。その攻撃に対処する余裕もなく、ヒロは激しい爆発に呑まれる。後方に吹き飛ばされた彼は瓦礫の山に叩きつけられ、鮮血を吐く。やはり量産型の魔法石では、あの男に太刀打ちするには限界があるようだ。

「持ってきたのが量産型の魔法石であるということは、キミはもう強力な魔法石を持っていないということですネ」

「だったら、なんだって言うんだ……?」

「キミは用済みです。ヨハネさんの餌食になりなさい」

 もはや相手が強力な魔法石を持っていない以上、ヨハネには手加減する必要などない。彼はその左手に携えている剣に炎をまとわせ、不敵な笑みを浮かべた。

「させるか!」

 咄嗟の判断で、ヒロは荷電粒子砲を放った。その動きを読んでいたヨハネは、右手のハサミを閉じることにより衝撃波を放つ。剣の刀身をまとう猛火が火力を増していく最中、ヒロの放った一撃は一瞬にして打ち消された。

「これで終わりですヨ」

 そう囁いたヨハネは、眼前の標的に強烈な斬撃をお見舞いした。その一撃を皮切りに、彼は巧みな剣術によって相手の体に切り傷をつけていく。俊敏な斬撃と激しい炎に襲われているヒロは今、その身にノイズを走らせている有り様だ。このままでは、彼の変身が解けるのも時間の問題だ。この戦いに敗れれば、今度こそ彼は命を落とすこととなる。

「すまない……皆。俺は、ここまでかも知れない。君たちを、悲しませるつもりなんか無かったのに……」

 死を覚悟したヒロは、罪悪感に駆られた。ここで彼が絶命するということは、彼が仲間との約束を破ることを意味している。無論、ヨハネは己の敵対者とその仲間の絆を知らない。仮にそれを知っていたとしても、彼が殺生を躊躇することはないだろう。

「悪く思わないでください。これは、戦争なのですから」

 ヨハネは剣を振り上げ、その刀身に凄まじい電流をまとわせた。この一撃をまともに食らえば、ヒロに命はないだろう。


 剣は勢いよく振り下ろされ、辺り一帯は眩い光に呑み込まれた。

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