表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/116

読めたはずの動き

 一方、ヒロ、鈴菜(すずな)紅愛(くれあ)の三人は、社長室に赴いていた。彼らが睨みつけている相手は、テクノマギア社の社長――高円寺日向(こうえんじひゅうが)だ。彼らの目に宿る感情はただ一つである。それは恨みだ。

「……変身」

「変身!」

「変身!」

 もはや対話など無意味だと判断したのか、三人はすぐに変身した。日向は気怠そうに立ち上がり、同じく変身する。不可解な現象が起きたのは、その直後だ。


 いつの間にか、ヒロの腹部にはいくつもの切り傷が刻まれていた。痛みに悶える彼が周囲に目を配ると、鈴菜と紅愛も重傷を負っている。

「一体……何が起きたんスか!」

「日向! どこに消えた! 姿を現せ!」

 妙な出来事を目の当たりにしてもなお、彼女たちは好戦的だ。その後も、三人の体には次々と刺し傷や切り傷が刻まれていった。僅かな抵抗も許されない中、ヒロたちの体にはノイズが走り始める。圧倒的な力量差を前にして、彼らは狐に抓まれたような表情を浮かべるばかりだ。電流を帯びた剣を構えつつ、ヒロは呟く。

「日向も、瞬間移動を使えるのか? それにしても、攻撃そのものが見えないなんて……妙だな」

 彼は再び社長室を見渡したが、手掛かりと思しきものは見当たらなかった。そんな中、紅愛は衝撃的な事実を口にする。

「オレが日向の動きを読んだ時、アイツはただゆっくりと歩き、そしてオレたちに斬撃を食らわせようとしていた。あんな攻撃、本来のオレなら避けられるはずだが、何かがおかしいんだ」

 それはにわかには信じ難い話だった。

「どういうことだ……一体、何が起きている!」

 ヒロは叫んだ。直後、彼は背中から勢いよく出血し、変身を解かれてしまう。彼に続き、鈴菜と紅愛も、正体不明の力によって脇腹を斬りつけられた。これにより彼女たちも変身を解除され、膝から崩れ落ちた。紅愛は息を荒らげつつ、話を続ける。

「オレの読んだ動きを、アイツは一瞬にして終えているようだった。だがオレの体は、オレの読んだ通りの部位に傷を負ったんだ。おそらく……日向の奴は……」

 この時、彼女は何かに勘付きつつあった。



 その頃、日向は社屋のエントランスにいた。彼の目の前では今、天真(てんま)がマリス団の四人と向き合っている。無論、あの強敵たちの相手をたった一人で引き受けるのは、横車を押すようなものだろう。すでに変身の解けている天真は、その体にノイズを走らせながら立ち上がる。

「まだだ……ボクはまだ、戦える!」

 そう叫んだ彼は、強引に変身を試みた。直後、彼は凄まじい電流に全身を襲われ、勢いよく吐血してしまう。それから力尽きた彼は、その場に崩れ落ちた。このままでは、彼に命はないだろう。そんな彼を見下ろしつつ、逢魔(おうま)は呟く。

「これで一人、ウィザードを仕留められるね」

 それに続くように、晴香(はるか)千郷(ちさと)も口を開く。

「元々、天真の体は弱っていたものね。これはチャンスよ」

「トドメはアタイが刺す。テメェらは手出しするなよ?」

 ヴィランの血が流れているだけのことはあり、幹部たちに容赦はない。そんな中、伊吹(いぶき)はある違和感に気づく。

「待て。何か、妙な魔力を感じないか?」

 その一言に、逢魔たちの表情が一変した。彼らはすぐに、エントランスの方へと目を遣った。しかし、そこにはもう誰もいない。続いて、四人は再び天真に目を向けようとした。しかし彼らが辺りを見回しても、そこに彼の姿は無かった。


 逢魔は生唾を呑み、現状の整理を試みる。

「アイツ、消えたぞ? アイツだけじゃない……『もう一人』もだ。こんなことが起きたのは、今回だけじゃない。俺たちは、何度も同じ光景を目にしてきたはずだ!」

 そう――マリス団が復活した後、彼らはこの現象を目の当たりにしてきた。動揺する気持ちを押し殺しつつ、逢魔は幹部たちに指示を出す。

「今すぐ引き返すぞ……今夜は会議だ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ